愛に抱かれて

るーと24

愛に抱かれて

「ミャア…ミャア…」


普段は微かな虫の鳴き声しか閑静な草原に子猫の鳴き声が響いている。


サーバルキャットの子猫 親離れしたにしてはまだ小さい 育児放棄されてしまったのだろうか…母親を呼んでいる。


「ミャア…ミュウゥゥ…」

このままでは鳥や獣に食べられてしまう。

フレンズ化したこの体ならこの子を抱き上げて安全なところに連れて行ってあげられるけど…


ここの掟は―『自分の力で生きる事』 フレンズ 野生動物 関係なく手を差し伸べる事はその子の為にならない。


「ミャア…ミャ!? ~~みゃあーーっ」


突然 子猫が光に包まれる。

四神の加護か気紛れか闇夜に消え入りそうなサンドスターが彼女に反応し まだ体の小さいサーバルのフレンズが誕生した。


「とりあえず命の危険はなくなったわね。」

安堵してその場を離れようとした その時


「うわあぁああぁああん!お母さん!お母さん!お母さん!」

子猫の時以上に胸が張り裂けそうになる。悲痛な声。

同じフレンズ化した声はよく通り、切なくて私はその場を動けなくなる。


(困ったわね…嗚呼 そんなに哀しそうに泣かないで頂戴…)


「うわあぁああぁああ…あ?」


ぽすっ

備えていた じゃぱりまんを彼女のそばにふわりとほうり投げる。


包み紙があるとはいえ食べ物を投げた事

掟に背いた罪悪感に苛まれるけど…


「くんくん…はぁぐっ おいしーいっはぁぐっはぁぐ」


(この子は悲しい事も楽しい事で忘れられるみたいね…)


明日も偶然を装って

じゃぱりまんを直接渡そうかしらね。ぱーくの事をいろいろ教えてあげましょう。まずは じゃぱりまんは3つ全部食べるものじゃないって。



―それからどれ位経ったろう… ―

今日サーバルはかばんを追って島を出る。


「アンタ “さばくちほー”から来たんだろ?遠くから大変だったねぇ」

「ホント最後まで手間のかかるコだわね。でもどうしてサーバルが何も出来なかったかばんを庇ったのか解ったから大収穫よ」

「え~?私には全然解らんが」

「ふふっ」


首をかしげるジャガーを横目にサーバルを見送り続ける。


(幼い頃の自分と重ねて…手を差し伸べ続けてたのね…)


逞しく木を登り手を振るかばんと初めて木登り成功したサーバルと重なる。


きっと私もサーバルと同じ嬉しいような寂しいような顔をしてたのね…


「かばん…サーバルをよろしくね。」


内緒にしてと言われ伝えられなかった言葉は穏やかな波間に溶けていった。

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