ともだち
もここ
ともだち
(しまった。)
対峙するセルリアンとの力の差は五分。ほんの一瞬の油断が命取りだとわかっていたのにあと一歩のところで油断した。
ああ、さっき助けた女の子は無事に逃げられただろうか?誰かを庇って死ぬとか自分らしくないなって笑えてきた。
そう思ったと同時に頭上から光が落ちてきた。
いや、それは光というより雷の様だった。そして雷は目の前のセルリアンのコアを破壊していた。
その雷はひとつに束ねた長い後ろ髪をゆらしながら振り返る。
「あぶないところでしたね」
クリクリとした大きな目で話しかけてくる。
「大した事ねーよ」
そう強がったものの内心は冷や冷やものだった。
「しかし運が良かったですねー。さっき女の子とすれ違って教えてもらったんですよ」
ああ、どうやら女の子は無事に助かったらしい良かった。安堵の息を漏らそうと思った瞬間に後ろから黒い影がものすごい速さで近づいてくる。
その影がセルリアンだと気づくのに少しも時間はかからなかった。
身体の大きさの割りにかなりの早さだ、とても逃げ切れるとは考えにくい。
「おまっ、まさかアイツ連れて逃げてきたのかよ!」
「いやースミマセン。一人なら無理でも二人ならなんとかなるかなー?と思いまして」
「なんとかなるって、おまえ連れて来てるなら先に言えよ!話してる暇があったら逃げれたかも知れないだろうが!」
「そんな無理ですよー。だって私が振り切れないんですよ。だったら迎え撃つ方が確実ですし」
「だからって・・・」
そう言い合ってるうちにセルリアンは目の前まで迫ってきていた。
しかし大きい体格差で言えば俺の3倍いや4倍近くある。
その身体は平べったく足は6本で弱点のコアは額に剥き出しでさらされている。
「なんだよコイツ見たことない形してるな。まるでゴキブ「わああああ」」
雷が大声をあげる。
「このゴキ「あああああああああああああああああああああああああああ」」
再び雷が大声を上げる。
「なんでお前ゴ(ふがふがっ)
「ええ!苦手というより嫌いです!あんな気持ち悪い生き物なんて滅べばいいです!いえ滅ぼしましょう!あと、お前ではなくキンシコウです」
「おおう、俺はヒグマだ」
「ええ改めましてよろしくおねがいします」
ゴキブリ否セルリアンとの距離は0になっていた。
ええい、一度は駄目だと思った命だ諦める前に派手に暴れてやるか。
息を吐き気合を入れる。
「キンシコウ!一気に攻めるぞ!」「はい!」
そう言ってセルリアンの前に一気に出て大きくハンマーを振りおろす。剥き出しのコアはぶっ叩くには丁度いい高さにある。当たれば一撃で倒せるはずだ。
「くらえええええええ!!!」
しかしセルリアンは身体を枝のようにしならせ大きくのけぞる。そして振り下ろしたハンマーは宙を切り地面に突き刺さる。
今度はセルリアンがのけぞった身体を鞭のようにして攻撃してくる。間一髪で体勢を整えなんとか受け止める。そう思った途端セルリアンが覆いかぶさるように前足で連続で叩いてくる。セルリアンの身体に包まれる形になり反撃の手も出ない体勢で叩かれ続ける。
身体が薄い分さっきのヤツよりパワーは劣るようだな。しかし攻撃が軽いと言ってもそういつまでも耐えられる強さではないぞ。
頭上で甲高い金属音が鳴り響く。どうやらキンシコウがセルリアンを背後から攻撃しているようだ。しかし一向に効いてる雰囲気が感じられない。
このセルリアン前方にコアが剥き出しで倒しやすそうに見せて、おびき寄せ背中は強固な身体で防御力は高いし誘い込んだ敵を逃がさないだけの速さも持つ、このセルリアンは実に強敵なんではなかろうか。
このままではやられてしまう。一度距離をとらなくては。
そう思い攻撃の合間を縫うように身体を転がしセルリアンから距離をとる。追撃はない。どうやら出方を伺ってるらしい。
キンシコウがいつの間にか背後に立っている。コイツもしかしてかなり強い?
そもそも俺にセルリアンを押し付けたら逃げれられたんじゃないか?人が良すぎるだろ馬鹿かよ。まあ、そんな事は後回しでいい。
どうする?このままではジリ貧だぞ。何か手を考えなくては・・・。
「あの」「なんだ?」
「このままでは危険ですし一か八か私に考えがあるんですが良いですか?」
「なんだ言ってみろよ」「では、まずヒグマさんが突っ込んでゴニョゴニョ」
「はあ、そんな上手く行くか?」「所詮、相手は畜生ですよ。相手を知れば負けるわけないじゃないですか」
「よし、他に手があるわけでもないし信じるぞ」
「はい!ヒグマさんでは行きますよ!」
そう言ってお互い走り出す。キンシコウは俺の後ろだ。
セルリアンに一気に詰め寄りハンマーを振り下ろす。セルリアンが仰け反る。
ここまではさっきと同じだ。そこへキンシコウが駆け寄り俺の丸めた背中に肩に足を掛ける。と同時に立ち上がり反動でキンシコウを大きく跳ね上げる。
飛び上がったキンシコウはセルリアンの頭上へと降り注ぐ。それは最初に見た。まさに落雷だった。
「いけえー!キンシコウおおおお!」
「はああああああああああああああ!!!」
キンシコウの棍がセルリアンのコアを叩き割りセルリアンが砂と化して星に還っていく。
「やりましたよ!ヒグマさん!」「おお、やったな!」
二人でハイタッチを交わしキンシコウと反対側へとそのまま歩き出す。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよー」
「なんでだよセルリアン倒したんだから、もう用はないだろ」「そんな慌てて何か用事でもあるんですか?」「行く宛もないよ。ただこんな危険な場所さっさと離れたいんだよ」
「だったら一緒に行きましょうよ」
「なんでだよ」
「だって私たちトモダチじゃないですか!」
ともだち もここ @mokoturn
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