四角い悪魔

けものフレンズ大好き

四角い悪魔

 ここはさばんなちほー。

 いつもならライオンちゃんとヘラジカちゃん達の活気に満ちた声が響き渡っているはずですが……。


「今日もこないですわね」

「こないですぅ」

「気になるでござる」

「何かあったんでしょうか?」

「……(コク)」

 ヘラジカちゃん陣営のみんなが、心配そうにライオンちゃんのお城を見ています。

「いったいに何があったんだライオン!?」

 ヘラジカちゃんの叫びは、へいげんちほーの澄んだ青空に消えていきました……。


 今を遡ること数日前、ライオンちゃん達とヘラジカちゃん達は一緒にサッカーのようなものをしました。

 その時はおかしなことは何もありませんでした。

 帰り際に「何か他にも勝負に使えそうな物探してみるよー」とライオンちゃが言ったぐらいで、いつもと同じ別れでした。


「まさかライオンの身に何かが!?」

 元から白いシロサイちゃんがさらに白くなります。

「こうなったら拙者が様子を見てくるでござるか?」

「そうだな、頼む」

 カメレオンちゃんの提案に、ヘラジカちゃんは素直にうなずきます。

 その時――。

「あれを見ですぅ!」

 ヤマアラシちゃんがお城からほうほうの体でこちらに来るツキノワグマちゃんを見つけます。

 

「どうした、なにがあった!?」

「うう、まさかあれがあんなに怖ろしいものだったなんて……」

「あれ!? いったい何のことだ!?」

「こうなったらもうお前達に頼むしかない。お願いだ、大将を、みんなを……」

 その言葉を最後に、ツキノワグマちゃんはガックリと意識を失います。

「ツキノワグマー!」

 ヘラジカちゃんは、とてもいい顔でいびきをかき始めたツキノワグマちゃんの身体を揺すります。

 しかしよっぽど疲れていたのか、ツキノワグマちゃんはぐっすり眠ったまま、全く起きませんでした。


「ヘラジカ様、どうします!?」

 アルマジロちゃんの言葉に、ヘラジカちゃんはゆっくり頷きます。

「あのライオンがピンチのようだ。ただのセルリアンなどではあるまい。こうなったら全員で行くしかないな。何があるか分からないから気をつけろ!」


 こうして全員でライオンちゃんのお城に行くことになりました――。


「これはひどいですぅ」

「拙者が来たときはもっと綺麗だったでござる」

 城の中は荒れ放題でした。

 ゴミが散乱し、ジャパリパンの食べ残しなどがそのままにされています。

「今すぐ掃除したくなりますわ!」

「……(コクコク)」

「でもライオンはまだしも、オーロックスとオリックスがちゃんと毎日掃除してるはずなんだけど……」

「とにかく気を引き締めていかねばならんな」


 そして特に何の妨害もなく、全員無事にライオンちゃんがいる部屋に到着します。

「ライオン! 大丈夫か!?」

 ヘラジカちゃんは特に考えもなく勢いよく障子を開けました。


「ほう……きたかライオン。ということはツキノワグマは役に立たなかったようだな」

 ライオンちゃんはすごみの籠もった声で言いました。

 しかしその下半身はすでに悪魔に飲み込まれています。

 それはオーロックスちゃんもオリックスちゃんも同じでした。

「どうしたというのだライオン! それは一体何なのだ!?」

「ふふ……、見て分からないか」


「分からん!」


 自信満々に答えます。


「実は私もよく分からない! でも気持ちいい!」


 ライオンちゃんも同じく自信たっぷりに答えました。

「いや~、勝負に使う道具を探してたとき、お城で偶然見つけたんだよね~。それでとりあえず部屋に持ってきたんだけど、そしたらなんか暖かくて眠くなって、気付いたら朝? みたいな」

「じゃあ勝負は!?」

「ヘラジカの勝ちでい~よ~」

 ネコ科のライオンちゃんは文字通り丸くなります。


 ――そう、ライオンちゃんが見つけたのはこたつでした。


「でもツキノワグマがいなくなったら、変わりにここにいる誰かがお使いに行かないといけませんね」

「当然私は大将だから君達のどっちかね~」

「あ、ずるい!」

 オーロックスちゃんとオリックスちゃんは抗議します。

 ツキノワグマちゃんが倒れたのは、お使いで酷使され続けてからでした。


 3人のあまりにダラダラした態度に、ヘラジカちゃんの堪忍袋の緒が切れます。


「お前はそれでも大将かぁ!」


 ヘラジカちゃんは思いっきりコタツをひっくり返します。

「寒い!」

「ひどいぞヘラジカ!」

「あ、私のジャパリまんなくしたと思ったら中にあったんだ……」


「たるんでる!」


 3人(?)の抗議をヘラジカちゃんは一蹴します。

「そんなことで、またあの時のセルリアンのような奴が現れたらどうするつもりだ! いつまでもかばん達に頼ってるわけにはいかないんだぞ!」

『・・・・・・・』

 3人は黙り込みます。

 みんなでかばんちゃんを送るための船を作ったのですから、別れが近いことは全員が知っていました。


「そうだね……」

 ライオンちゃんはゆっくり立ち上がります。

「いつまでもあの子に頼ってるようじゃ駄目だよねー。ごめんヘラジカ、これからはちゃんとするようにするよ」

「じゃあまずは掃除ですわ!」

『はーい』


 こうしてライオンちゃん達は、なんとか悪魔から逃げ出すことができました。


 しかし、悪魔は常にフレンズ達を狙っています……。


「……しかしこれってそんなに気持ちいい物なのかな?」

「ちょっと気になるでござる」

「せっかくなんで入ってみるですぅ」


                                 おしまい?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四角い悪魔 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