第16話 冒険者ギルドへようこそ
「アニキ達は冒険者にならないんですか?」
以前助けたゴブリングにそんなこと言われた。なんだそれ?ナバルは何か知ってるらしく「あったな~そんなの」と流してる。俺はメッチャ気になるんですけど!
師匠の
良く見ると3人ともダボダボの革鎧を身につけてそれぞれ腰や背中に武器を背負ったりしている。
「…なんか嬉しそうだな」
「わかります?」
「初めての依頼ッス」
「ゴハンたんまり」
今、
「で、お前らも始めたと」
「そーッス」
「武器や防具も貸し出してくれるからありがたいッス」
「いつかオイラたちも自分用の買うんだお」
…ホント楽しそうだな
そんなこんなで三人組と別れ、ナバルも始めてるのかと思えば、
「俺はまだ弱いからな。まだ早いよ」
ナバルちゃんったらンマー謙虚だこと。よし、ここは人生の先輩に任せなさーい!
…
……
「ってわけで師匠、俺ら次のステップにいっても良いと思うんだけど、どーっすか?」
「なんだ、もうとっくに始めてるのかと思ったぞ」
次の日、鍛練も終わって師匠はバアちゃんちで茶と団子(機嫌取りで昨日の夜から作ってた)を旨そうに食いながらそんなこと言ってきた。小細工いらなかったね。
あとはバアちゃんだ。何せ俺はことある
バアちゃんも旨そうに団子食ってる。ホルンは二つまとめて食ってる。生前俺もポテチや薄焼き煎餅の重ね食いを良くやってたわ。今度ポテチでも作るか?
「ってことでバアちゃん!俺も町にいってもいいかな?」
ここはドストレートに勝負や!
「ん?行けばいいんじゃないかい?」
…アレ?行っていいの?
「…俺、
バアちゃんはボーッと俺を見ると はっ!として目をそらした。
「何かあったかねぇ…」
「…」
「…」
「今まで、連れてくの忘れてたとかは無いよね?」
「気をつけて行ってきな」
おいぃぃぃぃぃ!!
…
……
というわけでやって来ました!魔族の国の門の前です!
門の前は二人のリザードマン?の兵士が2人門番してます。ホントに来たんだなぁ。
「お疲れさまでーす」
「おお、ナバル少年か。ん?そちらは?」
「森のバアちゃんとこの弟子?みたいなもんかなぁ。一緒に入っていいかな?」
そう言ってナバルは俺を紹介する。なんか適当だなオイ。
「おお、キャリバンヌ様の!」
「ようこそ
そういうと彼らは門を開いてくれた。
その先には、俺が思い描いた以上の景色が広がっていた。
「すっげーー!!」
門から入るとメインストリートがずっと延びていて、その先には禍々しくも巨大な王城がある。アレがヘッポコ…ゲフンゲフン、魔王の城なのね。
城に至る道の両脇には商店がずらっと並んでいる。果物やデカイ剣を飾ってる店、ショーウィンドウの服屋まであるんだ。あ、魔物の革や牙とかも売ってる店がある。俺がキョロキョロしてるとナバルが、
「冒険者ギルドはこっちだぜ」
「あれ?ナバル
「…ウィルがウザいくらい自慢してきたからな」
あ~、だから一歩引いてみてたのね。
メインストリートから少しそれるらしい。王城の壁づたいに一際、大きな建物があった。
「気合い入ってんなぁ」
建物としては2階建てなのだが一階辺りの高さが長い。それに横に広い。やっぱり魔族っていろんな種類いるから大きくなるのかね?ショーウィンドウの店も大きかったもんなぁ。
「とりあえず中に入ろうぜ」
ナバルが先導して入る。お、おいてくなよ~
ギルドの中はやはりと言うべきか半ば酒場になっていた。その奥にはカウンターがあって何人か話してる。クエスト受注してるんだろうなぁ。
ワクワクしながら見回してると座って飲んでるおっさんが声をかけてきた。
「お?坊主たちも登録しに来たのか?」
「…まあな」
「初心者寄りの依頼もあるからなぁ、最初は無理して難しいの取るなよ」
「あいよ」
気をつけてなと声をかけられカウンターに向かう俺達。以外と良いオッサンだった。もう一人のエルフの兄ちゃんは「熊の魔族なんていたっけなぁ」なんて言ってるが…
カウンターに着くと、
「ようこそ冒険者ギルドへ。あなた達は初めて来たの?」
お姉ちゃんが優しく声かけてきた。
「エヘヘ、そーなんッスよ」
紫の入った薄い黒系の髪の色でショートボブっていったか?猫耳生やした美人のお姉さんにデレデレになるのは仕方なかろうにナバルの野郎め、ため息なんかつきやがった。お姉さんと至福の時を過ごそうとした矢先だ。
「あれ?そこに居るのはトランかい?」
振り向くとそこには…
量産品と思える剣を腰に差した魔王がいた。
「…何でここに居るんだよ」
空気読めとばかりに冷ややかに俺は言い放つ。
「…あっはっは!悪かったね。お詫びに…リリン君、この子達借りていくよ?」
と言って奥の部屋に俺達を連れていった。
二階に上がり、立派なドアの前に来ると中から一人のエルフが出てきたところだった。
金髪に長い耳、エルフの特徴なんだがそれ以上に…とんでもない美人だった。
長い髪を後ろで束ねキャリアウーマンが着てそうなスーツに身を包み、掛けている眼鏡はよりいっそう知的に見える。ちょっと気の強そうなその人はウィルに一礼すると去っていく。ちらっと俺を見て…怪しく見えたんかな?
