大友家の事情

大友宗麟、元の名前は義鎮よししげという名であった彼は、美しく病弱な猫だった。

そこに来て、大友家の御曹司であるという、設定の大盤振る舞いな義鎮であったが、そういう設定もちにありがちな傲慢さが、彼にはあり、それはたとえば手当たり次第女性を抱いてしまうという、好色な所にあらわれた。

そういう部分を嫌悪した父であるよしあきは、

『うむむ、にゃつをにゃんとかしなければ、にゃらないにゃ』

と、彼を無理やり去勢しようとしたり(それでは、後継ぎが生まれないので、断念)して、親子関係は悪化の一途をたどる事となる。

そして、とうとう義鑑は、義鎮派の重臣2人を呼び出し、彼等を暗殺しようとした。

しかし、反撃されてしまい、2階から投げ落されてしまった。

この事件を

『大友の2階崩れ』

という。

こうして、期せずして当主の地位に就いた義鎮だが、この混乱をついて、大内が攻めてこないかと、身構えていた。

しかし、大内は大内で、当主義隆に対する陶晴賢の謀反から始まる混乱の極にあった。

義鎮は、むしろ棚ぼた的に、労せずして、博多一帯を獲得する事ができた。

だが、これは彼の苦悩の始まりとなる。

大内の後を、結果的に継いだ毛利は、博多を力ずくで獲得し、自ら支配するという大内の戦略をやめて、大友家中を混乱させる事によって、力を削ごうとしたのである。

棚ぼたで勢力を拡大してしまったがために、大友は、秋月あきつきをはじめ、支配下にあった領主たちに立て続けに裏切られることになる。

なんとか鎮圧した義鎮だが、混乱は続いていて、家臣の1人で

『雷神』

とも呼ばれた名将である立花たちばなどうせつの一睨みで、かろうじて何とかなっているという有様であった。

その隙に、毛利の逆方向から勢力を拡大しつつあるのが、ほかならぬ龍造寺隆信である。

そうした中、義鎮あらため宗麟は、女あさりや、ちょうどこの時期に伝来した西洋文化、

特にキリスト教に耽溺たんできすることになる。

それは、家中の混乱をさらに増すことになるが、今はまだ、キリシニャンになっていないので、そこまで亀裂は見えていない。

ともあれ、これが、今山の戦いまでの、大友の状況である。




さて、時を、今山の戦いの直前に移すと、この時点で宗麟は諸問題に対して、彼なりに色々対処している。

たとえば、弟を大内を継がせることで、毛利家中を混乱させようとしたり、また南方の

伊東いとう

土佐とさ一条いちじょう両家と血縁関係を結ぶことによって、後顧こうこの憂いを断つ事ができるようにしたり、大忙しだった。

『さてと、後は龍造寺だけニャけど…』

と、宗麟は、肉球をペロペロしながら、思案している。

側には、美しい雌猫が、

『かまってにゃん♪』

という感じで、背中の毛繕いをしている。

しばらくすると、彼は弟のちかさだを呼んだ。

『兄にゃ、いかがしましたかにゃ』

『うむ、ボクのニャン代で、龍造寺を攻めてほしいのニャけど』

『わかりにゃした、私におまかせくにゃさいにゃ』

と、親貞は言った。

大友親貞は、見目麗しい美猫である。

武将としての能力はあまりないが、大部隊を率いる分には不足はない。

『6万位連れて行くニャ』

と、宗麟は言った。

いよいよ、大友は、龍造寺を潰そうと、動き出した。

はたして、6万もの大軍勢に対して、龍造寺は、いかなる戦術を見せるのか?

嵐はすぐそこまでせまっている。

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