第25話

夕飯の後自室のベッドに座り、スマホ片手に葉野君に電話しようかどうしようか迷っていた。


「今更話す事などないのに……」


それでもスマホを離せないのは未練なのだろうか。


そんな事を考えていたら電話がなった。ディスプレーに映し出される相手の名前。


「葉野君……」


一瞬躊躇っが電話に出た。


「もしもし大原……? 今大丈夫?」


「……うん」


「離婚成立したよ。半ば強引だったけど。 で、大原の気持ちは? あれ本心なの?」


「え?」


私は黙ってしまった。離婚成立の驚きと、私の気持ちを探る言い方に……。


「離婚成立したんだ。 何て言うか驚いたよ……」


「まぁ色々あったけどね。 やっと自由かな。 で、答えて欲しい。 あれは本心?」


「……分からない。 多分本心じゃないかも知れないけど、やっぱり私は子供達の幸せが大事だし壊したくないの。 葉野君との未来を夢みたけど現実は無理だよ……。 本当に申し訳ないと思ってるよ? 離婚急がせたのも私のせいでもあるんでしょ? だけど、ごめんなさいとしか言えないよ……」



いつの間にか涙がポロポロ出ていた。自分でも分からない自分の気持ち。苛立ちさえ覚える。



「取り敢えず、もう少し考えて欲しい。 子供達だって話せば分かってくれる筈だよ。 あっさり諦めたくない。 皆んなで話せないかな?」


「無理だよ! そんな事できないよ……」


「分からないだろ? とにかく話そう」



半ば無理矢理に話を纏められてしまった。

せっかく諦めようって決めたのに。


それでも何故か胸の中のモヤモヤが少し晴れた気がした。


「諦め悪いのかな? 私……」



士雨や奈々を傷付けたくない。けれど私の気持ちも理解して欲しいと言う思いも確かにあった。


『パパは来ない』そう言ってしまったけれど……。 果たして受け入れてくれるのだろうか。

いや。分からない。無理かも知れない。でも……。話しだけでも聞いてもらいたい。


ムクムクと湧き上がる葉野君への想いと、子供達の幸せ。その狭間で揺れる私。


「道化……」ベッドに潜り込みポツリ呟いた。

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