第12話 青狸様様ですわ!
「ラ、ライムちゃん!もしかしてその花ってさっきライムちゃんが摘み取って吸収した花?!」
肯定の意味で首を縦に振る。
その意思表示を確認してまたも驚きの声が4人から漏れる。
そしてルーナが急に私を引っ掴んで顔を近づけてくる。か、顔が近い!
「ライム。それはあなたの固有能力ですか?それとも成長過程で得られた能力でしょうか?物なら何でも体にいれておけるのですか?鮮度は?質量の限界は?許容限界は?劣化は?消化はされないのですか?」
すごい質問攻めに合うけど、私たちにはまだハイかイイエしか意思として伝えられないのでどうすることもできず、ただただガクガクと揺さぶられながら耐えることしかできなかった。
「お、おいルーナ。そんなに質問してもライムは俺たちに伝えられないんだから答えられるはずないだろ。」
「・・・そうでした。」
「わかったらおろしてやれ。目を回してるぞ。」
「申し訳ありませんでした。ライム。」
ディランが止めてくれたおかげでようやく解放された私は地面におろされた。
目を回しているような動きをしたのでその意を汲んでくれたらしい。
実際には目を回してなんかいないのだけど、平気だって思われないためにも意思表示をすることにした。美景曰く「そのうち慣れてむちゃくちゃされないため」とのこと。
「あ~なるほど。ライムの言いたいことがようやくわかったよ。」
「俺も何となくだが分かった。つまりはライムにルーナのカバンにある道具をライムに・・・吸収?収納?・・・してもらって、ライム自身はルーナのカバンに入ってしまえばいいってことだな。」
「見たところ自在に道具を出すこともできそうですし、ライムは私たちの言葉も理解できますから、必要に応じてライムに声をかけることで道具も取り出すこともできそうですし。いいかもしれません。」
「ライムちゃんはどう?」
四人が私の言いたいことをちゃんと汲み取ってくれたようだ。
何気にこんな複雑な会話を成立させられたことがちょっとうれしい。
言葉にして説明できるのがこれほどすごくてありがたいことなのかと内心噛みしめつつ、私たちは了承の意味で首を縦に振った。
「それではライム。よろしくお願いします。」
ということでルーナのカバンの道具を収納していく。
一つ一つの道具の名称、用途を簡単に説明しつつ渡してくれたので、私もその用途に応じて異次元ポケット内で整理しつつ受け取っていく。
ルーナのカバンの中には思っていた以上に道具が入っていたようで、重さを感じることはできなかったものの、見ただけで相当な重量があるとわかるほどだ。
3~4キロはあるんじゃないだろうか。
けれどそれを取り出していくルーナ自身は平気そうで、周りも当然のように見守っている。
(この大荷物プラス背中にリュックって。軽く10キロはいきそうだな。)
(一番力のなさそうなルーナさんでも普通に持ってるってことは、この世界の人たちにとってはこれが普通のことってことなのかな。)
(う~ん。でもディランやポートは大岩や木に思いっきりぶつけられて砕いたり折ったりしてるのに、体はほぼ無傷っていう感じだし。そもそも私たちの知っている人間の構造とは違うのかも。)
(どっちにしても大概だね。)
ルーナみたいな魔法使いでも大荷物を背負えるくらいじゃないと冒険者はやっていけないのか。それとも私たちの常識とは異なる肉体を持っているのか。そもそも同じ人間なのか。
そんな若干SFチックな考えが展開される中、道具をすべて受け渡し終えたルーナはカバンの口を私たちのほうに向ける。
「それではライム、ここに。」
私はルーナの言葉に返事とばかりに首肯した後、予定通りにカバンの中に入る。
ユミルンの形状からカバンの中に適した形状へと変化し、数秒後。形を安定させた私たちはOKとばかりに3本指でグーサインを作った。
「そんなこともできるのか。本当にスライムとは思えない思考力だな。」
「だよね。まるで人間みたい。」
ちょっとドキッとする。
私たち元人間なんすよね。ていうかこっちでも人間ていうんすね。そうっすか。そうっすか・・・
(ほら落ち込まないで!のーちゃん!)
(そ、そうだね。たかがスライムに生まれ変わったくらいで落ち込んでられないよね!)
(そうそう!たかだか話し通じなくて魔物と勘違いされて襲われるだけだし!あ、勘違いでもないのか!)
(そうそう!たかが殺されそうになったくらいでへこんでられないってなもんよ!)
二人して心を傷つけあって出ない涙を内側で流している間に、私たちをカバンに収めて冒険者パーティーは移動を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます