けものフレンズ いってんご!

ろいらん

第一話「しゅっぱつ 前編」

 青い海が広がり、澄んだ青空の見えるバッチリないいお天気。

 カバンさんを乗せたバスは、きょうしゅうエリアからごこくエリアへ向けて出発したようです。


 ジャパリバスの運転席を船に改造してしまうなんて、フレンズさん達は本当に頼りになる方々ですね。


 と、どうしたんでしょうか?

 バスの速度が段々落ちてきていますが……。


『デデデ、電池。ばすノ電池ガ』

「ここで!?」


 この声はラッキーね。

 あらら、バスの電池が無くなってしまったようです。

 どうするのでしょう。今、カバンさんがいるのは大海原の真ん中です。

 電池が無くなってしまうとジャパリバスは動きませんが……。


 おや?

 今何か、カバンさんの乗る運転席の後ろに影が見えたような。


「わ。やばいよ。こっちも止まらなきゃ。ストップ! ストーップ!」

「いっ」

「あわわわ」

「わあぁ、サーバルちゃん! みんな!」


 なんと、サーバルさん達がジャパリバスの後部車両でできた船に乗ってカバンさんを追いかけて来たようです。

 ここで、サーバルさんと合流ですね。ですが、他にも誰か乗っているような……。


「えへへ、やっぱり、もうちょっとついていこうかなーって」

「もー」

「なになに? どこ行くのー?」

「あなたは、何のフレンズさんですか?」

「おともだちになろうよ!」

「マルカはね、マイルカだよー。いいよー。お友達、なるなるー」

「自分のこと名前で呼んでるのだ! なんかおかしいのだ!」

「アライさーん。アライさんは、人の事言えないんじゃないかなー」


 ああ! あれは!

 海の中から顔を覗かせたのはクジラ目マイルカ科マイルカ属のマイルカさんですね!

 海の上で会えるフレンズさんは珍しいですから、けものマニアである私も興奮が収まりません!


 マイルカさんは船でエリア間を移動している時、群れで水面すれすれを跳んでいるところをよく見ることができます。


 ツヤツヤとした黒い髪と、頭の横にはヒレのようなものが付いていますね。ヒレの下側は白から青のグラデーション。

 横向きに黄色い線が入っているのが格好いいです! 前髪は一房だけ長いですが、頭頂部のは寝癖でしょうか?

 海の中でも崩れない寝癖とは……。フレンズさんにはまだまだ知らない秘密がありますね。


 どうやら、マイルカさんはジャパリバスが珍しくて水面にまで浮上してきたようです。

 今のジャパリパークでは、船を見ることもなかなかできないでしょうからね。


 それと、サーバルさんと一緒にカバンさんを追いかけてきたのはアライさんとフェネックさんでした。

 お二方共、自転車のようなものに跨っています。これを漕いで海の上を進んできたのでしょうか。


「わたしはサーバル! サーバルキャットのサーバルだよ!」

「カバンです。えっと、ヒトです」

「アライさんはアライさんなのだー!」

「アライさんはアライグマねー。私はフェネックだよー」

「うん、分かった! よろしくねー! それで、どこに行くのー?」

「あ、えっと、あの島まで行きたいんです。ごこくえりあ? という場所らしいんですが」

「そうなの? カバンちゃんすごいね! わたし、ぜんぜん知らなかったや!」

「これはさっき、ラッキーさんに教えてもらったんだ」

「ふーん。ごこくえりあはマルカ知らないけど、ついてっていーい?」


 どうやら、マイルカさんはカバンさん達について行きたいようですね。

 さすが、マイルカは活動的と言われていますから、思い付いたら即行動! が身に付いているのでしょう。


 サーバルさん達は、マイルカさんが来てくれることで嬉しそうにしていますが、カバンさんは浮かない顔です。

 それもそのはずですよね。だって……。


「すみません。実は、バスの電池が無くなっちゃって動かないんですよ」

「でんち?」

「でんちなのだ? フェネックは知ってるのだ?」

「いやぁ、私も初めて聞くねー」

「あのね! でんちはね! 寝ちゃってたバスを起こしてくれるものなんだよ!」

「おお! なるほどなのだ! でんちはすごいのだ!」

「あははは。あの、ラッキーさん、電池を取り出してもらってもいいですか? マルカさん、この模様に見覚えはありませんか?」

「んー?」


 カバンさんの腕に付いたブレスレットが緑色に光って運転席の前から電池が飛び出しました。

 あのブレスレットのように見えるのがラッキーなんですよね。原理上はこの部分だけでも問題ないのですが、やっぱりちょっと不便な気もします。


 カバンさんはマイルカさんに電池を見せて、同じようなマークがある場所を教えてもらおうと考えているようですね。

 ジャパリバスの電池に描いてあるマークは充電できるところにも描いてあるので、とても有効な手段でしょう。

 はて、近くにそんな場所はあったでしょうか?


