第32話
【俺の妹になってください】
三十二話
~ あらすじ ~
姉に襲われながら思いを打ち明けられた。
******
姉が去っていったあと、俺はまだ痺れのお陰で動けず、ベットに横になっていた。
「全力で。か」
三ヶ森さんのことが好きなのか?三ヶ森さんの恋を応援してるわけだし………いや、それは妹としてだし、少し違う気がする。
まあ、いつかわかるか。
三ヶ森さんで思い出したが、プールだっ!!
痛みが引いてきたので、スマートフォンに入っているトークアプリを起動する。
そして、友達四人(三ヶ森、山口、柏木、姉)一人友達じゃないので、実質三人という現実に押しつぶされそうになりながらも、三ヶ森、山口、柏木の入っている四班というグループを開いて連絡をしてみる。
「夏休みだしプールにいかないか?」
よし、とりあえずこれでいいか。
日付も変わり、深夜帯。いつもなら寝ているかもしれないが、睡眠薬投与のおかげで眠れそうになく、部屋にいても暇なのでリビングに降りるとおにぎりと味噌汁が置いてあった。
そこにはメモも一緒にあった。
「(お腹すいてるでしょ?これ食べて。大丈夫睡眠薬なんて入れてないわっ!)」
まあ、そうでしょうね。
もう飯に毒を盛るような真似はしないでいただきたい。
お腹すいてるから、食べますけどね。
「………美味い」
普通に美味かったので、今回の件はこの味噌汁で勘弁してやろう。
ブーゥ!と、汚ねぇ音が携帯から鳴った。誰がこのアプリの音変えたんだよ。
「僕はいいですよ。日程はいつ頃でしょうか?」
なんて、イケメンらしい文字列が送られてきた。
それを俺は確認だけして、また箸を持ち直して食べ始める。
あー。くそ。イケメンめ。全国からイケメンと呼ばれる人間が全員滅べば、いい感じに世界に平穏が訪れる気がするんだがな。
ブーゥ!と、また鳴った。
変えよう。どうやって変えるんだろ?
「私も行きますっ!」
三ヶ森さんが書いてると思うとかわいいな。
素晴らしい文字列。もっと増やそう!
そして、とりあえず設定から音をまともなのに変更して、そのトーク画面に戻る。
「じゃ、日程はどうします?」
そう送ると、すぐに返信がイケメン野郎から飛んできた。
「まだ柏木さんが参加できるかわからないので、とりあえず明日で。おやすみなさい」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさいっ!」
そんなこんなで夜のトークは終わった。
全然眠くならないので俺はそれからおやすみなんてせずに溜め録りしていたアニメやらを一気に見ていると、カーテンから明かりが差し込んできた。
「………もう朝か」
時間というのは非常に早いもんだ。
もう夏休みも半分くらいだし、そろそろ宿題を片付けないとなぁ。なんて思ってたらもう学校。宿題手付かず。なんてことそんなになかった。大体口うるさい柏木が宿題をやらせに来るんだよな。お前は俺の家庭教師かっ!って毎年突っ込んでいる……いや、そんなことはどうでもいい。
こんな時間になったってのに、ちょっと眠い。少しだけ横になろうかな。ソファーに横になると意識が夢の世界へすぐ飛ばされた。
*****
「………暑い」
日本のサウナのような夏の暑さで俺は目を覚ました。
なんでこんなに暑いんだよ。はぁ。
そう思いつつ時計を確認すると一時を回っていた。でも、学校が休みで予定もない。そんなほぼニートのような俺が焦るようなことは無い。
そんなとき携帯がチーンと鳴った。
「ごめんなさい。私はいけないわ」
柏木からそんな文字列が送られてきていた。明らかにこいつ俺を避けてるな。というか俺が何したってんだよ………
なら、いい。俺も会わねえ。そして、「そうか。じゃ、どうす」
と、ここまで打ち込んだところで山口からの文字列が来た。
「忙しいのですか?だったら柏木さんに合わせますよ」
……はぁ。これだからイケメンは。優しさなんて必要ねえんだよっ!!