「ギルドマスター、いるかい?」
ノックをしてそんな言葉をかける魔王。相変わらずフットワーク軽いよな。この人。
中からは、
「おー、ウィルさんか」
そう言ってギルマス自らドアを開けてくれた。
俺はその容姿にすんげぇ驚いた。
中世の絵画にありそうな悪魔がそこにいたから。
青い肌に山羊と狼を足したような顔とツノ。鍛えあげた身体はそこらの冒険者ではビビりまくるのではなかろうか。そんな大男のギルドマスターは…
…何故か海パン一丁だった。
「今日はどうしたんだい?」
嬉しそうに聞く魔王。毎回何があるんだよ。
「いや~お恥ずかしいですなぁ」
何故か嬉しそうなギルドマスター。
「
照れたように
何やってんだバカ野郎、このギルド大丈夫かよ。
「それは災難だったね。私がリアリー君にしたら…殺されちゃうかなぁ…」
「ところで…その者達は」
「ああ、キャリィのとこの子と我の家族だよ」
「おお、では君がナバル君に、トラン殿か!…という事は…」
「ああ、知っているよ」
きっと魔王の身分のことだろうなぁ。きっと何らかしらでごまかしているんだとは思うが。
「それではアレの最終テストを」
「ああ、彼らは新時代の幕開けに立ち会うのだよ」
なんか大袈裟に語りだした。
「アレってなんだ?」
ナバルの問いに魔王は嬉しそうに答える。
「フッフッフッ、聞いて驚きたまえ!我とギルドマスターで、全く新しいマジックアイテムを製作したのだよ!」
すげぇドヤ顔だった。
でも
ギルドマスターは水晶玉と、連結されてる大きめの箱を持ってきた。
「これはな、今まで手書きだった身分証を『正確に、偽造不可能』を基にした新たな魔道具なのだよ。その名も…」
「「ギルドカードだ!!」」
2人してすげぇドヤ顔だった。
ちょっとウザかった。
「では陛下」
「うむ」
魔王が水晶に手を置くと輝きだした。
ジジジッ…ジジッ…
金ぴかのカードが出てきた。
なになに?
▪ ▪ ▪ ▪
名前;ヴィレント・イル・ギルドラン
種族;元ヴァンパイアハーフ
戦闘能力;測定不能
保有魔力;測定不能
保有能力;測定不能
称号;真なる魔王
;神の領域に到達せし者
;全てを極めし者
▪ ▪ ▪ ▪
…なんか凄まじいな。改めて見るとやっぱり魔王なんだと実感するわ。
ただ、種族に『
「陛下、成功ですが…」
「ああ、これでは私の正体がばれてしまうな」
「何かしらの抜け穴はあると思うのですが…」
《偽造防止はどこ行った!》っていう突っ込みを飲み込んだオレは、そもそもの疑問を口にした。
「なあ、これってどうやって
ギルドマスターが教えてくれた。
「これは『世界』が認識した情報をそのまま転写する装置です」
「魔術の応用だね」
ほおほお、とオレが
「認識阻害や封印で弱体化の情報に書き換えられるんじゃね?」
なんて言ってきた。それならと魔王は自身に魔術を幾重にもかけた。
「!!っっっつ!これはキツいな」
「動きづらいとか?」
魔王は ギギギと動くと
「いや、キツい服を着させられたような窮屈さから…封印と結界が弾け飛びそうだ!」
「「早く測れ!!」」
オレ達は大慌てで魔王を測らせた。
で、結果がこれ
▪ ▪ ▪ ▪
名前;ウィル
種族;…ヴァンパイアハーフ
戦闘能力;AAA
保有魔力;AAA
保有能力;状態異常全て無効
称号;…遊び人のウィル
;測定不能
;測定不能
▪ ▪ ▪ ▪
…どうなんだろう、充分ぶっ壊れなステータスだとはおもうが。
っていうか、
「遊び人のウィルってなんだよ!
どこの北町奉行だよ!」
オレのツッコミにナバルと魔王は半分わからないといった感じの反応だが…
ギルドマスターだけは時間が止まっていたのをオレは見逃さなかった。
「なあ、ギルドマスターも測ってくれよ。魔王は戦力でかすぎて参考にならないや」
ですねと言い。彼も測る。
▪ ▪ ▪ ▪
名前;ベルゼイ・ファウスト
種族;グレーターデーモン
戦闘能力;AA
保有魔力;AAA
保有能力;状態異常耐性アリ
称号;
;変態紳士
;露出卿
▪ ▪ ▪ ▪
「ってか称号悪口じゃねぇか!!」
ギルドカードを叩きつけてもーた。
「ちょっと!このカード高価なのよ!」
「知るかー!」
ゼハゼハ息吐く俺。
「変態紳士ってなんだよ!露出卿ってなんだよ!卿の文字つければ許されるとか思うなや!!」
…にしてもわからなかったか。
奴が『転生者』なのかを。
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