人攫い事変の章 其ノ七
「ここは妖怪の作り出した世界ね。でも花や木は幻じゃなくて本物……こんなことが出来る相手は相当強力な妖怪に違いないわ」
(一体、どんな奴なんだべ……)
そう思いながらもイロハは、さっきの戦いを自分の中で振り返っていた。
志乃が光を放った瞬間、
以前妖怪と戦った時、志乃に
『自分が何の為に戦い、何の為に相手を仕留めるか。理由はどうあれ戦いの
わかっている……わかってはいた。しかし、現に実戦で躊躇いが生じてしまった。先程自分を「変わった」と言ってはいたが、もしかすると自分を気落ちさせないよう気遣ってくれてのことなのかもしれない。
志乃もかつてこんな風にわだかまりを感じた時期があったのだろうか。真っ直ぐ前を歩く志乃を見ながらそんなことを思った。志乃の使う強力な術も凄いが、何より
しかし志乃が冷酷な悪鬼でないこともイロハは良く知っていた。そうでもなければ自分が
志乃、どうしてお前はそんなにも強い?
物思いに
「ここ、さっき通ったぞ」
「ほんとに?」
「そこの木の曲がり具合、見覚えある。匂いも一緒だ」
──もしや妖怪の幻術では!?
神経を研ぎ澄ませ、注意深く辺りを見渡す。
相手はどこだ?
そもそも相手はいるのか?
「!!」
足元に何かを感じ、とっさに飛びのく。
動けなかった志乃は地面から生えてきた植物に囲まれてしまった!
「志乃っ!!」
「
茨の
助けに行こうとするイロハだが……。
「うあっ?!」
地面の草が
盛大にぶっ倒れたイロハの手足を
「くそ! こんなもん!!」
イロハが引きちぎろうとするも、
「に゛に゛に゛!!」
「してやられたわね」
『ムダだ。その
捕らえられた二人の前に、一本の大木の幹が
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