妄想の天空

第1話 (仮)

　三曲目が終わりMCがはじまる。しゃべる内容は、練習後にメンバーで行ったご飯や遊園地のハイライト。ウルトラマンのヒーローショーを見たなどである。自分が最後に遊園地に行ったのはいつであるか、高校の修学旅行が最後な気がする。

　ピンスポの範囲は最大。色は黄色。足元の照明は消して演者だけが照らされている。セッティングシートには次の曲でスモークを焚いてほしいとの記載があるが、ステージ上手にはスタッフがいない。しょうがないので急いで向かうとする。ついでに後の照明は2年に任せてステージで暴れてやる。うむ、そうしよう。

　MCが終わって曲が始まった。彼らはラウド系のコピバンであり、演者がギターをブン回し、観客はモッシュにダイブとはっちゃけている。スモークを限界まで焚いたあとはドラムスティックを構えて特攻してやった。シンバルをジャンジャン鳴らし、コーラスでマイクを奪い取る。一緒にステージへ乗り込んだほかのやつは、ビールケースを振り上げながら上手下手と何往復も走った後に客席へダイブした。ミラーボールがくるくる回り、ピンスポからの光をめいいっぱい学館全体に拡散してくれている。そこにスモークの煙も重なって、いよいよ演者VSゾンビの体を成してきた。大学生特有の、その場だけを全力で楽しむ心意気やよし。これで新入生は、大学生が単位を落とすシステムがなんなのかを垣間見ることができたであろう。

　今年の入部数は15名であった。うち女子7人である。このなかに私の彼女足りえる、母性豊かな女性はいるのだろうか。