アライさんと伝説のお宝
けものフレンズ大好き
第1話
ここはとしょかん――。
本来かしこいフレンズばかりが集まるところですが、今日訪れたお客さんはいつもと違うようで……。
「ぐえー!」
本棚を漁るアライさんを見つけた博士は、とりあえずその場から引きずり倒します。
「アライさん大丈夫ー?」
一緒に捜し物をしていたフェネックちゃんは、それなりに心配しました。
「何をするのだ!?」
「それはこちらのセリフです。字なんて全く読めないお前達が、ここになんの用なのです」
「アライさん達はお宝を探しに来たのだ!」
「お宝?」
博士は思いきり胡散臭そうな顔をします。
「博士、聞く必要は皆無です。追い出しましょう」
「そうですね助手」
遅れてやってきた助手の提案を全面的に受け入れ、博士はアライさんを放り出そうとします。
「離すのだー! 離すのだー!」
「黙るのです」
「としょかんを荒らした罰です」
「待ってください!」
博士がアライさんを窓から投げ捨てる寸前、急いでやってきたかばんちゃんがそれを止めます。
博士もかばんちゃんの頼みは無視できず、適当にアライさんを床に落としました。
「ぐえー!」
「かばん、これはどういうことなのです?」
「実はこの帽子、元々アライさんのもので本当は返すはずだったんですけど、アライさんがぼくがそのまま持ってていいって。それで、結局アライさんの探していたお宝もそういう物じゃなかったから、ぼくが帽子のお礼にお宝になるような物を探そうって話になったんです」
「本当はかばんちゃんの物だけどね!」
サーバルちゃんもかばんちゃんと一緒に来ていました。
「アライさんがかばんさんにあげたのだ!」
「元からかばんちゃんの!」
「まあまあアライさんも落ち着いて。かばんさんも困っちゃうよ」
「……かばんさんが困るならもう言わないのだ。とにかくかばんさんはとしょかんにヒントがあるかもしれないって言ったから、先にアライさん達が調べにきたのだ!」
『なるほど』
博士も助手もようやく合点がいきました。
「結局お前がしていることは迷惑以外の何物でもないのです」
「悔いあたらめるのです」
「だからアライさんは――」
そう言いかけたアライさんの頭頂部に、この騒ぎでぐらついた本棚から本が落ちてきました。
「ぐえー!」
「あ、アライさん!?」
「ああ、いつものことだから大丈夫だよかばんさん。それよりこれなんだろう?」
「……何かの地図だね。この場所は……ぼくは未だ行ったことがないとこかな。ただこの場所に何かとっても良い物があるって書いてあるよ」
「見せるのです」
博士がかばんちゃんの見ていた紙をのぞき込みます。
「この場所はおそらくゆうえんちですね。大きな方の地図は園内の地図でしょう」
「やっぱりお宝のヒントがあったのだ! さすがかばんさんなのだ! それじゃあゆうえんちに行くのだ」
「お-!」
「待つのです」
すぐにゆうえんちにこうとしたアライさんとサーバルちゃんを、博士が止めます。
そして助手と共に、かばんちゃんの見えない位置まで移動させました。
「(2人ともよく考えるのです。ゆうえんちにはかばんのためのバスがあるのです)」
「(おめでとう会までみんなで隠すと決めたはずです)」
「そうだったのだ! バス――」
思わず大後を出しそうになったアライさんの口を、後から来たフェネックちゃんがすぐに塞ぎます。
長年の経験からこうなることは予想済みでした。
「あの……?」
「なんでもないのです。ゆうえんちにはアライグマとサーバルとフェネックが行くのです」
「お前はここで待っているといいのです。我々は料理が食べたいので」
「はあ……」
その後本当にかばんちゃんに料理を作らせ、その間に3人はゆうえんちに行くことになりました。
幸いにもフェネックちゃんはしっかり地図を読むことができ、ゆうえんちにはそれほど時間をかけずに着きます。
「えっとー、地図によるとこのあたりらしいんだけど……」
「あれじゃない!?」
サーバルちゃんが指さした先には、小さな荷台のような物がありました。
「下にバスみたいな足がついてるね」
「でもアライさん達が乗れるほど大きくもないのだ」
「うーんどうしよう。良い物だったとしても、私達じゃ使い方分からないね。ここは――」
「としょかんまで持っていくのだ!」
「押してけばいいよ!」
フェネックちゃんの話を最後まで聞かず、2人は結論を出します。
「……何日かかるだろうねえ」
それでもフェネックちゃんは文句は言わず、素直に手伝うのでした。
それから数日後――。
「ただいま!」
「ただいまなのだ!」
「おかえり、随分遅かったね」
「これを持ってきたからねー」
フェネックちゃんは今まで押してきたあの荷台のような物を見せます。
「これはなんなのですか?」
「いやー私達にもさっぱり。これに何か書いてあるみたいだけど、字が読めないから」
気になってやってきた博士に、フェネックちゃんは答えました。
「とりあえずぼくが読んでみますね。ふむふむ、なるほど……」
かばんちゃんは一通り読み終えると――、
「ラッキーさん、二つ聞きたいことがあるんですけど、まずこれを動かすための電池はありますか?」
「ソレナラスグニジュウデンシテツカエソウダヨ」
「よかった。あと必要な物があるんですけど――」
「ソレハジャパリマンニモツカワレテルカラアルヨ」
ついにお宝が何か分かるときが来ました。
そして――。
「ふわふわなのだ!」
「あまーい! おいしー!」
「ほう、これはいいものですね」
「ちょっとべとべとしますが、それもまた良いのです」
「いやーかばんさんはすごいね」
「へへ、みんながこれを持ってきてくれたおかげです」
かばんちゃんは新しくできたわたがしをフェネックちゃんに渡します。
――そう、ゆうえんちで見つけたのはわたあめ機でした。
ボスにした二つ目の質問は、ザラメがあるかどうかだったのです。
「しかしどういう理屈でこれができるのが謎です」
「まあわれわれは美味しければそれで良いのです。料理を作るのはいつもかばんの仕事ですから」
「そうですね博士」
「はは……。でもこの機械はアライさんでも使えると思いますから機械自体は――」
「いいのだ。アライさんはこのふわふわが食べられただけで満足なのだ。かばんさんが持っていて。他のフレンズに食べさせてあげるといいのだ」
「アライさん……」
「アライさんもたまにはいいこというね!」
「たまにはは余計なのだ!」
あはははは……。
こうしてわたがしは大盛況の内におわりました。
しかしその夜。
「でもアライさんは実はもうちょっと欲しいのだ。残っているふわふわはアライさんが持っていって明日食べるのだ!」
そして次の日。
「ないのだー! ふわふわがなくなったのだー!」
「アライさーん……」
最後はいつもどおり締まらないアライさんでした。
おしまい
アライさんと伝説のお宝 けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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