三月二二日

 ジャパリパークは今後どうあるべきなのだろう。このままフレンズたちの自由を守るべきなのか。あるいはまた人が上陸して暮らせる道を模索するのか。それとも、距離を置きつつも積極的に交流を持つべきなのか。

 今のフレンズたちの生活が、私たちの遺した設備に依存しているのは明らかだ。特に電気・水道のインフラと食糧の面で。パークの放棄後、今もフレンズたちがそれらのメンテナンスを試みながら独自の文明を築いていることは間違いない。しかしこのままでずっとやっていけるのだろうか。仕組みを知って維持するのと、あるものを使いこなすにとどまるのとでは全然違う。現に、ジャパリパークではヒトがいなくなって誰にも使われぬままの施設も多い。彼女らが必要最小限のメンテ技術を身につけるまで、私たちが協力していく余地があるのではないか。

 少なくとも、この先を見極めるためにもっと調査が必要だ。もし彼女たち自身が彼女たちの行く末を決められるよう私たちが身を引くべきだとしても、せめて今の生活を維持できる手伝いはしたい。

 港の施設に通信装置の残骸が多く残っており、それらを組み合わせて何とか本部と連絡を付けた。本部は私たちのことを絶望視していたらしく、上陸から二ヶ月強も経って連絡のあったことに驚いていた。もっともヘリコプターが墜落した事故のことを彼らは把握済みだった。消息を絶って以降、キョウシュウ地方全域の衛星写真を目を皿のようにして見ていったが、私たちがフレンズ化してしまったため見つけられなかったようだ。着ている服以外に共通点が無かったものね‥‥。

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