第47話

【俺の妹になってください】


四十七話


~ あらすじ ~


第一部を無事に終えて柏木と文化祭を回る予定だったのだが、山口、橘、そして、三ヶ森さんまでもがこちらへと来た。


*****


三ヶ森さん普通に容姿が可愛いし、それなりに男子にも人気があり、あの天然ボケの入った少し抜けていて頼りないようなあの性格だ。女子の友達も教室で話しかけられている様子を見るとかなり多いはずだ。


なのになぜ、俺らに構うんだろうか?


まあ、兄的にはかなりポイント高いけど………それでいいのだろうか?


「んー?どーしました?風見さん」


可愛い妹にはクレープをあげよ。とは、このことか………


「三ヶ森さん。頬にクリームついてるよ?」


「ふぇ?」


三ヶ森の腑抜けた声、風見に痛恨の一撃、風見は固まった。な、なんということだ………壊滅的に可愛い………心臓に悪すぎる……


「どこにですか?」


「ここ。」


と、自分の右の頬を指さして教えてあげる。


「あ、ホントだ」


………なんだよ。この萌える生き物……


「むー」


ジト目で柏木はこちらを見つめてくる。


「な、なんだよ?」


「私は女の子っぽくないんでしょ。いいよ。もう………」


小さな声でなにかを俯きながら呟いて、不貞腐れながらさっきコンビニのぱくりのようなことをしていた所で買った唐揚げ串をかじった。なんて言ったかはわからないが、不機嫌なのは確かだ。


「舞……その…」


「なによ?」


「ひぃっ!」


ギロりとこちらを睨みつけてきた。怖ぇ……蛇みたいな鋭い目だ。目をそらしたら首締められてそのまま死に絶えそう。


「え、えっと、唐揚げおいしいか?」


「……え?う、うん……」


「んじゃ、一つ頂戴。さっきの肉まんだけじゃ物足りないんだよね」


「し、仕方ないわねっ!わ、私のでよかったら………」


言い切る前に俺は体を乗り出して一つ唐揚げを食べる。


「お、おぉ………意外とうまいな」


そう言って柏木の方を見ると、顔を真っ赤にしていた。


本当に、乙女だよなこいつ……


******


「ここが風見くんの姉さんがやってるメイド喫茶か」


「………だな」


まだ店の前だというのに心臓が高鳴るのがわかる。


男の夢、ロマンが詰まっている場所………


……ゴクリ。


山口と息が合う。


やっぱり男ってのはこうだよな。


「……二人共目がやらしい。正直キモイわ」


三人の目が痛い。


仕方ないだろう。男なんだもの。


「あ、春樹ー!来てくれたの?……と、みんなも来たのねっ!」


純白のフリフリとしたメイド服を来た姉さんが教室から現れた。


昔ならみんなを空気のように扱っていたのだが、姉さんも少しは自主規制してくれたのかな?


教室に姉さんに連れられるまま入る。


「「「おかえりなさいませっ!ご主人様、お嬢様っ!」」」


お、おお……すげえ。


これが出迎えってやつだ。


なんか、わからないけど、緊張するな……


「こっちに座ってねっ!」


姉さんがいつも通りの口調で席へと案内してくれた。


そして、俺らは用意された白色の丸テーブルを囲うようにして座る。


「これメニューねっ!決まったら呼んで。ち・な・み・にっ!オススメはこれだよっ!」


と、メニューのオムライスを指差して、ニッコリと笑って姉さんは去っていった。


メニューを早速開くと多種多様な種類があった。本当に文化祭なのだろうか?よくこんなの許可したな……


「………なんか、変な感じだね」


小声で横にいた柏木に話しかけられた。


「確かにな。姉さんに接客されるだなんてな………」


「というか、雰囲気変わったよね。なんかあった?」


「特に何も無かったかな?うん。無くなったな」


前までは色々ありすぎた。姉さんが異常だった。それが星章に戻ったんだ。なら、何もなくなった。


「風見くんのお姉さん可愛かったなぁ。私も着てみたいな。あれ。」


「そ、そうかしら?」


三ヶ森さんの呟くような声に橘が顔を引きつらして虫でも見るような目でそう言った。


「えー?可愛くないですか?」


確かに………あれを三ヶ森さんが着たら……想像しただけで……


「いっててててっ!!」


急に太ももに痛みが走った。


「つ、抓るなよっ!!」


「変な事考えるからでしょ!?」


「そ、そんな馬鹿な……なぜわかったんだ?」


「そんなキモい顔してればね。誰だってわかるわよ」


「そ、そんな顔してたか?」


皆が皆、頷いた。というか、メイドの人まで頷くってどんだけなの?