「もよー?」

「うん。サーバルちゃんも行ったでしょ? 山の上にあったアルパカさんのジャパリカフェ。そこで電池を充電してもらったけど、そこにも同じ模様があったから」

「うーん、あったっけ? わたし、わすれちゃったかも」

「ジャパリカフェはアライさんとフェネックも行ったのだ! あそこのお茶は美味しかったのだ!」

「それはわたしも覚えてるよ! おいしかった!」

「そーだねぇ。また行きたいねー」

「マルカさん、どうでしょうか」

「あのね、マルカね、その模様見たよー。それも、いーっぱい」

「本当ですか!?」


 カバンさんが言っているのはジャパリカフェの屋上のことですね。

 山の上で電気を安定供給するためにカフェには太陽光発電があったはずです。


 そして、どうやらマイルカさんは電池を充電できる場所を知っている様子。

 いっぱいのマーク……。もしかして、あのことを言っているのでしょうか。


「ここからごこくえりあよりも近いですか?」

「たぶんー。よく分かんないけどー」

「どうする、カバンちゃん?」

「行ってみようよ、サーバルちゃん。あ、でもそこまでどうやって行こうか」

「カバンさーん。だいじょーぶ、それも考えて作ったからー」

「まずは、この桶を取るのだ!」

「ええ!? 取っちゃうんですか!?」

「ふふふー。ビーバーがね、おけをこっちにおくッスーって言ってたよ! そーしーてー」


 アライさんが運転席の後ろに付いていた桶を取っちゃいました!

 でも、その取った桶をサーバルさんがバスの後部車両の横に丸太で組まれていた、空いたスペースへと置き直します。

 おお、ピッタリですね!


「ええーい! うごけー!」

「おーなのだー」

「はーいよっとー」

「わっ、わわっ」


 キコキコとアライさんとフェネックさんが自転車を漕ぎ出すと、桶のあった場所へ座席部分が近付いていき、ついに衝突!


 そういえば、お二人が漕いでいる自転車。あれは、遊園地にあった乗り物に似ていますね。

 きっと、それを流用したのでしょう。


「おおー、だいなみっくー。マルカびっくりしたー」

「サ、サーバルちゃん!?」

「大丈夫だよ、カバンちゃん! これで、バスが繋がったはずだから!」

「最初に見た時と同じ形になったのだ!」

「これであとは、私たちでカバンさんを押してけばいい訳だねぇー」

「よおーし、いっけー! すっすめー!」

「マルカは案内するねー。こっちだよー」


 再び一つになったジャパリバスは、マイルカさんの先導で右へと旋回し、少しずつ進んで行きます。

 ゆっくりな動きではありますが、着実に目的地へと向かっているのでしょう。


「わーい! いけいけー!」

「うおーなのだー! 頑張るのだぁー!」

「ねえ、サーバルさーん。後で交代はしてよねー」

「あ、ぼくも何か手伝います!」

「ふふー。マルカの群れができたー。嬉しいなー!」


 皆さんが楽しそうで何よりです。


 ~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~~~~~~~



 マイルカはー、名前の通り、真のイルカでして。イルカの中のイルカなんですよ、ええ。

 ただ、飼育するのには海のような広大な敷地が必要で、はっきり言ってまあ、無理なんですね。

 色んな大きさのマイルカがいますが、仲間達でスクールと呼ばれる群れを作ります。数百や……千頭を超えたりもしますねぇ。

 群れで浮上したり、ジャンプしたり、ブリーチングしたり、顎で水面を、こう、バシャバシャと叩いたり。

 活動力ぅ……ですかねぇ……。

 少し神経質なところも見られたりしますが、船に乗っていたらマイルカの楽しそうな色んな動きを観察できますよ。


 うぃきぺでぃあ ろいらんさん (ねっと)

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