第8話 女商会長登場!

国王様に休みを貰ったイオルは珍しく早起きし食堂で朝食をとりミレイアにバレないように慎重に王城を出て隣の都市へ向かった。




イオルが出かけてからしばらくした後ミレイアはいつも通りイオルを起こすために部屋に向かった。


コンコン


「イオル様、起きてください。」


「イオル様〜!起きてください!」


「失礼します。」


いつも通り返事がなかったので部屋に入ると部屋の中には誰もいなかった。


「今日もはやく起きて何処かにいったのでしょうか?」


そんな事を呟きながら部屋を見回すとベッドの上にメモが置いてあった



ミレイアへ


国王様に休みを貰ったから今日から3日ほど出かけてくる。一週間飯作る約束は帰ってきてからに延長してくれ、よろしく頼む。



ミレイアは、そのメモを読むと


「…ふ、ふ、ふざけてるんですかー!何で私に何も言わず出かけてるんですか!しかもちゃっかり約束の延期まで要求してきて図々しすぎますよ!わ、私だって疲れてるのに…」


徐々に怒る声にも力がなくなりミレイアはイオルのベッドに倒れ込んだ。


「…前はもっと真面目でかっこ良かったのに」



誰も居ない部屋でミレイアは呟いた。









ミレイアが部屋に起こしにきた頃、イオルは隣の都市ミストルスに到着していた。


(ここに来るのも久しぶりだな。半年ぶりくらいか?)


そんなことを考えながら街に入るための検査の順番を待っていると横を一台の見覚えのある馬車が通り過ぎていった。

その馬車は門の前で止まると中から若い18くらいの白い髪をショートカットにした女性が出てきて何か話すと街の中に入って行こうとしたのでイオルは慌てて声をかけた



「おーい!そこの馬車止まってくれ!」



「なんだあいつは?あの馬車がどこの馬車なのかわかってねえのか?」


「あ〜あ〜、どうなっても知らねぇぜあの男」


他の順番を待っていた者達はその馬車がどこのものか知っており余計な事をするとマズイということをわかっていたのである。しかもイオルは、普段の魔導士のローブではなく着心地のいい長年着ているくたびれた服という格好なのでよけいに変なやつに見られていた。


だがイオルは、馬車の正体をちゃんと理解しており中に乗っている人物が人物が今日この都市に会いにきた人だとわかっているので声をかけたのだ。


(いや〜、下手したら会えない可能性もあったからいきなり遭遇するとはツイてたぜ)


