第106話 喚ばれた者たち
少々下品な表現があります。
ご注意くださいませ。
…………………………
「待てコラァ!」
繁華街から離れた路地で1人の少年を追う3人の少年たち。リュックを激しく揺らして逃げる少年はズレるメガネを直しながら、原因となった昨日の放課後のことを思い出していた。
………
……
…
「なあ、
「OKB754 ? ソコロフだかグラーニンだか知らないが、俺は2次元しか愛してないから3次の女には興味ないんだよね。他のヤツ誘えよ」
「…OMAな。
O (オッサンも)
M (萌える)
A (アイドル)な。
そんな物騒なもんと一緒にしないでくれねぇかな。とにかくよぉ、他の奴らは部活とか塾でダメなんだよぉ!それにケンちゃん見た目も中身もオタクじゃん?違和感ないじゃん?」
「…見た目イケメンのアイドルオタクに言われると腹が立つな。
良いかよく聞け。渋谷と言えば『リア充』や『パリピ』の本陣じゃねぇか。俺みたいな典型的なオタクの居場所なんかねぇの!わかる?敵地なの、理解してる?
場所がアキバならいくらでも付き合ってやるよ。メインのスポットからアンダーグラウンドまで全てを教えこんでやるよ。でもな…渋谷はあきまへん。おっちゃん、あんなオシャレな街に行ったら溶けてまうねん」
「ケンちゃんキャラ崩壊が凄まじいな。高1でおっちゃんも無いだろうに…。
それにさ、CDに付いてたスマホゲーのレアキャラidくれてやったろ?それのカリを返すと思ってさ」
「…それを言われると弱ったな。よし、明日は付き合ってやる」
「さっすが
「お前ぜったいケンカ売ってんだろ!どう見てもガリヒョロメガネの俺にヒコウが撃てるか!」
…
……
………
当日、イベント開始前に入ったトイレでカツアゲの現場を見てしまった彼はそのまま、まわれ右をして逃走したが敵は許してはくれなかった。
一人目は所持金が少なかったのか、奪い取る事それ自体が遊びのつもりかもしれない。巻き込まれるコチラとしてはたまったものではないが。
チラリと後ろを見れば、ワルそうな少年たちの怒りに満ちた顔から嫌な予感がビシビシ感じる。周りはひどい人混みで上手く逃げることもままならないが、その少年は「フォウ!」と奇妙な叫びとともに奇妙な内股の動きで巧みに人混みを抜けた。後方の少年たちは、それがバカにされたように感じてますます腹を立てていたのだが…、それはひどい誤解だと言っておこう。
追われている少年は初め、便意をもよおしてトイレに入りそのまま出てきた。つまり…。
(ウ○コしてぇぇぇ!!)
後方からは追ってくる少年達。捕まれば物理的に死ぬかもしれない。
内側からは迫りくる便意。決壊すれば社会的に死ぬかもしれない。
近年まれに見る2正面からの追撃に少年は涙を浮かべた。
逃げているうちに人混みを抜け裏路地に入ってしまったのだろう、あたりは閑散とした場所だった。
ここからどう切り抜けるか少年は考えた。某モンスターをハントするゲームでは “こやし” を玉に詰めて当てるというアクションがあった。 “自作した玉” を当てれば一石二鳥では?と思ったが、それはあまりにも人道に反する気がしたのでその案は却下した。そんなアホなことを考えているうち、少年は行き止まりへとたどり着いてしまった。
「ガキが!手こずらせやがって!」
リーダー格の少年が吠える。『見た目俺と年変わらないだろ!』と心の中で突っ込むと彼らの一人が懐から折りたたみのナイフを取り出しにじり寄ってきた。
(くっ!…こうなったら “自作” か?! “自作” しか無いのか!)
本来なら恐怖でままならない筈なのだが少年の思考はだいぶズレていた。それも便意がもたらしたものなのだが、その “何かしそうな動き” が少年たちに警戒心を抱かせ『時間稼ぎ』が成立してしまった。
『バチン!』と弾ける音が響く。少年たちはお互いが『何かしたのか?』と疑心暗鬼にとらわれるが、その音が断続していくにつれて不安にかられる。
「おい
「騒ぐんじゃねぇよ!」
「うわ!…うわ!」
(弾ける電流、地面には明らかな『魔法陣』!!
これはまさか…異世界召喚ですか!!)
不良3人組が膝から崩れる中、追われた少年だけは天に手を広げ高らかに叫んだ。
「2次元よ!ワタシは帰ってきた!!」
いや、お前行ったことないだろ、とは誰からも言われることもなく4人の少年たちは『この世界』から消滅した。
…………………………
続けてもう一話投稿します。
良ければお読みくださいませ。
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