結城殿の一生

れな

プロローグ

第1話 清丸、生き返る

 それは戦の時であった。

 結城ゆうきは敵国に攻め込まれ、秀和ひでかず殿は自らの首を差し出そうとしていた。本陣を後にし、目の前で繰り広げられる戦いを見つめると、殿は刀を抜いた。これから敵の本陣目掛けて乗り込んでいく、そう決心したのであった。すると、殿の目の前に、奇妙な格好をした男が空から降ってきた。

 尻餅をつき痛がっているが、秀和殿を前に、刀を抜く気もない男。いや、刀を持っていないようだった。この男は、敵なのか、味方なのか。そのどちらにも属さない身なりの男は、殿の目にどう焼きついたのであろうか。


 「清丸きよまる、か?」

殿は、そう男に尋ねた。しかし、男は刀を持つ姿を見て驚いたのか、返事もせず後ずさりをした。

「清丸、大きくなったのう」

先ほどの緊迫した表情の殿はどこへいったのやら、まるで赤ん坊をあやすような優しい眼差しでそう言った。

「ここどこ?何やってんの?」

きょろきょろ辺りを見渡す男。その男には、今この場で繰り広げられている状況が理解できないようであった。

 殿は、戦だということを思い出し、男にこう言った。

「戦じゃ。もはや、こちらの負けであるがな」

 命を絶とうと決心した殿の気持ちが伝わったのか、その男は、敵陣へと乗り込む殿を静かに見届けていた。すると、何を思ったのか、男は殿に向かって叫んだ。

「死ぬんじゃねーよ」

 その声は、殿の足を止めた。そして男は、近くにあった槍を持ち、殿に迫る敵一行を見事に討ったのである。一瞬の出来事であった。

 殿は、その姿に心を打たれたようで、倒れこむ男に手を差し伸べた。

「清丸、助けてくれるのか」

「清丸?俺は清丸じゃない」

「ほう。では名をなんと申すのじゃ?」

真下広和ましたひろかず、だけど」

「広和」

 それを機に、殿は人が変わったように強くなった。敵に囲まれる家臣のもとに割って入り、刀を振りかざす。みるみるうちに敵はいなくなり、見事、戦の勝利を収めたことは、他国に結城家の権力を訴えた、有名な話である。

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