ほうき星


たった一つきりの望遠鏡を 君と二人覗き込んだ

なかなかうまく映せなかった あの棚引くほうき星


あの伸びた尾が切り裂いたのは


いつしか君は街を離れ 同じ景色を観なくなった

あるいは僕は君を忘れ 押し入れの奥に望遠鏡

あの日観た深く暗い宙の向こうに

届かぬ光はあったのだろうか


たった一つきりの水筒を 僕ら二人回し飲んだ

もう一度観るのは叶わない あの巡るほうき星


あの光る星が照らしていたのは


あの日の僕は独りよがり レンズの向こうしか見てなかった

あの日の君は一人ぼっち 闇に紛れ消える白い吐息

僕が見向きもしなかった半分の月が

二人の距離を晒していた


ついには僕も街を離れ 夜を染め行く人工光

この日も僕は一人ぼっち 人と人の間で独りぼっち

ふと見上げた曇り空が 地上の光を返している


いつでも人は一人ぼっち でも


雲の向こうの暗い海 星と星すら一人ぼっち

それでも翔るほうき星 彼らの間を繋ぐように


きっと僕は一人じゃない

同じ景色は観なくとも 僕ら同じ空の下

映らなかったほうき星 僕ら同じ過去の上

今も煌めくほうき星 きっと僕らを繋いでいる

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