「私も柏木さんに合わせますよっ!」
流石三ヶ森さん。俺の妹だけあって優しいじゃないか。こんな人が世界に溢れれば世界から戦争はなくなるのにな。………はぁ。
深い溜息をつきながら、渋々ふたりと同じような文面を送った。
それから一分くらい間が空いてから、柏木からの連絡が来た。
「わかったわ。じゃ、再来週の火曜日でどう?」
「私は大丈夫ですっ!」
「僕も問題ないです」
二人は大丈夫らしい。俺はと言うと……夏休みに予定なんてあるわけないよな。
「あぁ。わかった。」
そうして、日程が決まった。
この時、しっかりとプールに行くかどうかってのは言えなかった。
まあ、行くか行かないかはその時の俺次第だな。
******
そして、二週間ちょっとが食っちゃ寝していると一瞬で溶けていって、もう約束の日になっていた。
なんで休みってのはこんなに早く溶けていくんだろう。はぁ。もう夏休みもあと一週間か。
そんなこともあり、かなり憂鬱であるのも理由のうちなのだろうが、どうするか……一応十時集合っていうから、八時に起きたけど、なんだか気が乗らない。
俺が柏木に何かしたってわけでもないのにな……
あの口うるさい馬鹿な姉は今日は予定があるからって、家を朝早く出ていったので今日は静かだ。今日に限って静かになりやがって………
いつも悩むどころか考えることだってままならねえくらいうるさいのに、今日に限って…………こんなんじゃ悩んじまうじゃねえかよ。
「うわぁぁ!!!どうすりゃーいいんだよぉぉ!!!!」
そんな時、スマートフォンが鳴った。
でも、あのトークアプリの音ではない。電話だ。仕方なく携帯を見てみると、そこには「妹」と、表記されていた。
俺は速攻で出た。
「はい?」
「あ、もしもし?風見さんですか」
「うん。どうしたの?」
「今日、雨降ってくるらしいんですけど……どうしましょうか?」
カーテンを開けて外を覗くと確かに今にも降り出しそうな空だった。
「………雨は降りそうだけど、市民プールって室内だし問題ないんじゃないのか?」
「あっ!そうでしたね!では、また!」
そういうと電話は切れた。結構天然なところあるよなぁ。それもまあ、かわいさなんだけどな。
そんなことを言ってしまった手前、俺はもう行くしかなくなった。
そして時だけが流れ、もういい時間になり俺は家を出た。
……柏木にあったら、どんな顔をすればいいだろう。
そんなことを考えながら自転車を漕ぐこと数分。俺は目的地の市民プールに着いた。
「あっ、風見さんっ!」
なんか可愛いのが手を振りながらこっちに駆け寄ってくる。だが、これは妹だ。落ち着け俺。
「………あ、あぁ。」
呂律が回らねえ。というか、語彙力がねえ。
「おはよーさんですっ!」
「お、おうっ!おはようさん。他のみんなは?」
「いえ、まだ………」
「そっか。じゃ、どうするか決めてるのか?」
「えーと?」
「山口のことだよ。」
三ヶ森さんの耳元で囁くようにそう訊くと、
「二人で何の話をしているのですか?」
と、イケメンボイスが後ろから聞こえた。
「や、山口!?」
後ろを振り向くとイケメン野郎がそこで笑って立っていた。
「こんにちは。……お久しぶりですね」
「久しぶり……だな」
そういえばこの二人と会うのは久しぶりだ。家で寝っ転がってたからか、そんなにあの祭りから経ってない気もするが、もう一ヶ月とは行かなくてもそのくらい空いてるんだな。
「こ、こんにちは!!や、山口……君」
「おお。こんにちは。元気ですね!」
二人がよろしくやってる時に今俺がここにいたら邪魔だな。
「俺、トイレ行ってくる」
そう一言残して、俺は一旦その場からはけ、宣言通りトイレに行った。
もうそろそろ十時になる。柏木は頭もよく真面目だ。だから、時間にうるさかったりする。なのにこの時間になってもこないということは、もう来ないということなのだろうか。
まあ、会っても気まずいのは変わらないのだろうけど。
そんなことを思いながら俺はとりあえず、もう十時前なので二人の元へ戻った。
「あ、おかえりなさいっ!」
「ただいまー。で、柏木は来たか?」
「いや、まだですね」
イケメンが少し残念そうにそう言う。
「そうか……曇ってるとはいえどうせ蒸し暑いし、柏木待たずにとりあえずプール行っちゃおうか」
「そうですね……」
残念そうに三ヶ森さんはそう言って、女性用更衣室へと消えていった。
そして、水着に着替えいざ、プールへっ!!
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