「そんなキモい事考えてないで早く注文決めれば?」


「あ、う……」


「すいませーん。」


返事をする前に全くメイド喫茶らしくない声が響いた。


柏木が店員を呼んだのだ。


前もあったけどなんなの?俺への嫌がらせやばくね?


そして、すぐに姉さんが飛んできた。


「こっこちゃんから揚げ一つとふわふわ焼きプリンってやつ一つで……他の人たちは?」


「んじゃ、私はこの気まぐれホットケーキセットで。」


なんて、どんどん注文が決まっていく。


そして、姉さんが俺をじーっと見てきた。


あ………ジ・エンドらしい。


俺はメニューを閉じ呼吸を整えると、全力の笑顔で「姉さんのおすすめで」と、言った。


「はいっ!承知しましたご主人様っ!お嬢様っ!」


そういい残してオープン厨房の方へと去っていった。


「はぁ………」


ため息が漏れた。


「春樹本当にそんなのでよかったの?」


「お前のせいだろう……」


ニヤニヤしやがって……姉さんのおすすめなんて絶対なんかヤバいやつだ……


いや、でも、普通のやつかもしれない。その可能性を信じろ。きっと大丈夫。姉さんだって変わったんだしな。


そして、時は流れ姉さん襲来。


「お待たせいたしました。お嬢様っ!」


なんて言って一人一人の前に注文した料理を置いていく。


そして、とうとう俺のが来た。


見た目は普通のオムライスだ。………はぁ。よかった。普通で。


「あ、ご主人様!まだ料理は終わりじゃないニャンっ!」


俺はノーモーションで姉さんの腹にブローをかましていた。


「黙れ」


皆の目線が痛いがそんなのはもう、関係なかった。


「だ、大丈夫?」


ほかのメイドさんが倒れ込んだ姉さんに駆け寄ってくる。そして、こちらに怒りに満ちた目を向けてきた。


女ってやば怖ですわ。


仕方なく、本当に不本意だが姉さんに頭を下げようとした時、姉さんが横たわりながら呟いた。


「言葉より先に手を上げるなんて……」


「そうよっ!最低っ!」


ほかのメイドが先読みしてそう言った。


「………最高ニャンっ!」


姉さん…………


残念な発言が飛び出し、場が一気に凍った。


頭下げなくてよかった。こんなのだから殴っちゃうんだよな。


「はっ!じゃなくてご主人様っ!まだ料理は終わってないにゃんっ!」


姉さんは何事も無かったかのように立ち上がると、ニコニコしながらこちらへと寄ってきた。


右手が勝手に姉さんの腹めがけて飛び出したところを左手で抑えた。


「…………よ、よし。わかった。やってみろ。」


「はいっ!ご主人様っ!」


うぜえ……畜生。右手がぁぁぁ!!右手疼くっ!!


そして、姉さんはケチャップをどこからともなく取り出してオムライスへとなにかを描き始めた。


「萌え萌えきゅんだニャンっ!」


右左、と、ハートマークを作り。トドメと言わんばかりに中央でのハートマークを作って終わりかと思ったのだが、あろうことかあいつは猫のポーズを取った。


そして、俺のオムライスまでにもそれは及んでいた。


誰が俺のにそんなえげつないマークを書けと言ったんだ。というか、なぜ最後に猫を持ってきた?まあ、猫は好きだけど獣耳っ娘も好きだけどお前じゃねえんだよっ!!


右手がかなり限界だったがそいつに無理くりスプーンを持たせて忌まわしいハートマークをスプーンで潰してからオムライスを口に運んだ。


オムライスに罪はないからな。


口に含むと、ケチャップライスのトマトの酸味を抑え込むようにマイルドな卵が口いっぱいに広がった。


う、うめぇ………でも、どこか懐かしいようなそんな味だ。


これは………間違いない。姉さんのお手製だ。


姉さんがニヤニヤしながらこっちを見てきていた。


全く、仕事中だろうに。


だが、こんなんで気にするほど俺もやわではない。


無視だ無視。


かなり視線がきになったが無事にオムライスを食べ終わり、みんなは軽食程度のものしか頼んでいなかったからか俺より先に食べ終わっていた。


「いくか?」


「春樹が大丈夫ならいいよ」


「はーいっ!」


そして、会計を済ませて皆で店を出た。


幸いなことに会計は姉さんではなくほかのメイドさんだったのでかなり楽だった。


「はぁ……疲れた」


「そうね………」


「メイド喫茶ってこんなに疲れるんですね……」


皆が皆、意気消沈していた。


この後に一応二回目の公演があるんですけど大丈夫なんですかね?

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