古代から続く道

駅員3

第1話 道の歴史

 東京は、江戸時代に大規模な都市計画など無いまま発展し続けてきた。江戸時代は所謂住所は無く、無秩序に発展したため、ランドマークとなる「〇〇橋袂」とか、「〇〇坂上」といった表現で地名を現したため、「坂」や「橋」の名前のつく地名が現代に続いて多く残っている。

 一方京都では、中国に倣って条里制を取り入れて都を造築したため、南北に「通り」、東西に「条」が整然と並んでいる。

 さらに大阪に行くと、南北に「筋」といわれる道が走り、東西は「通り」と名づけられた道が走っている(もちろん、例外はいくつかあるが)。駅の前にあるバス停は『〇〇駅前』と名づけられ、駅近くのバス停は『〇〇駅筋』と名づけられたりもする。大阪は何北に広がる上町台地から西の低地へと町が発展していった。この町が『通り』であり、横に広がった町と町を、縦に結ぶ道である『筋』が発達していったともいわれている。


 東京には、『〇〇筋』と呼ばれる道や地名はない。そもそも『筋』は細長くかつ何本か連なったものをさす言葉で、江戸時代に地勢によって区分された行政区画でもあった。江戸に大規模な都市計画などなく、和紙に墨を垂らすとだんだん周りににじんでいくように、じわじわと同心円状に広がっていったことから、『筋』ができなかったのだろう。

 住所の概念は以前書いた『銀座ナイン』でも触れたが、再度記すと次のようなものだ。

 普段私たちが住所と聞いて思い浮かぶのは、1962年(昭和37年)に施行された『住居表示に関する法律』に基づいて付けられたものだ。

 この住所は、『道路方式』と『街区方式』があるが、ほとんどの場所で『街区方式』が採用されている。


 街区は、道路、川、鉄道など恒久的な施設で区分けされた一つのブロック(法律では3,000㎡~5,000㎡とされている)毎に番号が振られる。

 たとえば『銀座1丁目(町名)1番(街区)1号(住居番号)』と付けられる。

 住居番号は、市区町村の中心に近い角(概ね市役所・区役所に近い方)を起点として、時計回りに番号が振られていく。ここでご注意いただきたい点は、『住居』に番号が振られていくという点だ。

 つまり、建物に番号が振られるのであって、更地(建物のたっていない土地)には住所(住居番号)は無いという事である。

 更地に新しく家が建つと、市役所・区役所に行って申請することにより、市区町村が住居番号を決める。


 では、建物の建っていない土地の住所はないのだろうか? 実は土地には『地番』が付けられている。

 地番は、明治に入って地租改正により土地から税金(固定資産税)を徴収するため、土地の所有権を明確にする目的を持って付けられた番号だ。


 住居表示のように秩序だって付けられたわけではなく、分筆(一つの土地を分割する)や合筆(複数の土地を一つにまとめる)により連続した番号が必ずしも隣同士にあるとは限らない。

 つまり『地番』は土地の範囲の概念を示し、『住居表示』は、位置の概念を示すと考えるとわかりやすいのではないだろうか。


 さて、『道』は、人類史上集落が出来ると、集落と集落の間に

  1最短距離で

  2安全に

  3歩きやすい

以上の要件を満たしたところに『踏み分け道』が自然発生的に出来上がった。人々の営みが道へとつながっていくのである。


 世界中で最も古い人の手で整備された道は、紀元前3800年のイングランド南西部のSweet track にある土手道だと言われている。

 その後大々的に整備された道といえば、何と言ってもローマ帝国が築いた『ローマ街道』だろう。紀元前3世紀頃から整備が始まり、2世紀頃にはローマ全土を結び総延長29万キロに及んだといわれている。


 一方日本における道路建設は、日本書紀に5世紀頃に道が造られた記述がみられるが、はっきりしたことは判っていない。

 日本書紀の推古天皇21年(613年)の条に、「難波(なにわ)より京(飛鳥)に至る大道(おおじ)を置く」と記された「大道」のルートが、大阪と奈良を東西に結ぶ竹内街道と重なることから、日本最古の官製街道と言われている。

 大化の改新に『駅伝制』を布く旨の記述があるが、山陽道、西海道、東海道など、九州から関東に至るまで、広範囲に整備されたようだ。


 1995年(平成7年)東京都国分寺市泉町で『東山道武蔵路』が全長340mに渡って発掘調査された。発掘された古道は、なんと道幅は12mもあり、側溝まで備えられていた立派なものだった。

 最近の発掘調査の結果、古代の官製道路は都周辺では24m~42m、地方では6m~12mであったことが判っている。

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