園の下の力持ち

草々緋美

隠れた

「ボス、何やってるんですか?こんなところで。」

目の前には岩と岩の間に耳から突っ込んていて、足をバタバタしているラッキービーストの姿。

普段から話しをしてくれることはなかったが、ピンチの時ぐらい叫ぶなり何なりしてくれればいいのに。

足を持って引っ張り上げようとしたけど、なかなか動かない。体力にはそれなりに自身があるのに。


「お、キンシコウ、どうした?」

一生懸命引っ張ってるところにヒグマが来てくれた。いつもどおり手を持ってる。正しく熊手だ。

「なんかね、ボスが穴にはまっちゃったみたいで。助けようとしたんだけど。」

「どれどれ。」

そういって近くまできてくれた。

「キンシコウが引っ張っても駄目ならこれ以上引っ張らないほうがいいかもな。」

「そ、そうかな?」

別にヒグマほど力が強いわけではなく、体術に長けてるだけ。だから力強く引っ張るのも手かと思ったのだけど。


「こういうときはさ、猿も木から落ちる発想で考えを変えて試してみようぜ。」

猿も木からで落ちるというのはこういう時に使える言葉なのだろうか?

変なとこが気になってしまったけど、ヒグマの言う通りだ。別の方法にしたほうが良いかも。

足じゃなくて体を持って引っ張ろうとした時、熊手が上から振り下ろされた。


突然の出来事にボスを壊すのかと思ったら、その前の岩に熊手は突き刺さった。

「よっと。」

抜き取ると岩全体にひびが入って、ボスがはまっていた場所にも細かく砕いた感じになった。

結果、すぽっとボスを取り出すことに成功した。

ちゃんと地面に立たせてあげると、何故か1回転した。


「ありがとう、助かったよ。」

「どういたしましてっ。」

ちょっと照れくさそうに鼻に手を当てているヒグマをボスが見上げていた。

そして、体を前に少しだけ傾けた。

その動作をこちらにもした。

ありがとう、ってことかしら?

「これから気をつけてね。」

「はまるんじゃないぞ。」

声をかけたが返事はない。


そして、ボスは振り返ると何事もなかったかのようにしんりん地方の方へと歩いていった。

しっぽもちゃんと振っている。元気そうだ。

木の影に隠れて見えなくなるまで見送った。


「ボスってたまにドジやってるよね。」

「ああ、なんで手を使わないんだろうな。」

「そうだよね、ボスも早くフレンズ化してくれればいいのに。」

「なぁ。」

頷いてくれたヒグマの方の向こうに別のボスがいた。

「ねぇねぇ、あそこにいるのもボスじゃない?」

さっき助けたボスとはちょうど真逆の方向だ。

「珍しいな、こんな近くにまたボスがいるなんて。」

こちらに近づくわけでもなく、じーっとこちらを見ていた。


見つめ合ってしばらくすると、満足したのか去っていった。

「助けに、来てくれてたのかな?」

「かもな。普段はそうしてるのかもしれない。」

「いつもはドジなところ、こっそり助け合って隠し合ってるのね。」

ヒグマと一緒に笑った。


いろんなとこで私達を助けてくれるボス、いつも何してるのかな。

ちょっと追っかけてみたいなと、ちょっとだけ思ったけどやっぱり恥ずかしいよね。

いつもありがとうね、ボス。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

園の下の力持ち 草々緋美 @Kusa2_hibi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