川の流れは突然に
草々緋美
かわわわわ
「なんかいつもと違うんだよなー。」
こう、川の中で木の板を引いているのだけれど、いつもと違う気がしていた。
雨が降った後だからなのか、いつもと違う違和感。
川を歩くのも遅くなったような気もする。
なんだか歩きにくいという感じだ。
途中、フレンズ達を乗せて川の向こうまで連れて行ったこともあったけど、そのフレンズ達も何か変だ、と言っていた。
自分だけが異変を感じてるわけじゃない。
「かと言ってセルリアンが多いというわけでもないし。」
いつもよりも歩きにくい川を歩いていると、ふと前の方、水が流れるギリギリの位置にラッキービーストの姿が見えた。
こっちを見てるような気がする。
近づいて行ってみる。
川の流れはそんなに早くないので、簡単に近づけた。
「どうかしたの、ボス?」
聞いてみたもののしゃっべってくれないのはいつも通りだ。
こちらと、背中の方を交互に何度も見ている。
「もしかして、乗りたい?」
しゃべった!と思ったらそれは勘違いで足音だった。
ちょっとだけ近づいてきたからだ。
足が濡れてしまっている。
水が苦手なわけじゃないけど、泳いでるのは見たことがない。
待っててねー、っと。
持ち手を動かして後ろの板を近づけると、器用に乗り込んだ。
こんなこと初めてだ。
ラッキービーストについていくことはあっても、ついてくることなんてなかった。
明日は雨でも降るだろうか?
再び川を歩いていると、声が聞こえた。
「おーい、ジャガー!なーにしてるのー?」
「ちょっとボスを運んでるんだよー。」
「なんでなんでー?」
「いやわからんが、なんだか乗りたそうだったからさ。」
「一緒に乗ってもいいー?」
「いいぞー。のれのれー。」
「やったー。」
よく見かけるコツメカワウソだった。
いつも通り石で遊んでいたけれど、その石を川に投げ込むのと一緒に後ろに乗ってきた。
「やったー。たのしーねー、ボス」
コツメカワウソにもやはり答えなかった。
「どーしてボスは乗ったのかなー?」
「わからんが、いつもより川が広がってるし渡れなかったんだろ。」
ボスの反応を見てみると、歩いてる方向とは逆、川の流れとは逆方向を見ている。
川からみる景色ってのは中々見れないもんだ。
珍しい景色を眺めてるのかもしれない。
「ねぇねぇ、ジャガー、なんか流れてくるのよ!たくさん。」
そう言われて見てみると、木の破片ごたくさん流れてきていた。
ちょっと大きめのも横を通り過ぎて行く。
「ん?なんだあれ?」
持っている板と似たようなものが流れてくるのが見えた。
「わーい。ボスだー。ボスがあそこにもいるよー。」
確かにボスが板の上に乗っていた。
川を泳がずに板と一緒に回転したり左右に揺れたりしてる。遊んでる?
すぐ後ろにいるボスも同じ方を、やってくるボスの動きの方をずっと体を向けて追っていた。
「ねーねー。せっかくだからあのボスも捕まえて乗せようよー。」
「そうだな。じゃぁやってくる方向に向かって歩くから、後ろからどっちの方向に動いたらいいか、肩を叩いて教えてくれ。」
「いいよー。まかせてー。」
コツメカワウソが叩いた肩の方向に動いて歩く。
誰かに動くきっかけをもらって川を歩くのは初めてだ。
意外と難しい。すぐ反応できない。
「もーちょっとだよー。それそれーそれっ!」
どすん、と板がぶつかった感じがわかった。
後ろを向いたらやっぱり新しいボスが一緒だ。
「つーかまーえたっ!」
「じゃぁ向こう側に行くかー。」
ゆっくり歩いていくけど、重くはない。沈むこともなさそうだ。
「はい、おまちどーさま。」
陸につけると、いつも通りにボス達は歩きだした。
こうみるとほんとにそっくりだ。
一緒にこっちに向かってお辞儀した。
コツメカワウソがそれにならってお辞儀する。
バランスが悪くなりそうだったのを何とかこらえる。
「これでよかったのか?」
もう一度片方がお辞儀した。
新しい方かどうか見分けがつかないけど、きっと最初に乗せたほうだろう。
あのまま流れていったら遠いどこかまで運ばれて行ってしまったかもしれない。
きっとフレンズの能力で気づいたから拾うために後ろに乗ったのだ。
パークに何か良いことをしたような気がする。
ボスは川の流れの方と逆の方へと別々に歩いて行った。
「今度じゃぱりまん、もう1個くれよなー。 」
逆の方へ向かっていったボスが一度こちらを振り返って、また元の向きへと歩いて行った。
「いいなージャガー。」
「一緒にもらえるといいよな。」
「だねー。たのしみー。」
同じボスに会えるかはわからないけど、少しだけ期待しておこう。
川の流れは突然に 草々緋美 @Kusa2_hibi
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