ウィークエンド

とりい

1

 八月の地表はすっかりアスファルトに覆われていて、黄色い満月がひとつ光っている。夕立に濡れた地面にさかさまの街灯が等間隔に映り、青信号が滲み、それを踏みつけるように男はふらふらと歩いていく。男はポケットから、汗ばんだ手で携帯電話を取り出し、眺めようとするが、やめる。画面も点けっぱなしのままに、四角いカバンにむりやり押し込もうとして、カバンが落ちた。ぺちゃりと水しぶきが跳ねた。男は遠くに動くものを見た気がして、顔を上げた。ただの満月だ、ただの満月に見える、浮かんで、動いている。こちらに向かって来るようにも見える。月は橙に色づいて、膨らんで、破れた。男の視界が真っ暗になり、真っ暗は長いこと続いた。

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