初めてのフルル

けものフレンズ大好き

初めてのフルル

 日々ダンスや歌に余念のないPPPぺぱぷ

 練習を欠かしたことは一日たりともありません。

 それでもやっぱりメンバー内の差は出てしまうもので……。


「はいそこで回転! 体勢は崩さすに!」

『・・・・・・』

「みんな揃ってないわよ! 隣に合わせるんじゃ無くて全員に合わせることを考えて!」

 みずべちほーでは今日もプリンセスちゃんの檄が飛びます。

 ダンスも歌も結成当初よりははるかに上達しましたが、それでもプリンセスちゃんが求める基準には足りません。

 それどころか、上手くなればなるほど求める物が大きくなってしまいます。

 特に目立つのが――。


「あーもう! 何度も言うけどフルルは自由すぎ!」

「んー?」

「フルルはあなたしかいないでしょ!」

 後ろを向いたフルルちゃんにプリンセスちゃんは思わず突っ込みます。

「……はあ、みんな疲れただろうから、今日の練習はこれでおしまい。ああ、コウテイは残って」

「うん……」

 何か怒られるのではないかと、コウテイちゃんは緊張します。

「それじゃあ解散!」


「――話はフルルのことなの」

 練習後、プリンセスちゃんはコウテイちゃんと、マネージャーのマーゲイちゃんに言いました。

 とりあえず自分のことではないとわかり、コウテイちゃんはほっとします。

「リーダーとしてコウテイはフルルのことどう思う?」

「えっと、いい子だと思う」

「そういうことじゃなくて、技術的な話よ」

「うーん、やっぱり少し遅れてるかも」

「マーゲイは?」

「フルルさんの天然キャラは得がたい物がありますが、全体で見ると少し足を引っ張っているのは否めません。いやでもだからといってフルルさんがPPPに不要だとかそういうわけではなくて、あくまで客観的意見でして。そもそも――」

「もういいわ」

 長くなりそうだったのでプリンセスちゃんは強引に話を止めます。


「私も2人と同じ意見よ。でも歌も踊りも才能はあると思うのよね。実は飲み込みの速さはフルルが一番なのよ。ただ、そこから進歩しないというか……」

「何が原因なんだろう?」

「……責任感、ではないでしょうか?」

 マーゲイちゃんは指をぴんと立てます。

「フルルさんはなんだかんだ言っても、メンバーに頼っているところがあります。そこがひょっとしたら問題かも。ここはフルルさんにも責任感を持って貰うようにすれば……」

「そうね、確かにフルルに任すと何をされるか分からないから、今まで何かを頼んだことはなかったわね」

「でも責任感ってどうやって……」

「こういうのはどうでしょうか?」


 そして『フルルに責任感を持たそう!』計画は始まりました。


「フルル、実はあなたに頼みたいことがあるの」

「なにー?」

 いつもの平和そうな声でフルルちゃんは答えました。

「えっとね、このチケットを博士に届けて欲しいの」

「わかったー」

 特に、どころか何も考えず、フルルちゃんは安請け合いします。

「それじゃよろしくね」

 プリンセスちゃんはフルルちゃんが出て行ったのを見送ると、


「作戦開始よ!」


 高らかに宣言します。


「~♪~♪」

 暢気に歩くフルルちゃん。

 その様子を木陰から見守るのは――。


「大丈夫かアイツ……」

 イワビーちゃんは早くも心配です。

 この『フルルに責任感を持たそう!』計画を聞いたとき、イワビーちゃんが一番不安でした。

 趣旨はおつかいにより責任感を持てるようにする、というものでしたが、イワビーちゃんには、とてもできるようには思えませんでした。

「アイツの生き方はロック過ぎるからな……」

 その片鱗が早くも見られます。

 フルルちゃん、先ほどから湖面に映った自分の姿をじっと見ています。

 じっと……。


「何かありました!?」

 一向にフルルちゃんが来ないため、先の方で待機していたジェーンちゃんが駆けつけます。

「いや……むしろ何もなさすぎるというか……」

 イワビーちゃんは、先ほどからずっと湖面を見ているフルルちゃんを指さします。

「もう何時間もああしてる」

「ど、どうしましょう!?」

「これはもう動くまで待つしか……」

「大変です!」

 そんなとき、マーゲイちゃんが息せき切らして2人に駆け寄ってきました。

「プリンセスさんがセルリアンに!」

『ええ!?』


「プリンセスが!?」


 今までぼーっとしてたフルルちゃんまで駆け寄ってきました。

「お前気付いてたのか!?」

「それよりプリンセスは!?」

「こっちです!」


 全員でプリンセスの元へと駆け出します。

 いつもはのんびりしているフルルちゃんが、この時はマーゲイちゃんより早くプリンセスの元に到着しました。

 

 その時プリンセスちゃんは――。


「まさかフルルが最初に来るなんてねー」

「心配したよー」

「でもマーゲイも大げさすぎよ」

「申し訳ありません……」

 確かにプリンセスちゃんはセルリアンに襲われました。

 しかしそれは小さく非力なセルリアンで、フルルちゃんが到着した頃には既にプリンセスちゃんによって倒されていたのです。

「そもそもマーゲイが倒してくれれば良かったのに」

「動転してしまって……」

「それにしてもだ!」

 イワビーちゃんは、ばんばんフルルちゃんの肩を叩きます。

「フルルもやるときはやるんだな!」

「私もPPPの一員だからね~」

「私、いつまでも動かないからてっきり責任感とかどうでもいいと……」


「えー、だってイワビーいるのに動かないから、一緒に行こうとしてるのかなって待ってんだよー」


「いるの知ってたのかよ!」


 フルルちゃんの言葉に全員が笑いました。

「どうやらフルルのマイペースは責任感以前の問題だったみたいね。私達も気長に付き合うしかなさそう。責任重大よ、リーダー――」

 そこまで言ってプリンセスちゃんは、その場にいない一人をようやく思いだしました。


 その頃当のリーダーは――。


「フルルまだかな。待つのは慣れてるけどちょっと寂しいな……」


                                  おしまい

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初めてのフルル けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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