誰にも知られずに咲く花

けものフレンズ大好き

誰にも知られずに咲く花

 黒セルリアンを倒してから数日経ったある日のジャパリカフェ。

 そこには少しだけ懐かしいお客さんが。


「ふぁ~いらっしゃ~い」

「どうも」

「あらいらっしゃい」

 久しぶりにジャパリカフェに訪れたかばんちゃんを、アルパカちゃんとトキちゃんは笑顔で迎えます。

「約束通りまた来ました」

「わ~嬉しいなぁ~」

「ふふ、ところでサーバルは?」

「実は……」

 かばんちゃんは後ろに視線を向けます。

 そこには――。


「あらあなたは?」

「マーゲイよ、よろしくね」


 ジャパリカフェに来るのは初めてのマーゲイちゃんがいました。


「ロープウェイは3人だと狭いし、往復するのを待ってるのは面倒だからって、サーバルちゃんはまた崖を登ってます」

「無理矢理詰めれば入れないこともないし、崖を登る方が大変だと思うけど、『2回目だから大丈夫!』って……」

 マーゲイちゃんは呆れらながら言いました。

「新しいお客さん嬉しいねぇ~。ねぇ何飲むぅ? 前より紅茶の腕前上がったんだよぉ~。博士も褒めてくれたんだぁ~」

「ああ、私は紅茶を飲みに来たんじゃないの」

「なんだぁ、お客さんじゃないのかぁ……。ぺっ!」

「ああ、アルパカさん!」

 かばんちゃんが慌ててアルパカちゃんを宥めます。

 

「それで、マーゲイは結局何しに来たの?」

「あなたに用があったのよ」

「私に?」

 トキちゃんは不思議そうな顔をします。

 結局マーゲイちゃんもジャパリカフェで紅茶を飲みながら話すことになり、アルパカちゃんが嬉しそうに準備をしています。


「実はPPPぺぱぷのらいぶの演出で、花を使おうって話になったんだけど、折角だから綺麗な花が使いたくって。それで色々な所に行っているあなたなら詳しいと思ったの」

「そうね、確かに今まで高いところから色々な花を見てきたわ」

「それじゃあ今まで見た中で一番綺麗だった花は?」

「うーん……」

 トキちゃんはしばらく考えます。

「この近くに咲いている青い花はとっても綺麗だと思うわ。それ以上だと、どこで見たか忘れてしまったけど、赤くてとっても美しい花があったわね……」


「それよ!」


 マーゲイちゃんは身を乗り出します。

「是非その赤い花が見たいわ! どうにかできないかしら!?」

「うーん、それなら前にかばんにしたみたいに、一緒に飛ぶのはどうかしら? あまり長い距離は無理だけど、そこまで遠くで見たわけじゃないと思う」

「じゃあおねがいするわ」

「それじゃ僕たちはここで待ってますね」

「いってらっしゃ~い」


 こうしてトキちゃんとマーゲイちゃんは花を探すために、大空へと舞い上がりました。


「高いところは得意なつもりだけど、これは結構怖いわね……」

「あなた思ったより軽いわね。これならもっと遠くまでいけそう」

「できれば近くで見つかって欲しいわ」

 マーゲイちゃんに空の旅を楽しむ余裕はありませんでした。


 それから2人で周囲の山々を探します。

 途中で何回か降り、赤い花も見つけました。

 ただ、どれもトキちゃんが言っていた花ではありませんでした。


「他の花じゃ駄目なのかしら?」

「PPPはいつも全力でらいぶをしているわ。だったらマネージャーの私も出来る限りのことを全力でするしかないじゃない」

「そう。私、PPPは知ってるけど、あなたみたいに影で頑張ってる子がいるなんて知らなかったわ。ぺぱ~ぷ~のまね~じゃ~の~♪ ま~げい~は~♪ すご~い~がんばって~る~♪」

「へえ、何か惹かれる歌声ね。PPPとコラボしたら面白いかも」

「その時はよろしくね」


 それからまた2人で山々を巡りますが、結局花は見つかりませんでした。

 次第に日も暮れてきたので、仕方なく2人はジャパリカフェに戻ります。


「おつかれさまです。どうでした?」

「なかったわ。また明日かしら」

「へー、大変だったね」

 トキちゃん以上にぼろぼろのサーバルちゃんが言いました。

「あなたもあなたで大変そうね」

「それが聞いてよマーゲイ。2回目だから今度はもっと早く楽に登れるだろうなーって思ったら、また木の根っこがぼろーて落ちたの! おかげで変なところに落ちちゃうし散々だったよ」

「サーバルらしいわね」

 トキちゃんは笑います。

「2人ともおつかれぇ~。今から紅茶入れるねぇ~、あれ?」

 アルパカちゃん、サーバルちゃんを見て首をかしげます。

「どうしたの?」

「今気付いたんだけど、これなぁにぃ~?」

 アルパカちゃんはサーバルちゃんの背中に付いていた何かを取ります。


「……花びら?」


「それよ!」


 トキちゃんが突然花びらを取ったアルパカちゃんの手を握ります。

「これが私の言っていた花よ」

「サーバルちゃんお手柄だよ!」

「ええー!? えへへ……」

 サーバルちゃんには何が何だか分かりませんでしたが、かばんちゃんに褒められてちょっと照れます。

「その花……ううん、登ってきたルートは覚えてる?」

「うん」

「行きましょ!」


 マーゲイちゃんはサーバルちゃんの先導で、崖を下ります。

 

「これだね!」

「ええ、でも……」

 思いの外早く、ジャパリカフェにかなり近いところで花は見つかりました。

 しかし、たった一輪しか花はなかったのです。


「どうするの?」

「やめとくわ」

 マーゲイちゃんは拍子抜けするほど簡単に諦めました。

「ここで手折ったらこれから、これからたくさんの花が咲く機会をなくしてしまうかもしれない。それに誰にも知られないのにがんばって咲こうとしているのを見と、ね……」

「そうね、昔の私みたいに1人で咲いて散らせるのは可哀想だわ。せめてあともう少し仲間が出来てから、またきましょう」

 後から飛んで来たトキちゃんも言いました。


 結局マーゲイちゃんは、ジャパリカフェの近くで咲いていた青い花を持って帰りました。


 そして帰ってきた2人の紅茶には、あの花びらを二つに分けた物が浮いてたそうです。


                                  おしまい

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誰にも知られずに咲く花 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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