幻の紅茶を求めて…

けものフレンズ大好き

幻の紅茶を求めて…

 ジャパリパークで食べられる食物――ほとんどがジャパリまんですが――は、ジャパリパークにある畑で作られた物が用いられています。

 中にはアクシスジカちゃんのように動物時代と同じ物食生活をしているフレンズもいますが、たいていのフレンズは畑の恩恵に与っています。

 それはアルパカちゃんがジャパリカフェで出している紅茶も同様でした。


 そして今日もアルパカちゃんはとしょかんへ、茶葉を受け取りに行きます――。


「いつもありがとねぇ博士~」

「我々にかかればちょいなのです」

「ちょいちょいなのです」

「ところでアルパカ、実はお前に話しておきたいことがあったのです」

「な~にぃ?」

「かばんの協力でさらに資料の解明が進み分かったのですが、どうもこのジャパリパークのどこかに、とてもよい紅茶があるらしいのです」

「おそらくヒトが残していったものだと思うのです」

「へぇ~是非飲んでみたいねぇ」


 その言葉で博士と助手がにやりとします。


「というわけで、お前が探してみるといいのです」

「むしろ探すのです」

「ええ、あたしがぁ!? う~ん……」

 アルパカちゃんは難しそうな顔をします。

「でもあたし全然心当たりがねぇし、あんまりカフェも空けたくねぇし……」

「安心するのです。そういうことに詳しいフレンズに当てがあるのです」

「そいつがいればすぐに見つかると思うのです」

「それなら折角だから探してみようかねぇ~」


 そしてアルパカちゃんはそのフレンズに会いに行ったのですが……。


「なんでそんなところにいるのぉ?」

「落・ち・着・く・ん・だ・よ!」

「へ~。あたしにはよく分かんねぇや」

「……はあ。それで、俺に何の用だ?」

 博士が紹介したのはツチノコちゃんでした。

 アルパカちゃんは博士達から言われたことをツチノコちゃんに伝えます。

「なるほどな。確かに俺はここで一番ヒトが使っていた遺跡に詳しい。博士にはまあ色々世話になってるし……いいだろう協力してやるよ」

「よろしくねぇ~」

「なんか、気の抜ける奴だな」

 それから2人はさばくちほーを出て、別の場所へ向かいます。

 ツチノコちゃんには既にある程度のアテがありました。


「ここは……?」

「ゆうえんちだ。以前黒セルリアンと戦ったときに、ちらっと見えなかったか?」

「そういえばそんな気がするねぇ~」

「ここは人間が多くいた場所だから、とりあえず一番可能性がありそうだ」

 それから2人は園内を回ります。

 

 そして意外にも紅茶はすぐに見つかりました。


「あ、きっとこれだぁ! カフェにあった紅茶が入ってる缶と形がそっくりだもん!」

「売店……か。まあ一番ありそうな場所に普通にあったわけか。だが――」

 ツチノコちゃんはひょいと紅茶の缶を取り上げます。

「これは駄目だな」

「えぇ~!? なんでぇ~?」

「これはもう飲める期限をとっくに過ぎている。俺は多少字が読めるんだ。以前期限が過ぎたヒトの食べ物を食べてみたことがあるが、あの時は死ぬかと思った」

「そっかぁ~……」

 アルパカさんは残念そうに肩を落とします。

「そもそもヒトが出て行ったのは結構前だから。他の紅茶も使い物にならんだろう」

「う~ん、じゃあ諦めるしかないのかぁ……」

 アルパカちゃんはがっかりします。


 しかし、意外にもツチノコちゃんは違いました。


「……なあ、少し前から気になってたんだが、紅茶の葉っぱを博士からもらった後、いつもどうやって使ってるんだ?」

「そのままお湯を注いでカフェで使ってるよぉ~。らくしょーだよぉ」

「つまり加工された茶葉を貰ってたのか。だったら新しい紅茶が手に入るかも知れないぞ。博士達以外にもう一人、協力者が必要になるが」

「ほんとぉ!?」

 ツチノコちゃんは頷きます。

 そしてそのから協力を得られると、3人で再びとしょかんに行きました。


「……おや、何故かばんがいるのですか?」

「はい実は――」


「今から紅茶を作るんだよ」


『作る?』

 ツチノコちゃんの言葉に博士と助手は不思議そうな顔をします。

 物知りな2人も、料理についてはそこまで知識があるわけでもありませんでした。


「紅茶の茶葉は最初からああいう色をしてるんじゃなくて、緑色の葉を加工して使えるようにしてるんだ。だから未加工の茶葉さえあれば、新しい紅茶が作れるはずだ」

「そこで火が使えるぼくが協力を頼まれたんです」

「なるほど……」

「では今から調べてその茶葉を手に入れてくるのです」

「我々にかかればちょいなのです」

「ちょいちょいです」

 博士と助手はいそいで資料を探し始めます。


「2人ともよっぽど飲みたかったみたいですね。それよりツチノコさんは紅茶のことよく知ってましたね」

「昔調べた遺跡に紅茶のついて書かれた本があってな。字はほとんど読めなかったが、絵だけでだいたい何が書いてあるか分かった」

「2人ともありがとねぇ」

 アルパカちゃんはツチノコちゃんとかばんちゃんに深々とお礼をします。

「それは美味いもんが出来てからだ。正直今まで博士から渡された完成してる茶葉の方が美味いと思うぜ。俺達は素人だからな」

「そうですね。でもみんなで頑張ればきっと上手くいきますよ」

「そうだよぉ! あたしだけだったらとっくに諦めてたんだから、絶対に上手くいくよぉ!」

「……ふふ、そう、かもな」


 それからアルパカちゃん達は紅茶作りを始めたのですが、やはり最初は上手くいきませんでした。

 苦くて飲めなかったり、全く味がしなかったり。

 それでもアルパカちゃんも今度は決して諦めず――


『できたぁ!』『のです!』


 後日、ジャパリカフェに新しいメニューが誕生するのでした。


                                  おしまい

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幻の紅茶を求めて… けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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