終礼ガンマン

森戸喜七

プロローグ・終礼

 終礼って、変な気分だった。忌まわしい授業から解放されて嬉しいはずなのに、夕陽で紅く染まる空を背景に佇む校舎は禍々しく、流れる特別なチャイムは心を騒がせた。朝早く学校に来させるくせして、今度は帰れと急かされるようで。

 私はそわそわと終礼を待ち、また楽しみにしていた。チャイムが終わった直後決まってある声を耳にすることができた。それを心待ちにし、笑顔を迎える。そして二人で校門から逃避行。一度だって触れ合ったことはなかったが、心の中ではいつだって手を引いていた。


「待った?塩山くん!」


 その声を聞けるのを、あの日だって待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る