周りの反応など全く気にせず順番待ちの列から外れて馬車に近づいていった。


イオルの声が聞こえたのか門の前で止まっていた馬車から先ほど門番と何か話していた女性が出てきた。


「この馬車がどこのものか分かっていて声を掛けてきたのですか?分かっているのでしたらまた後日事前に連絡してからにしてください。」


近づいてきたイオルをバッサリ切り捨てる女性の言葉を聞き流してイオルは馬車の中にいるであろう人物に向かって声をかけた


「おーい、いるんだろアリーシャ。俺だ、イオルだ」


イオルが自分の名前を出すと馬車の中でガタガタッと音がした。


「イ、イオル⁉︎。あんた今までどこにいたのよ!王城に行っても居ないって言ってたし探したのよ!」


馬車の中から一人の女性が出て来た。イオルより少し年下にみえ背は160くらいで水色の髪を後ろで束ねたいかにもデキる女という感じだ。


「ん?王城で普通に宮廷魔導士してるぞ」


「はあ?半年くらい前から全く会えなかったんだけどどうしてたのよ?」


「あ〜、そういえば誰か来ても俺は居ないって全員に伝えてくれって王城の門番たちに頼んだったっけな。」


「はあ〜何でそんなことしたのよ。」


「なんか変な誘いとかあってめんどくさくなったんだよな」


「でも、私くらいは通してくれてもいいじゃない。それにこの街にも全然来ないし」


「ああ〜、悪い。すっかり忘れてたわ、この街に来なかったのも別に用がなかったしな」


「じゃあ、今日は何か用があって来たの?そうじゃないと来なかったでしょあんた」


「そうそう、ちょっと新しい魔道具について相談に来たんだよ」


「ほんと!また新しい魔道具作ってるの⁉︎」


イオルとアリーシャはここが門の前だということも忘れて話に花をさかせており全く終わりそうでないので最初に出て来た女性が話に割って入ってきた


「会長、こんな場所で話をしていても迷惑になりますから中に入ってからにしたらどうですか?」


イオルがアリーシャの知り合いだとわかったので他の場所での話し合いを提案した。


「そうね、そうしましょうか。じゃあイオル門番に私の知り合いだって説明しに行くわよ。そのために声掛けてきたんでしょ?」


「おう、流石理解がはやいな。よろしく頼む」



そういうとイオルとアリーシャは門番に説明をしに行き門を通してもらうとアリーシャの乗っていた馬車に乗って街を進んでいった


「イオルは、このまま私と一緒にくるの?」


「特にすることもないし、お前が忙しくなければ一緒に行こうと思うけど」


「大丈夫よ。それに他に予定があっても無理矢理あけるわ」


「そいつはありがたいな。」



そんなことを話していると馬車が止まったので

着いたのか降りると何回も訪れたことのある見慣れた建物があった。

アリーシャ商会とデカデカと看板に名前が書かれているこの建物はアリーシャが一から作った商会でありたった数年でこの都市で1番になり国の中でもかなり力を持った商会になってきている。主に魔道具などを取り扱っている商会である。


建物内に入って部屋に通されアリーシャが座ったのでイオルもそれに続いて座ったのだが部屋の中には先ほどの女性もいた。


「それでアリーシャ会長、こちらの方はどなたなんですか?」


「ああ、そういえばあなたはイオルとあったことなかったわね。こいつは私の商会で売ってる魔道具を開発した人なのよ」


「ええっ⁉︎そうだったんですか!そんなにすごい方だったなんて…失礼しました。」


「いや、別に気にしなくていいぞ。それでこの子は誰なんだ?」


「あ、はい!私は今アリーシャ様の側で護衛をさせてもらっています魔導士のハンナと言います。よろしくお願いします。」


「おう、よろしく。俺も一応魔導士をしているイオルだ。」


「先ほど会長と話している時聞こえたのですが宮廷魔導士というのは本当なんですか?」


ハンナは興味深々なようでそわそわしている。

そんな姿をみたイオルは仕方なさそうに空間魔法で別の空間にしまっていたローブを取り出した。


「ほれ、これが宮廷魔導士のローブだぞ」


そういってハンナにローブを渡した。


「ほ、本物だ!王国の紋章が刺繍されてる!す、すごいです!」


ハンナは目を輝かせながらハシャいでいる。

そんなハンナをイオルとアリーシャは苦笑しながらみていたが


「ハンナ少し落ち着きなさい。イオルは何か話があって来たんだから」


アリーシャが嗜めるとハンナは慌てて謝って部屋の隅に下がっていってしまった。


「それで、魔道具についての相談って何よ」


「それがな、今は遠隔通信の魔道具を作ろうと思ってるんだけど通信を飛ばす相手を決める方法が思いつかなくてだな。魔道具どうしで声を届けたり映像も届けられるようには出来たんだがそこが出来ないと完成させられなくてだな。」


「嘘!そんな魔道具作ってたの!それ完成したらすごい連絡とか楽になるじゃない!はやく完成させてよ!」


アリーシャが興奮した様子でイオルに詰め寄ってきた。


「いや、だから完成させられないからお前にアドバイスを貰いに来たんだろうが。お前も前は魔道具作ってたろ」


そう言うとアリーシャは困った顔をして


「いや、それもう数年前でしょ。今はもう作ってないしただの商会長なんだけど」


「それでも俺と会うまでは1人で作ろうとしてただろ?」


「まあ、出来なかったけどね」


そんな会話をしていると流石に気になってきたのか部屋の隅にいたハンナが


「あ、あの会長も魔道具を作っていたのですか?それにイオルさんは他にはどんな魔道具を作っていたのですか?」


「アリーシャは俺と会った時はもういろんな魔道具アイディアを持っていたんだが何一つ完成させらてなかったな」


「う、うるさい。そんな昔のこともういいでしょ。ハンナ、イオルの作ったもの知りたいんでしょ教えてあげるわ。あなたも使ってるその魔道時計よ」


魔道時計とは、普通の時計は一流の職人しか作れなかった為なかなか高かったのだがイオルの開発した魔道具は、時計の針を正確に動かす為の魔法陣を魔石に刻印したものに魔力を注ぐだけというシンプルなものだが、その魔法陣できるだけ簡単なものにしたのはイオルであり時計のアイディアを出したのはアリーシャであった。

魔法陣は中級魔法が使える魔導士であれば誰でも刻印できるレベルであり今では国中に広がっている。


「ええっ⁉︎これ、イオルさんが作ったんですか!すごいです!」


「まあ、最初のアイディア出したのはアリーシャだけど魔法陣作ったのは俺だな」


「そっちのほうがスゴイんだからいいじゃない」




その日は、しばらく昔の話などをしてイオルは街に着いたばかりだから今日は魔道具開発しないといい、それに対しアリーシャが気になるから詳しく説明しなさいと詰め寄っていてそんな二人と一緒にいたハンナが大変そうにしていた。











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