尻尾は女の命

けものフレンズ大好き

尻尾は女の命

 ここはじゃんぐるちほー。

 キョウシュウエリアでも比較的多くのフレンズがいるちほーです。

 今日主人公になるのは、ネコ目マダガスカルマングース科フォッサ属のフォッサちゃん。

 いったい彼女の身に何が起こったのでしょうか……。


「うーん」


「・・・・・・・」


「うーん」


「……なあ」


「うーーーーーーーーーん」


「いい加減気が散るんだが」


 先ほどから自分の前を行ったり来たりしているフォッサちゃんに、キングコブラちゃんは文句を言います。

「言いたいことがあるならはっきり言え。私もヒマではないのだ」

「いやあ、その……見てわかんない?」

「・・・・・・」

 キングコブラちゃんは、フォッサちゃんを頭のてっぺんからつま先まで凝視します。

 動物の頃の記憶が多少あるのか、フォッサちゃんは一瞬恐怖で身体固まりました。


「……わからん」

「えー。でも自分から言うのもなあ……」

 そう言いながらフォッサちゃんは、わざとらしく尻尾をいじくります。

「なんだ? その尻尾がどうかしたのか?」

「そうそれ! ……まだわかんない?」

「王を愚弄するのもいい加減にしろよ……」

 キングコブラちゃんははっきりしないフォッサちゃんの態度に、いい加減堪忍袋の緒が切れそうです。

 ただ、それでもここまで付き合ってくれたのだから、かなりのお人好しなのでしょう。

「ああ、ごめんごめん。この尻尾がちょっと前から調子が悪いんだよ」

「調子? どういう風に?」


「いつもと比べて微妙になめらかさらがないだろ?」


「しゃー!!!」


「うわっ!」

 あまりにどうでもいいことに、キングコブラちゃんは思わず威嚇してしまいました。

「いくら私が偉大で頼りがいのあるフレンズでも、そんなどうでもいいことに構っている時間は無い!」

「どうでも良くない!」

 フォッサちゃんは力一杯反論します。

「私にとって尻尾は一番のチャームポイントなんだ。尻尾の調子が悪いかどうかで、体調も大きく変わる。このままだと早死にしてしまう!」

「そ、そうか……」

 そこまで言われると、キングコブラちゃんも納得せざるをえません。

 怖い外見で偉そうな態度を取っていますが、本当にお人好しでした。


「だから何か良いアイディアはない?」

「尻尾かあ……」

 力で解決するようなことなら良いですが、こういったことはあまり得意ではありません。

 とはいえ、頼られたにもかかわらずそれを他のフレンズに丸投げするのは、彼女のプライドが許しません

「マッサージとか丁寧に洗ったりは……」

「当然したわ。そもそもその程度で解決してたら、いちいち相談に来たりしなかったわよ」

「まあそうだな。じゃあ、試しに私の尻尾とこすり合わせてみたらどうだろう?」

 キングコブラちゃんは、こすり合わせるとたいていのものは綺麗になるという話を思いだします。

 ちなみにその話の出所とはカワウソちゃんで、あくまで石の話でした。

「うーん。まあよく分からないけどやってみるかぁ」

 2人はお互いの尻尾を合わせます。


 しかし――。 


「あははは!」

「こ、こら、あはははは!」


 お互いどうしようもなくくすぐったくなって、思わず笑ってしまいました。

「……全然駄目だね」

「そもそも続けられんな。他には……無理矢理伸ばしてみるか?」

「痛いだけよ!」

 フォッサちゃんはやる前から涙目で抗議します。

「うーん……、となると……」

 普段尻尾になど全く拘っていないキングコブラちゃんには、他に良い方法も思いつきません。

「はあ、もう良いわ。これからこの情けない尻尾で、誰にも会わないようにして生きていくから……」

「いや、そこまでするほどじゃないだろ」

 キングコブラちゃんは慌ててフォッサちゃんを止めます。


「離してよ!」

「いいや、そんなこと言っている内は離さないぞ!」

「は・な・し・て!」

「うわっ!?」

 フォッサちゃんが強引に振り切ったため、キングコブラちゃんは前のめりに倒れてしまいます。

 その時、フォッサちゃんの尻尾がキングコブラちゃんの口に当たってしまいました。

 フレンズ化したキングコブラちゃんですが、完全に無毒になったわけではありません。

 噛めばそこから毒が入ります。


「あ……」

「わー! 死ぬなーフォッサー!」


 キングコブラちゃんは慌てて傷口から毒を出します。

 幸いにもかすった程度で、フォッサちゃんもすぐに回復しました。

「すまないフォッサ。正直腹は立っていたが、わざとやったわけじゃないんだ……」

「・・・・・・」

「怒ってるのは分かるが、せめて何か言って欲しい……」

「・・・・・・」

「フォッサ……」


「治ってる」


「へ?」


「尻尾が元通りになってる!」


 フォッサちゃんが答えなかったのは、ずっと自分の尻尾を見ていたからでした。

 2人には全く理解出来なかったようですが、キングコブラちゃんの毒には美容効果があり、それが偶然適切な割合でフォッサちゃんの尻尾に注入されたのです。

「ありがとキングコブラ! やっぱりあなたは王様ね!」

「え……ああ」

 笑顔で去って行くフォッサちゃんを、キングコブラちゃんは微妙な笑顔で見送ります。

 

 この後、フォッサちゃんの話を聞いたフレンズ達がたくさん集まり、キングコブラちゃんの笑顔がより微妙になっていくのですが、それはまた別のお話――。


                                  おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

尻尾は女の命 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