前田代吉一代記
前田会
はじめに
これから語られる私の祖父・代吉の半生、明治39年の誕生から昭和20年の東京大空襲までの話は、伯父通晴が父・代吉本人から聞いたものです。
通晴(1936・昭和11年生まれ)の少年時代は、囲炉裏の縁の木枠を食卓代わりに、そこへ茶碗や汁椀を置き、食事を取りながら、家族全員で父の語りを聞くのが常でした。
また小学校高学年になると、7人きょうだいの長男であった通晴は、野良仕事の働き手として父について田畑に出ましたが、単調で辛い農作業を息子が少しでも退屈しないでやれるようにと、代吉は農作業の合間に熱心に、自分の経験談を語ったそうです。
情景が目に浮かぶようなそれらの話は、何べんも、何百ぺんも繰り返し語られ、通晴少年の中にしっかり刻み込まれました。
代吉が1985年(昭和59)に78歳で永眠した後、親族一同で追悼集を作ることになりました。その時に、囲炉裏や田畑で語られた物語は、通晴による綿密な取材のもと時系列順に整えられ、背後で激動していた明治から昭和の終戦までの現代史も再確認され、数十年の時を経て、半生記として書き下ろされました。戦後の貧困期については、他の6人の子どもたちが引き継ぎ語り、私たち孫は「おじいちゃん」への想いを作文にし、追悼集は完成しました。
あれからさらに30数年が過ぎ、代吉のひ孫にあたる子どもたちは現在17人。昭和から遠い今を生きる彼らにも読んでほしくて、ここに再編集します。
孫・いくこ
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