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廊下を歩いていると、何人も悠太に声をかけていく。出逢ってからずっと思っていたことではあったが、彼の顔の広さをしみじみと実感した。明るく人懐っこい彼の性格は、きっと色々な人に好かれるからだろう。
自分も見習いたいものだ、と小さくため息をつく。
目敏くそれを見咎めた悠太が首を傾げるが、首を横に振り何でもないと答えた。
二人並んで階段を降り食堂につくと、すでに満席に近い状態だった。
「あっちゃー……人多いっすねぇ」
困ったように苦笑する悠太に、申し訳なく頭を下げる。
「僕が寝過ごしたばっかりに……」
「司っちのせいじゃないっすよ。俺も、結構寝過ごすんっす」
「今日はたまたま早かっただけっすよ」と、彼は笑った。気配り上手な悠太のことだ。これもまた、司が気に病まないようにという気配りなのだろう。それがまた申し訳なかった。
「さて、どこに座ろうかなっと……」
言いながらぐるりと食堂を見渡していると、ある女生徒の一団が悠太に手を振った。
「やまちゃ~ん、おっはよ~」
彼女の声に、悠太はニッコリと笑う。
「霜月じゃないっすか~。おはよーっす」
挨拶を返すと、霜月と呼ばれた少女は悠太を手招いた。
「席無いんだったら、隣空いてるよ~」
言われて見てみれば、確かに彼女の隣とその向かいの二つが空いている。渡りに船と、悠太の顔が明るくなった。
「相席いいんっすか?」
すまなそうに近づくと、霜月は明るく手を振る。
「いいよいいよ、やまちゃんだし」
ありがたい申し出に、司も小さく礼をした。そこで初めて司の存在に気付いたらしき霜月たちは、お互い顔を見合わせ小声で話を始める。声があまりに小さいので、司たちには内容が良く分からない。
隠しもしない好奇の目に、髪を指で梳かす。
どこか変なところがあるだろうか。悠太に指摘された寝ぐせは直してきたのだが、もしかしたら他にもあったのだろうか。
座りが悪い司をもう一つの空いている席に促し、悠太が踵を返す。
「じゃあ、ちょっと朝ごはん持って来るんで、待ってるっす」
「悠太くん、僕も」
「司っちは座ってていいっすよ、俺持って来るんで」
軽やかに笑い去っていく背を所在なさげに見つめた後、諦めのため息とともに司は椅子に座った。
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