パークの危機なのだ!
けものフレンズ大好き
パークの危機なのだ!
これはまだアライさんがかばんちゃんと会う前、フェネックちゃんとさえ会っていなかった頃のお話――。
「ここはどこなのだー!?」
さばくちほーにあらいさんの雄叫び(?)がこだまします。
「確かにアライさんは
アライさん、このときもいつもとからわぬ致命的な方向音痴ぶりを発揮し、目的地とは完全に逆の方向に進んでいました。
「これは何かおかしいのだ。もしやパークに危機がせまっているのでは……」
あくまでアライさんは自分の間違いを疑わず、信じた道を突き進むアライさん。
やがて――。
「もう駄目なのだ~」
砂漠で暮らせるようには出来ていないアライさん、目眩で倒れそうになってしまいます。
「大丈夫ですか?」
そんなとき、偶然通りかかったセルリアンハンターの3人が、アライさんに救いの手をさしのべました。
「うう、喉が渇いたのだ……」
「それじゃあこれを」
アライさんを介抱したキンシコウちゃんは、持っていた水筒をアライさんに渡します。
アライさんはそれを一気に飲み干すと、疲れが限界まで達していたのかそのまま豪快に寝てしまいました。
「なんかお気楽な奴だなー」
「とりあえず安全な場所まで連れて行ってあげましょう」
「仕方ない。私達がセルリアンを倒した帰りで、こいつも運が良かったな」
「別に行きでも助けてあげたでしょうけれどね」
「……ふん!」
それから3人はアライさんをオアシスの木陰まで連れて行き、そのまま休ませてあげます。
念のためキンシコウちゃんとヒグマちゃんは周囲の警戒に行き、リカオンちゃんがアライさんの面倒をみることになりました。
「それにしても本当に平和そうな寝顔ですね」
安らかな表情でいびきをかくアライさんに、リカオンちゃんも半分あきれ、半分感心します。
しばらくはそんなゆったりとした時間が流れていましたが――、
「パークの危機なのだ!」
アライさん、突然あまりにはっきりした寝言を言いました。
はっきりしすぎて、リカオンちゃんにはとても寝言には思えませんでした。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか!? パークの危機ってなんですか!?」
リカオンちゃんはアライさんの身体を揺すります。
それでも起きないアライさん。
ただ、寝相でどこか、本当に明後日の方向を指さしました。
リカオンちゃんは少し悩みましたが、結局アライさんを置いてキンシコウちゃん達に伝えにいくことにしました。
「んー」
リカオンちゃんが去って数分後、アライさんは目を覚まします。
「あれ、何か知らない間に移動してたのだ。さっすがアライさんなのだ!」
アライさんはキンシコウちゃんが助けた時点でほとんど意識を失っていたので、助けられたことを覚えていません。
それからアライさんは渇いた喉を潤し、再び自分の直感だけでみずべちほーへと向かいました。
「たいへんです、パークの危機です!」
『?』
リカオンちゃんはキンシコウちゃんとヒグマちゃんに合流できましたが、当然2人には何が何だか分かりません。
「どうしたんですリカオン? もっと分かりやすく言って下さい」
「ああ、すみません。実はさっき助けた奴が、パークの危機だってあっちの方角を指してたんです。それで伝えようと」
「どうせ寝言なんじゃないか?」
「あんなはっきりとした寝言言う奴なんていませんよ!」
残念ながらいました。
それでも事情が分からないキンシコウちゃんとヒグマちゃんは無視することも出来ず、言われた方向へと歩いて行きます。
しかし、いうまでもなく行けども行けども何もありません。
「やっぱり適当に言っただけなんじゃないか?」
「自分もそんな気がしてきました……」
「でもこのあたりはやけにサンドスターの気配が強いですね。気になります――」
そうキンシコウちゃん言ったとき、突然砂の中から何かの腕のような物が。
実戦慣れしている3人は、捕まる前にすぐにその場から逃げます。
数秒後には、今まで見たことがない四つ足の巨大なセルリアンが姿を現しました。
「なるほど、こいつがパークの危機か!」
「手強そうですね」
「こ、これ他のハンターに助けを呼びに行った方がいいんじゃないですか!?」
「ここで逃がしたらまた砂の中にもぐられる、覚悟を決めろリカオン!」
「オーダーきついです!」
3人は最初から野性解放し、セルリアンに挑みます。
けれど、足場が不安定で、弱点の石は頭頂部にあったため、身体を削るのだけで精一杯です。
しかも強い日差しもあり、暑い場所が苦手なヒグマちゃんは体力を急激に奪われてしまいます。
「まずいなこれは……」
「最悪逃げることも視野に入れないといけませんね」
「うう……」
3人の誰もが諦めかけたその時です。
不意にセルリアンの体勢が崩れ、前のめりになりました。
「今だ!」
このチャンスを逃すほど3人も素人ではありません。
咄嗟の判断でキンシコウちゃんとリカオンちゃんが足場になり、ヒグマちゃんが飛び上がります。
「いけー!!!」
ヒグマちゃんはがら空きになった頭頂部の石めがけ、渾身の一撃を振り下ろします。
数秒後――、セルリアンの身体は砂漠へと還っていきました……。
「終わった……」
「今回ばかりは死ぬかと思いましたよ」
「今までで最悪のオーダーでしたね」
「疲れたし喉も渇いたし腹も減った! 早く帰って死ぬほどジャパリまん食いてー!」
「その前にあの子の様子を見に行かないと」
そうキンシコウちゃん言いましたが、戻って見るとアライさんの姿は影も形もありません。
「もう帰ったんだろ」
「少なくともかなり元気そうでしたからね」
「そう……かもしれませんね。それでは私達戻りましょう」
その頃、アライさんはどうしていたかというと――。
「いやあ、上でセルリアンが暴れてるみたいだから、とりあえず穴でも掘ってみたけど、上手くいってよかったよー」
今まで隠れていたフェネックちゃんがひょっこり顔を見せます。
そしてさらにその数分後――。
「誰か助けてなのだー!」
フェネックちゃんが掘った別の穴に、明後日の方向目指して歩いていたアライさんが見事にはまります。
「いやーごめんごめん、私はフェネック。まだ生まれたばっかりなんだよー」
「だったらアライさんに任せるのだ! 全部丸ごとアライさんがなんとかしてやるのだ!」
「えーっと……」
穴にはまったことといい、どう見ても頼りないアライさんでしたが、何故かフェネックちゃんは信じていい気がしました。
「――わかったー。それじゃあこれからもどうぞよろしくね」
おしまい
パークの危機なのだ! けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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