探求と発見

草々緋美

火は怖いのです

「博士、料理が食べたいです。」

突然だが、わがままを言ってみる。

「同じことを考えていたのですよ、助手。」


ぺぱぷの1回目のライブが終わり、準備に使った本を片付け終わるとお腹が空いた。

だから、かばんが作ってくれたあの辛い料理を思い出してしまった。

じゃぱりまんが嫌いになったわけではなく、飽きただけ。

栄養のバランスも取れた食事であることは知っている。

でも一度違う味を知ってしまうと、忘れることは難しかった。

むしろ、忘れることは苦手だ。


「頑張って同じものを作れないものでしょうか?」

「今まで出来なかった。やはり火を何とかしないと難しいです。」

「ですよね。」

そう、いままで料理にチャレンジしなかったわけではない。

火を使うのはなんとなく恐ろしかった。

そのなんとなく感じていた「恐ろしい」が、かばんが、ヒトが使っているところをみて確信した。


火は恐ろしいものである、ということを。


「しかし、助手。諦めるのはまだ早いのです。」

博士のアフリカオオコノハズク、この島の長にして天才。何か発見したのかもしれない。

「なんですか!」

呼吸が早くなるのを感じ取った。

「ヒトが料理のために火を使っていたことは分かっています。しかし、料理に必ず火がないといけないとは限らないと考えられます。 」

「と、いいますと?」

「この島にヒトがいた時代、じゃぱりまんがあるように料理はありふれたものだったはずです。」

「そうですね。そこまでは解ります。」


「フレンズが火を恐れることはサーバルの反応を見ても明らか。ということは、ヒトは料理のために火を隠れて使っていたか、使わなくても料理を作る方法があった、そんなことが考えつきます。」

「そこには気づきませんでした。」

さすが博士だ。

本に書いてないことも考えることで新しい発見を与えてくれる。

まだじゃぱりまんを作っているところには入れていない。

そういう場所に道具があるかもしれない。


道具といえばこの前、アルパカ・スリに紅茶というものを作る方法を教えた。

「そういえば博士。」

「何か閃いたかなね、助手。」

「紅茶を作るときに、水からお湯に変える道具がジャパリカフェにはありました。あれば火を使っていませんが、煮ると似たようなことをしているのではないでしょうか。」

「なるほど、いいところに気が付きましたね。さすが助手です。」


博士に褒められた。

茶色の羽を思わずこすってしまう。

「水をお湯に変える道具は電気というものが必要。それを使う道具があれば料理ができるかもしれないでしょう。」

「ちいさな道具ではなく大きな道具になりますね、鍋のような。」

「その通りです、助手。」


思い出す。ジャパリカフェに行ったときのことを。

確か、道具が並んでいる場所には小さな物がほとんどで、鍋のようなものはなかった。


「山にはなかったように覚えています。」

「そうですか。助手が言うならおそらくそうでしょう。」

博士はこのワシミミズクの物覚えを頼ってくれていた。

それが何よりもいつも嬉しい。

「山にないのであれば、もっと電気がある地方になるかもしれません。」

「では準備しましょう、博士。」

「そうですね、寒くないように。」

そう、もっと電気がある場所はゆきやま地方だった。

また、博士と探険ができるのも料理を求めるのも楽しみだ。

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探求と発見 草々緋美 @Kusa2_hibi

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