幸運の行方
草々緋美
ボスを追いかけて
「まだ、いらっしゃいますかー?」
スナネコが暑さを遮ってくれる穴の続く道を歩きながら叫んでるのが聞こえた。
「ワタシならいるぞ〜。」
そうツチノコは答えた。
ちょうどヒトらしきフレンズとサーバルキャットが入ってきた場所にいた。さっき壁が閉まってしまったので、一旦外から大回りしてここにたどり着いたところだ。
外からならなんなく開けることができるので、その作業中に声が聞こえた。
「サーバルはもういないの?」
「あいつらならさっき外に出て図書館に向かって行ったぜ。」
「そうですかー。」
「のどが乾いたのか?」
「いえ、さっきじゃぱりまん食べたばかりなので。」
「ならどうした?」
「ボスがいるので、はぐれちゃったんじゃないかと。」
スナネコは来た方向を指差した。
ツチノコはそちらの方向に目をやる。
かばんとかやらが来た時は明るかったここも、今は暗い。
だからおぼろげながら光るものが近づいてくるのがわかった。あれがボスだろう。
静かな時間が長くならないうちに、2人のいる場所にやってきたボス。
「さっきの子達、ボスと一緒だったのにまだこんなとこにいるから。」
「いや、さっきの2人はボスと一緒だったぞ。喋ってたし。何かに乗って出かけていった。」
「あれ?じゃあこのボスは?」
「別のとこにいたやつだろうな。」
「そっか、ボスがたくさんいることないもんね。」
「そもそもあんまり見かけないが。」
ボス自体なかなか見かけることがない。
見かけたときは何かいいことが起こる前とも聞いたことがある。
ツチノコ自身はこのあたりにこもっていて、じゃぱりまんを手に入れる場所をずっと見張ってると出会うことがまれにあった。
だがここらへんでは、『ボスを見かけた時は必ず後を追うこと』、という掟になっていた。
今日はスナネコの後ろをボスがついてきたように見える。
「あ、」スナネコが声を出すのと同じようなタイミングでツチノコも感じた、気配。
ボスも来た方向を振り返ると端によって行った。
すぐに強い風が襲って来た。
フードで顔を隠す。
しゃがむようにしてスナネコは風を避けていた。
ボスもこの風に襲われないよう逃げてきたのだろう。ボスの気配だけはよく感じていた。
しばらくすると、ボスは来た道を戻って行った。
「何も言わずに行っちゃいましたね。」
スナネコはそう言い残して後を追いかけていった。
「またな。」スナネコに届いたかわからないような声の大きさで見送った。
「やっぱりあいつらを追いかけてきたわけじゃないのか。」
ボスは喋らない。
そう思っていたが、さっきサーバルと来たボスは喋っていた。だから喋ることでコミュニケーション取れるのかと思ったが何を考えてるのか全然分からなかった。
「探検に役立つ何かを教えてくれりゃいいのに。」
サーバル曰くかばんには話してくれるらしい。
「あいつもヒトが恋しいのかもな。」
ヒトを感じさせるこの空間は自分好きだった。
幸運の行方 草々緋美 @Kusa2_hibi
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