視線が気になるサーバルちゃん
@dozz
視線が気になるサーバルちゃん
サーバルちゃんは、ハシビロコウちゃんがなんだか苦手でした。
「だってじっと見られると、こわいんだもん。」
サーバルちゃんはまだハシビロコウちゃんと出会ってまもないので、本能的に視線が怖かったのです。野生動物が相手をじっと見るのは、警戒しているときか、相手に襲いかかろうとしているときだけですから。
「またこっちを見てるよ…なにかわるいことしたかなぁ」
サーバルちゃんも、ハシビロコウちゃんに悪気がないことはわかっているのです。でも、いざ見つめられると、不安で不安でしかたがありません。
「どうしよう、かばんちゃん。」
みんなとおしゃべりをしているときも、じゃぱりまんを食べているときも、実はハシビロコウちゃんの視線が気になっていたのです。本能的なものですから、仕方がないところもあるかもしれません。でもサーバルちゃんは、かばんちゃんならきっと解決の手立てを見つけてくれるだろうと思いました。
「ハシビロコウちゃんはきっと、サーバルちゃんと仲良くなる機をうかがってるんだよ。それにサーバルちゃんもハシビロコウちゃんともっと仲良くなって、相手のことを知れば、きっと怖くなくなるよ。」かばんちゃんは優しく、サーバルちゃんをさとすように言いました。
「そうだね。やってみる!」さすがは素直なサーバルちゃんです。これまでとはうってかわって、明るい声で言いました。かばんちゃんの後押しは、なによりもサーバルちゃんの自信になりました。
一方のハシビロコウちゃん。これまではヘラジカのチーム内だけが彼女の交友関係でしたが、かばんちゃんたちが来て、彼女の世界は大きく広がりました。ライオンのチームはもちろん、セルリアン退治でさまざまなちほーのフレンズたちに出会ったのです。新しく出会ったフレンズたちとぜひ仲良くなりたいのですが、なかなか最初の一歩が踏み出せません。つい機をうかがってしまって、話しかけるタイミングがつかめないのです。そうこうするうちに相手をじっと見続けてしまって、怖がられてしまうこともしばしば。実はこれは、ハシビロコウちゃんのかねてからの悩みでした。
そんなハシビロコウちゃんが特に仲良くなりたいと思ったのが、サーバルちゃんでした。誰とでもすぐに仲良くなれる明るいサーバルちゃんに、ハシビロコウちゃんは憧れるところがありました。それに、サーバルちゃんと仲良くなれば、その周りのフレンズとも仲良くなれるかも。そうもハシビロコウちゃんは思いました。
そうして、ある日のこと。
「......。」ハシビロコウちゃんは機をうかがっていました。視線の先には、サーバルちゃん。
サーバルちゃんは、いつものようにかばんちゃん達と狩りごっこをしていました。はじめのころはサーバルちゃんの狩りごっこに戸惑っていたかばんちゃんですが、今となっては、サーバルちゃんをかわすのもお手の物。急な方向転換についていけないのが、サーバルちゃんの弱点です。しかしながら、サーバルちゃんの大きなジャンプには、なかなか対応するのは難しそうです。
「まてまてー!!......そこだ!」サーバルちゃんは大きく跳び上がったかと思うと、気づいたときには大きなリュックサックをつかんでいました。
「また捕まっちゃったね。」かばんちゃんは落ち着いて言いました。もう、食べられる心配はないとわかっているから。
そこではじめて、サーバルちゃんは自分を見つめるものがあることに気が付きました。
「そこにいるのは...ハシビロコウちゃん?」
急に呼びかけられたハシビロコウちゃんは、驚いて羽ばたきました。
かばんちゃんにさとされて自信のついたサーバルちゃんは、この機を逃しませんでした。
「ハシビロコウちゃんも、一緒に狩りごっこ、しよーよ!」
「え...? うん、いいよ。」ハシビロコウちゃんもはじめはとても驚いていたようでしたが、その返事は嬉しそうでした。
サーバルちゃんもその返事にほっとしたようで、いつにも増してその笑顔は晴れやかでした。
「いくよ!負けないんだから!」サーバルちゃんが追いかけて、かばんちゃんとハシビロコウちゃんは逃げる役です。
ハシビロコウちゃんは飛べるので、なかなかてごわいことはサーバルちゃんも分かっていました。なのでサーバルちゃんは、かばんちゃんを追いかけ始めました。
「わー!!」かばんちゃんはなんとか追跡をかわし、一息つきました。しかし、そこで立ち止まって休んでしまったのがいけませんでした。そこにサーバルちゃんは狙いを定め、一気に飛びかかりました。
「わわっ!?」かばんちゃんとサーバルちゃんはほぼ同時に声をあげました。そしてサーバルちゃんは空をつかみ、地面にぶつかりました。
「いててて...」サーバルちゃんが顔を上げると、ハシビロコウちゃんがかばんちゃんを抱えて飛んでいました。ハシビロコウちゃんはサーバルちゃんが飛びかかった瞬間に、かばんちゃんをつかんで飛び去ったのです。普段はあまり動かずじっと立っているハシビロコウちゃんですが、いざというときにはとても素早いのです。
「ありがとうございます、ハシビロコウさん」「今回は私の負けだね!」
ハシビロコウちゃんはようやく二人と仲良くなれた気がして、嬉しくて思わず笑みがこぼれました。
「もう一回やろー!こんどこそつかまえるんだから!」
フレンズはみんな、とてもやさしいのです。何も恐れることはなかったのだと、ふたりともしみじみと思ったのでした。サーバルちゃんとハシビロコウちゃんはそれからずっと、とっても仲良しです。
視線が気になるサーバルちゃん @dozz
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