ショートショート

神無月と稲穂の波

ショートショート

「こっち向けぇい!少年よ!」

「…はい?」


その老人は予備校からの帰宅途中の俺に突然叫んできた。こいつおかしい、と思ったのもつかの間、

「お前は現実に囚われすぎている!もっと夢を見ろ!青春じゃあー!」などと言い始めた。取り敢えずポケットの中のスマホを確認して、絶妙な距離感を保って話しかけてみた。

「…なんか用ですか?道なら案内しますけど。」

すると老人は、「この若造が!道ぐらいわかるわ!わしはお前らに説教をしにきたのだ!お前らはなんでも『コール』などと言って、まともに物事に取り組まん!もっと熱を持て!熱くなるのだー!」と言って走り去っていった。あの足の速さからして、日頃から鍛えているのだろう。

不思議なこともあるものだと思いながら、俺は再び帰路についた。


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ショートショート 神無月と稲穂の波 @kmgkmg

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