砂と金

けものフレンズ大好き

砂と金

 ここはさばくちほー。

 かばんちゃん達と別れてからも、ツチノコちゃんの遺跡調査は続いていますが、さすがにそろそろ調べ尽くした感じ。

 ただ以前とは違い、お客様がよく訪れるようになったのですが……。


「ふんふんふーん♪」

「おお、おまえ!?」

 今日も今日とて遺跡を訪れ、自由に行動しているスナネコちゃん。

 最近は遺跡を発掘するよりスナネコちゃんの面倒をみている時間の方が長い気さえします。

 スナネコちゃんは自由で、行動の予測が付かず、さらに遺跡を傷つけることに、サーバルちゃん同様ほとんど抵抗がありません。


「や、やめろー! 貴重な遺跡なんだぞ!」

 今日も今日とて鼻歌交じりに遺跡の壁を削っているスナネコちゃんを注意します。

「やあツチノコ。こんにちは」

「こんにちは、じゃなーい! いい加減俺の言うことを聞けー!」

「?」

「不思議そうな顔をするな!」

 ツチノコちゃんにとって、あまりに疲れる日常茶飯事でした。

「分かりました」

「お前本当に分かったんだろうな」

「はい」

 そう言いながら、スナネコちゃんは床にまた絵を描き始めます。

「ふんふんふ~ん♪」

「全然分かってないだろ!」

 いい加減頭にきたツチネコちゃんは、スナネコちゃんが絵を描くのに使っていた何かを取り上げました。

「あっ!?……まあいいか」

「本当に諦めも早……んん!?」

 ツチノコちゃんは取り上げたその何かを見た瞬間、身体が固まります。


「こ、こ、こ、これはゴールドコインじゃないかあ!!!!!!!!!!!!!」


「お?」


 あまりの大声に、思わずスナネコちゃんも手を止め、ツチノコちゃんの方を見ました。


「ゴールドコインというのはだな、ジャパリコインと同様通過のようなものだがその発行枚数はジャパリコインより少なく、レア度は格段に上なんだ。ああ、通過というのは――」

「・・・・・・・」

「な、なんだこのヤロー! キシャー!」

 いつものように照れ隠しをするツチノコちゃん。

 ただ、今回はそんなことをしている場合ではありませんでした。

「――て、それよりお前はこれをどこで見つけたんだ!?」

「それですか? んー」

 飽きっぽく物事に執着心の薄いスナネコちゃんは、記憶力もあまり良い方ではありません。

 確実に覚えていられそうなのは、ジャパリまんの隠し場所ぐらいです。


「忘れました」


「あーーーー! せ、せめてヒント……思い当たる場所とかないのか!?」

「うーん……」

 スナネコちゃんは考えます。


 そして――。


「あっちだったと思います」


 あまり考えていない表情で、スナネコちゃんは遺跡の奥の方を指さしました。

 ツチノコちゃんもあまり信用はしていませんでしたが、他に出来ることも無いので仕方なくそちらに行きます。


「ふんふんふ~ん♪」

「いやお前もついてくるんだよ!」

「お?」

 ツチノコちゃんはスナネコちゃんを強引に連れ、遺跡を進みます。

 とはいえ、ほぼ探索しつくしたさばくちほーの遺跡、注意深く目をこらしますがジャパリコインさえ見つかりません。


「なあ、もっとこう、具体的に覚えてることないのか?」

「うーん……」

 スナネコちゃんは少し考える素振りを見せ、


「お腹が空きました」


 何のためらいもなく、そう言いました。


「お・ま・え・は・本当に!」

「行きましょう」

「あ、ちょっと待て!」


 スナネコちゃんはツチノコちゃんの話を聞かずにすたすたと歩きます。

 物事の記憶は苦手でも方向感覚は優れているようで、あまり迷う素振りを見せず進みます。

 結局ツチノコちゃんは、スナネコちゃんのおうちまでついて行ってしまいました。


「ふんふんふーん♪」

「本当にお前は自由で良いな。俺とは大違いだ」

「そうですか。ツチノコも僕と似てると思います」

「いや、どう見ても似てないだろ」

「でもいつも1人でいますよ」

「それは……」


 ツチノコちゃんは言葉に詰まりました。

 進んで1人でいると言えばいいはずなのに、なぜかそう答えることがで来ませんでした。


 以前なら言えたのに。


 そう思いながら。


「でも今は僕たち2人いますね」

「え、ああ……そうだな」

 その言葉が何故かくすぐったく、心地よかったツチノコちゃん。


「はいジャパリまん、ツチノコも食べます?」

「腹減ったからな。貰う」

 ツチノコちゃんはスナネコちゃんからジャパリまんを受け取ります。

 そのとき、ジャパリまんを覆う紙袋から1枚のコインが――。


「こ、こ、こ、これはゴールドコインじゃないか! どうしてここに!?」

「あ、ここに埋まっていたみたいですね」

「それを早く言えぇ!!!」

 ツチノコちゃんは急いで砂を掘ります。

 しかし慣れないことなので上手くいきません。

「手伝います」

 スナネコちゃん、ツチノコちゃんが何か言う前に手伝います。

「……ありがとな」

「お友達だからいいですよ」

「・・・・・・・」


 そうして何枚ものゴールドコインが見つかったのですが……。


「しまった、これはお土産のゴールドコインだ……」

「お土産?」

「ああ、実際にジャパリパークで使われているの金属製だが、これはもっと軽い材質の、価値の低い土産用だ。これならゆうえんちで簡単に手に入る。改めて思い返してみると、最初のやつも軽かったな……」

「そうですか……」

 スナネコちゃんが珍しくしょぼんとします。

「……まあでも、お、お前がくれたジャパリまんはうまかったぞ」

 スナネコちゃんは顔を逸らしながら、少しうわずった声で言いました。

 その顔は真っ赤です。

 ただ、あまりに反応がないので視線を向けると、


「すやすや……」

「いきなり寝るな!」


 スナネコちゃんには適わないツチノコちゃんでした。


                                  おしまい

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砂と金 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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