パワーバランス
草々緋美
月の下での発見
「すごーい。そんなにジャンプできるんだ。」
「そりゃさいきょうを目指してるからな。」
今日はパトロールの幅を広げて、合戦に力を入れているといううわさを聞いたちほーまでやってきた。
セルリアンが出るといううわさはあんまり聞いたことがなかったので、わりと安全なちほーなのだろう、いろんなフレンズないるらしい。
ちょうど、外に出てきていたニホンツキノワグマに出会った。
自分が持っている熊手を同じく持っていて力も強そうだった。
「ヒグマはジャンプ力も押す力も走る速さもすごいねー。」
「一緒に鍛えるかい?」
「さすがに敵わないよー。」
「戦うわけじゃないけどなー。セルリアンはでないのか、ここらへん。」
「でないねー。合戦の方が多いかな。たまには城の外は気持ちいいねー。」
「そうか?」
「やっぱりお月様を見れるっていうのは最高さ。」
「そういうもんかね。」
普段は周りを警戒して空を見上げることをしていなかった。
でもニホンツキノワグマは、夜空を見上げるのが好きらしい。
「普段何してるんだ?」
「城の中を守ってるよー。暗いし洞穴みたいなところだから落ち着くこともあるけどー。」
「あるけど?なんだ?何か問題があるのか?」
「だーれも来ないからさー。退屈なんだよねー。」
「でも合戦やってるんだろ?誰か来るんじゃないのか?」
「ぜーんぜーん。こうやっていつも待ってるんだけどね。」
左右に素早く移動しつつ熊手を上げたり下ろしたりと器用に動き回ってる。
「ちょっと熊手、貸してくれないか?」
「ん?いいよー。」
貸してもらう代わりに自分の熊手を渡す。
「ヒグマのは軽いんだねー。これならちょっと早く走れそう。」
そう言うと、近くの木があるところまで走っていった。
「これっ、重いな。」
普段の自分のよりそこそこ重い。
熊手自体が大きいわけでもない、むしろ小さいかもしれない。
なのにこの重い感じ。
鍛えているつもりだったけど、思い通りに振り回すには時間かかりそうなくらいだ。
遠くを見ると、ニホンツキノワグマは木をジャンプでうまく登っていた。
そして、勢い良く降りてこっちに戻ってきた。
「ヒグマのこれ、使いやすいね。力弱いからこれでセルリアンを倒すのはちょっと難しそうだけど、ヒグマは鍛えてるからできるんだね。」
そう、その通り。
最初はうまくセルリアンを倒せなかった。
力負けしてしまっていた。
だから振る力を強くすることで勝てるようになった。
力を強くすることが近道だと思ってた。
今の今まで。
ニホンツキノワグマはパワーこそヒグマよりもない。
だけど、小さな動きを素早くこなすことが得意みたいだ。
だから熊手も小さく素早く動かすことで、ヒグマと同じぐらいのチカラを出すことができるに違いない。
借りていた熊手を元に戻す。
やはり自分のはしっくりくる。
向こうも同じようで、軽々と振り回して感触を確かめているようだった。
「やっぱりこっちほうが使い易いや。ヒグマはパワーがあるんだねー。」
「でも、別のパワーがないと、そっちの熊手はオレでも使いこなせそうにないぜ?」
「そうなの?」
「ああ。なんか使い道ないのか。」
「合戦じゃ全然出番ないからさー。たまにライオンと戦ってみたりはするけど。」
「もったいねー。せっかくだから今日は一緒に特訓しようぜ。合戦の話も聞きたいしさ。」
「楽しそう。教えて教えて。」
ハンターとして回ってるから他のフレンズと戦うことなんてないし、比べることも基準はセルリアンを倒せるかどうかだけだ。
似たフレンズと違うところで新しい戦い方を学べるっていうのは発見だった。
きっと一緒に戦うときがあれば力強い味方になってくれるに違いない。
今日は楽しい夜になりそうだ。
月はまんまるでよく平原を照らしてくれていた。
パワーバランス 草々緋美 @Kusa2_hibi
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