傘、ポツポツと。


 彼との距離は

 傘の半径二つ分

 小雨ポツポツ

 放課後の帰り道


 うまくものを言えない私

 代わりに鳴くのは傘

 世界に満ちるは雨音

 こっそり呼吸を助けてくれる


 雨に吸われるはずの私のため息は

「どうしたの?」と彼に拾われた


 けれど私はごまかして

「深呼吸だよ」なんて口にする


 空が泣いている

 うめき声が傘を叩く

 雨は私と世界を遠くする

 けれど彼は遠い世界の一番近くにいてくれた


 それはすこしだけ嬉しくて

 ほんのちょっぴり悲しくて



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