第4話 運命1少年ナバル
「にいちゃん、もう葉っぱ無いよ?」
「薬草な、たしかに無いな。数もあるからそろそろ帰るか」
俺はナバル・グラディス。妹のナナイと薬草を取りに来てた。父ちゃんが薬師でその手伝いだ。俺は7歳で妹は3歳だからそんな遠くには行かないよう言われてる。魔獣が出てきても困るもんな。
森の入口付近でいつも採取してる、中まで入ればもっと沢山採れるらしいけどその分魔物も強くなる。森を抜けると魔族と呼ばれる知恵を持った魔物の国があってスゲェ恐いらしい。そんなのに見つかるのはゴメンだ。その途中にも魔女が住んでいたりとするらしいから絶対行きたくない。おっかないもんな。俺は妹と家に帰ることにした。
家が見えるあたりから騒がしくなった。誰かがケンカでもしてるのか?俺達の家は村の外れだから基本静かなのに…
玄関の前には立派な騎士服を着た人たちが父ちゃんと言い争いをしてる。いつもホンワカしてる父ちゃんが珍しい。それに村の方から騒ぎを聞き付けたのか村の連中が集まりだしてる。騎士服の連中は集まった村人を見ると顔をしかめて家の前から出ていった。なんか俺たちの方見てなんか言い合いながら。気分悪いなホント。
その夜、父ちゃんと3人で晩御飯食べてると
「ナバル、父ちゃんになんかあってもナナイと仲良くするんだぞ」
なんて言ってきた。
「なんだよ父ちゃん、シンキ臭いぞ」
「シンキくちゃい!シンキってなーに?」
そんなこと言う俺たちに父ちゃんは笑いながら頭を撫でてきて
「それもそうだな」
って言った。それが父ちゃんと最後の会話になっちまった。
父ちゃんは夜になってからの仕事があるらしく、俺たちが寝てからも薬草を潰したりしてた。
…周りが騒がしくなって起きたら仕事してるはずの父ちゃんが倒れて血だらけになってる。一瞬で目が覚めた!隣に寝てたはずの妹が居ない。どこか騒がしいな。
「放して!やーなの!」
玄関の方だ!涙声で暴れてたからか途中から口を塞がれたような声に変わる。父ちゃんも心配だけど俺は速攻で玄関に駆け出した!
外に出ると昼間父ちゃんと揉めてた騎士服の奴らだ!馬車に乗り込むと駆け出しちまった。
しばらく先までうねうねした一本道だ。バカにするなよ!俺は近道知ってんだ!
運が良いのかやつらが通った道の近道は下り坂だ。子供の俺でも追い付いた。妹泣かせやがって!
馬車の前に出ると思いっきり叫んだ
「止まれよ!ナナイを返せ!」
馬車の窓から妹が顔を出す
「にいちゃーん!」
「…様!ガキが!」
「…止まるな。行け」
勢いをまして馬車が来る。
「妹を返せよ!!」
ガガン!!
馬に踏まれ、車輪に引かれたらしい。
…あれ、立ち上がれない
「いやーっ!にいちゃん!」
妹の声が遠のく。目の前がなんか赤い。腹も足も手もいてぇ。
ちくしょう。
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