第10話 名前って重要だよね・・・
(なるほど。さっき美景が言おうとしてたことってこういうことか。)
(そういうこと。まあでもそのほうが私たちにとっては都合がいいでしょ?)
ふむ。確かにメリットのほうが大きい。
確かに冒険者の監視がつくことで下手に行動できず、自由が利かないから好き勝手に移動することはできない。
けど、私たちより圧倒的に強いメンバーの冒険者たち、ほとんど危険なく入り込める人間の街、そしてなんといっても料理にありつける可能性。その他もろもろのメリットを考えればデメリットなんてなきがごとし!
そもそも私たちも人恋しさに冒険を始めたということもあるし、そもそも冒険者の監視があるということを逆に考えれば冒険者の護衛ができたといっても過言ではない。
ほかのモンスターと渡り合えるような力を持っていなかった私にはまさにうってつけの申し出であると言う他ない。
「スライムちゃん。私たちと一緒にいろんな場所を巡ってみませんか?」
おおう。なんというファンタジー。
まさに夢にまで見たシチュエーションじゃないですか!
私は今、感動に打ち震えている!
私たちは即座にうなずくことによって了承の意を伝える。
「よかった。私たちも冒険するにあたって、癒しが不足していると常々思っていたのです。これで日々のストレスも和らぐというもの。」
あ、はい。そうですよね。私たちは戦闘要員じゃなくて(癒し)補給要員なんですね。わかります。
こうして私たちは冒険者パーティーの一員となり、ディランたちと行動を共にすることになった。
無論、ディランとポートはその後も反対していたが、ルーナとレナのほうが一枚上手だったらしく、しぶしぶ了承という形に収まった。
「スライムちゃん。私はレナよ。こっちがルーナで、あっちの剣持ってるほうがディランで、槍持ってるほうがポート。これからよろしくね!」
レナは私たちの手を取って握手する。ユミルンの手は小さいので本当に手をまるまる握られるような形になっているが、やんわりと握っているような感覚が伝わってくる。
「仲間になったのですからいつまでもスライムちゃんというわけにはいかないでしょう。ほかのスライムと混ざってしまいます。」
おっと。ここで名づけですか?ゲームとかでは結構ありふれた儀式だけどこの世界ではそれほど重要な意味はないのかな。ほかと差別化するためだけって感じだし。
「何て名前にしようかな。私名前付けるのとか苦手だからな~。」
はっ!これはちょっとやばいのでは?!
(どうしたの、のーちゃん。)
(・・・もしかしたら変な名前つけられるかも。)
(え?なんで?)
(こういうゲームでモンスターに名前を付けるときってさ、たいていあんまり考えないし、かといってほかと混ざるのを嫌うから適当につけちゃんだけど、その名前ってたいていへんてこなのが多かったりするんだよね。)
(例えば?)
(スラリンとか。)
(あー・・・うん。ゲームとかだとなんでも思わないだろうけど、いざ自分がそんな名前になるといやかな。)
(でしょ。)
つまりはそういうこと。
レナは名前つけるのは苦手って言ってたしパスする模様。となると精力的に考えているのはルーナ一人ということになるわけで・・・しかしルーナは魔法使い(?)だし、変な名前になる可能性が大いにあり得る。
ちなみにルーナが魔法を使えるのかはまだ分かっていない。
というのもディランを吹き飛ばしたのはルーナだと思うのだが、魔法を使ったということがほとんど分からなかったのだ。
ちょっと光ったかなと思ったけど魔法が出るとことかディランに効果を及ぼした瞬間などは一切認識できなかったためにいまだに(?)が残るのである。
まあ服装とか杖とかファンタジー世界だからとかの状況証拠だけでもうほぼ確定なんだけどね。
そんなことより今は名づけ。
さあ!
どんなヘンテコな名前が飛び出す!
心の準備は万端だ!
ついでに首のウォームアップもばっちりだ!
「・・・スライムだから『ライム』というのはどうでしょう。」
うーーーーん!無難!
なんという普通さ!
何のひねりもなくスライムから『ス』をとっただけの簡単なお仕事!
でもナイス無難!
案外かわいいしいいんじゃないでしょうか!
「それはいくら何でもひねりがなさすぎじゃない。私だったら『プニョラ』ってつけるなー。ぷにぷにしてかわいいし。」
おーっとまさかのレナさんがとんでもない名前を出しよった。
というか名前付けるの本当苦手なんですね。
と思ってちょっと憐みの視線を浴びせていたのだが、ルーナとディラン、ポートまでもが感心したような声を上げた。
「なるほど。それはいい名前ですね。」
「いいんじゃないか?なかなかない名前だし覚えやすい。」
「レナ今日は冴えてるじゃねえか。」
「いや、それほどでもないよ。」
え?うそでしょ?まさか、え?!
(のーちゃん!このままじゃ巨大蝶々のパクリみたいな名前になっちゃうよ!)
(あんまり似てないような気がするけど確かにこのままじゃまずい。)
ということで私たちは即座にルーナの腕をひしとつかんでうるんだような目でルーナの顔を覗き込んだ。
ルーナはその表情にときめいて私たちを抱きしめる。よし、これで!
「そう、あなたもプニョラがいいのですね!」
ちっがーう!
そっちじゃないとばかりに首を横にぶんぶん振って否定の意を表す。
「ちがう?ということはライムのほうがいいということですか?」
今度は力強くうなずいてもう一度顔を覗き込む。
「そうですか。あなたが気に入ったというのなら今からあなたの名前はライムです。よろしくお願いしますね。ライム。」
「少し頑張って考えたけど、ライムがいいということなら仕方ないね。」
レナも食い下がるような真似はしないらしい。助かった。
ということで私たちことライムは冒険者パーティーの新たな仲間として正式に迎えられたのだった。
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