みんなー!応援ありがとー! \ちりん/\ちりん/\ちりん/

ちびまるフォイ

私、アイドルするためにつけます!!!

「お父さん、お母さん。私アイドルになりたい!」


「な、なにを言っているんだ!」


「そうよ! あなたは普通に育って、普通のママチャリになるって

 昔から夢だったじゃない」


「それは昔の話。アイドル自転車になりたいの」


「あんな安定しない仕事、お前にできるわけない!」


「できるもん!!」


半ば家出のように自転車置き場を飛び出した。

親の反対を押し切ってでも、私はアイドル自転車になりたい。


あんなキラキラした場所で走りたい。

その思いはどんなブレーキでも止められない。



数ヵ月後、私は晴れてアイドル自転車として華々しくデビューした。


「みんなーー! 応援ありがとーー!!」


ちりんちりん!!

ちりんちりん!!

ちりんちりん!!


観客の自転車たちが一斉にベルを鳴らす。


安定しない仕事だからつけろと何度も親に言われたけど、

やっぱり自分を信じてよかった。


「今日もお疲れさま。自転車置き場まで送るわ」


「マネージャーさん、大丈夫ですよ。走って帰れます」


「そう。暗いから気を付けてね」


自転車ライブの終わりに私はひとりで自転車置き場へと向かった。

そのとき、突然横から自転車が飛び出した。


「きゃっ!」


「おっと、姉ちゃん。動くなよ。へへへ、キレイなサドルしてるじゃねぇか」


「な、なんですかあなたたち……やめてください」


「そんなこといって、タイヤはパンパンに空気入ってるじゃねぇか。

 車体は正直なんだな」


「そんなこと……」


「おい! チェーンはずしちまえ!」


「きゃーーーーー!!!」




「お前たち、なにやってる!!」


野太く、どこか懐かしい声が聞こえた。


「ちっ! ほかに仲間がいやがったのか!!」


改造自転車たちはちりぢりに去っていった。


「お父さん……」


「お前に話がある。こい」


実家の自転車置き場にいくと、いつになく真剣な両親が待っていた。


「やっぱりアイドルなんて危ない。それが今日わかっただろう」


「あなたが人気になればなるほど、あなたがいつ倒れるから心配で……」


「お母さん……」


「あなたに倒れられたら私たちどうすればいいのか……」


「アイドルなんてやめて、安定した仕事につきなさい」


両親を心配させたくない。

でも、アイドルの私を応援してくれるファンも大事にしたい。


いったいどうすれば……。


「お父さん、お母さん。私決めたよ。アイドルは続ける。でも、心配させない」


「そんなことできるわけないだろ!」


「次のライブ見に来てね。もう心配させないから」



数日後に行われた私の次のライブに両親はやってきた。

私の変わった姿にかねてからのファンは驚いていた。


「あの子……私たちのためにつけたのね」


「ああ、もう心配させないようにと。倒されないようにと決断したんだな」


両親は感動のあまりライトを点滅させた。


お父さん、お母さん。もう心配させないよ。

もう絶対倒れたりしないから。



「みんなーー! 今日のライブもこぎまくっていくよーー!!」




補助輪つけてよかった。

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