第8話 大阪LOVER
大阪市此花区に日本で初めてオープンした
海外発信のテーマパークがある。今やTDL
を追い越す勢いのテーマパークだ。
そのほぼ中央を縦横無尽に駆け抜けるジェ
ットコースターは一風変わっていて後ろ向き
で滑走する。前向きでも運行しているのだが
人気なのは後ろ向きだ。
本来絶叫マシンは苦手なので普通のジェッ
トコースターも乗らないのだが、初めてのデ
ートで付き合い始めて一月ほどの彼女にせが
まれたら、もう乗るしかない。覚悟を決めて
一番前、つまり後ろ向きなので一番後ろに思
える席に陣取った。
「楽しみね。」彼女は無類の絶叫マシン好き
だ。私の顔は少し蒼ざめていたと思う。動き
出し徐々に高さを増していく。もう頂上だ。
「きゃぁ~。」隣で彼女は嬉しそうに叫んで
いる。私といえば絶叫することすらできない
ほどの恐怖に包まれていた。
その時だった。私は耳元になんだかふわっ
とした感覚を感じた。突然冷静になる私。そ
れは、確かに髪の毛の感触だ。長い黒髪が風
になびいて私の耳からほほの辺りを触ってい
る。もちろん自分のものではない。そして、
隣の彼女はショートカットだ。
なんだか覚えのある感触。匂い。なぜ絶叫
マシンに乗っているのに、そんなことが感じ
られるのだろう。しかし確実に覚えのある匂
い。
一番前に乗っているので私の後ろには誰も
居るはずがない。頭では判っていた。振り向
けない。すぐ後ろに居る。声が聞こえてきそ
うなくらい。そういえば元カノも絶叫マシン
好きだった。私は一度も一緒に乗ったことは
なかったが。
その匂いは確実に私が2ヶ月前に埋めた筈
の元カノの匂いだった。
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