またも狂犬の苦悩にキツネは笑いけり

夏炉冬扇

前回のあらすじ

 山間の町に暮らす女子高生、筑波ミコトは独自の正義感を持ち、自分が許せないと思えば容赦なく鉄拳制裁をくわえてゆく、学校では「狂犬」と呼ばれる女の子。

 ある日、ミコトは親友達との下校中、稲荷社の前で突然倒れてしまう。

 翌日、調子を取り戻したミコトではあったが、なんとお尻からフサフサとした白い尻尾が生えていた。

 彼女に取り憑いたのは葛の葉と称する神の使いである白狐。

 葛の葉(ミコトはクズと呼ぶ)はミコトが幼い頃に交通事故で亡くした父の霊から、ミコトの粗暴な振る舞いを正して欲しいと頼まれたとの事で、何故かミコトに一〇八体のあやかし退治という課題を与える。

 しかし、一体退治しても私生活で粗暴な振る舞いを行えば減点というクズの狡猾な(?)設定により、課題をこなしても振り出しに戻るという毎日。

 そんな中、母親を亡くしたばかりの幼馴染み、浅間八雲の様子が徐々におかしくなって行く事にミコトは不安を抱く。

 影を帯びる彼を何とか元気付けようとパーティーを開くも空回り。

 やがて八雲があやかしと一体化した母親の魂……タタリモッケに憑かれている事実を知り、ミコトはクズとともに八雲をタタリモッケから切り離そうと、学校裏手にある墓地で対峙する。

 八雲の母親がタタリモッケと一体化してしまった原因……それは八雲が母親を失った事を受け入れられない悲しみから、彼女の魂をこの世に縛りつけてしまっている為であった。

 ミコトはクズに諭され、八雲に対する自分の想いをぶつけ、そして呼びかけ、見事に切り離しに成功するも、宿主を失ったタタリモッケは暴走し、この世に負の思いを広げようとする。

 世の中に負の力が広がってしまう事を抑える為、葛の葉はミコトの体を離れ、白狐の姿となってタタリモッケが本来居るべき地獄へと我が身とともに押し込もうとする。が、こぼれ落ちたタタリモッケの一部がミコトの中へと入り込み、今度はミコトに異変が起こってしまった。

 タタリモッケとともに消え行く葛の葉は、唯一の頼みである八雲にミコトの事を託す。

 ミコトは失っていた筈の父親が事故死した当時の記憶が戻ってしまった為に恐怖と絶望から心が乱れていた。

 八雲は自分を救ってくれたミコトに、今度は自分の想いを告げる。

 いつも強がってはいるが、心はか弱い幼い頃のままのミコトに語りかける事でミコトは八雲の懐で泣き崩れながらも自分を取り戻すのであった。

 平穏な日常を取り戻したミコトたち……しかし、一旦はこの世から消えた葛の葉は再びミコトの体へ戻って来た。

 ミコトは悪態をつきながらも、内心は安堵していた……かもしれない……。

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