サーバルの決断

けものフレンズ大好き

サーバルの決断

 黒セルリアンを倒してから数日後――。

 今日もかばんちゃんとサーバルちゃん、そしてボスはジャパリパークを旅しています。


「今日はどこ行こっかばんちゃん?」

「そうだね。ジャパリカフェもまた行ってみたいし、PPPぺぱぷのらいぶも気になるし、それにぼくがどこに住むかもいい加減決めないと」

「大忙しだね!」

「うん……あ!」


 かばんちゃんが気付いて指を差したときには、時すでに遅し。


「うみゃあ!!!」


 サーバルちゃんの後頭部に、音もなく飛んできた博士の膝が炸裂します。

 転がるサーバルちゃんは無視して、博士とそして助手はかばんちゃんの前に降り立ちました。


「久しぶりですね、かばん」

「息災ですか?」

「は、はあ……」

「もう、ひどいよ! それにかばんちゃんに料理を作らせるために、一昨日も会ったばかりじゃない! また無理矢理連れてくつもり!?」

「あはは……」

 かばんちゃんは苦笑します。

 最近ではいつでも料理を作れるよう、かばんに道具を入れて行動するようになりました。


「今日はかばんではなく、サーバルに用があるのです」

「四の五の言わずに来るのです」


『ええ!?』


 驚く2人をよそに、博士はサーバルちゃんをつかんで舞い上がります。


「どういうこと!?」

「来れば分かるのです」


 結局博士は目的地に到着するまで、それだけしか答えませんでした……。


「到着したのです」

「ここは……」

 たとえいつも暢気なサーバルちゃんでも忘れはしません。

 そこはサーバルちゃんが黒セルリアンに飲み込まれた場所でした。

 そして今なお、黒セルリアンの被害を被った物が残っている場所でもあります。

 

 ただ、それはサーバルちゃんの記憶とは少し違っていました。


「言うまでもなく、これはお前達が乗っていたバスです」

「あれ、でももっとぼろぼろだった気がするよ、それになんで、周りに丸太と綱とか置いてあるの?」


「それはこのバスを利用して、船を作ろうとしているからです」

「船!?」


 博士の言葉にサーバルちゃんは心の底から驚きます。

「実は他のフレンズには話し、すでに協力もして貰っています」

「話すのはお前が最後です」

「なんで教えてくれなかったの!?」

「お前が四六時中かばんと一緒にいて、なおかつ簡単にぼろを出しそうだからです」

「そんなことをされたら、今まで隠れてやってきたのがパアです」

「えー私はそんなことしないよー」

 ――と答えたサーバルちゃんの目はかなり泳いでいました。

「これからはお前も――」

「・・・・・・」

「――なんです、かばんが船をもう一度手に入れられることを喜んではいないのですか?」

 博士と助手は、脳天気なサーバルちゃんが普段は絶対に見せないような、複雑な表情をしていることに気付きます。

「え、ああ、ううん、かばんちゃんが仲間の所に行けるかも知れないんだから嬉しいに決まってるよ」

「……サーバル、お前はまたかばんと別れるのが辛いのですね」

「顔に書いてあるのです」

「え……」

 サーバルちゃんはドキリとします。

「そ、そんなこと……」

「ヒグマからも話を聞きましたが、かばんを一番大切に思っているのがサーバルであることは知っているのです」

「もしお前がどうしてもいやなら、船は渡さなくても良いのです。他に使い道もあります。お前の話なら他のフレンズも納得するのです」

「・・・・・・」

「とりあえず一旦戻ると良いのです」

「戻ってかばんと話すのです。話はそのあとに聞くのです」

「ただ船のことは口が裂けても言うなです。言ったら本当に口が裂けるのです」

「こわいよ……」

 そう答えたサーバルちゃんの声に、いつもの元気はありませんでした……。


「どうしたのサーバルちゃん?」

 戻って来たサーバルちゃんの表情があまりに優れないので、かばんちゃんは心配します。

「ううん、なんでもないよ!」

 無理に笑顔を作って答えますが、気分は全く晴れません。

 博士と助手に言われたことは図星で、どうすればいいのか全然分からなかったのです。

 しばらく、2人は黙り込みます。


 やがて――。


「うみゃー!!!」


「サーバルちゃん!?」


 あまりに悩んで、頭を使いすぎたサーバルちゃんは思わず叫びます。

 それにずっと黙っているのも限界でした。

 まだ心の中がぐちゃぐちゃでも、博士の言ったとおり、とにかくかばんちゃんと話そうと思いました。

「……ねえかばんちゃん。やっぱりまだ他のヒトに会いたい?」

「そうだね……うん、会いたいよ」

「そっかー」

「でも今すぐじゃなくてもいいんだ。だって生きていれば必ず会えるから。たとえぼくがサーバルちゃんとさばんなちほーで会えなかったとしても、ここにいる限り必ず会えたんだ」

「・・・・・・!」


 それがかばんちゃんの、いえ、サーバルちゃんの答えでした。


「……そうだね! 少しぐらいお別れしたとしても、またきっと会えるよね。それに今まで会えなかった新しいお友達とも会えるかもしれないし!」

「うん」


 あやふやだったサーバルちゃんの決意は固まりました。


 翌日――。


「……それでいいのですね」

「うん。だから絶対に沈まない船を作ろうね!」

「当然です」

「むしろお前が足を引っ張らないようにするのです」

「ひどーい!」


 こうして折を見てサーバルちゃんもバスの改造を手伝うようになりました。


 時には泣きそうになっても――。


 そんな日々が続いたある日。


「あれ、ところで博士、あっちにあるのは何?」

「あれはバスと違い、電池がなくても動かせる船です」

「電池で動く乗り物はラッキービーストと意思疎通ができないと、動かせませんから。それに、これからは海にも目を向けないといけないので」

「ふーーーーーーーーん」

 

 翌日――。


「ねえねえアライさん、ちょっと話があるんだけど」


                                  おしまい

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サーバルの決断 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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