博士と助手と島長計画

@kakugenn

第1話


セルリアン事件により人間の立ち入りが制限されたジャパリパークでは

限られた人員でパーク再開へ向けて様々な取り組みが進められていた。


その一方で事態が悪化した場合の対策に奔走する者たちも居た。


これはそんな対策の一つ「島長計画」に奔走した職員の記録である。

_________


「では時間になりましたので島長選考会議を開催したいと思います」


白衣を着て髪の色も雪のような白の、とにかく全身真っ白づくめの女性職員の号令により会議が始まろうとして居た。


「本日は皆様お忙しい中、図書館までお集まり頂きたありがとうございます。

司会進行は私、島長計画担当職員ノゾミ。書紀はヒカリが担当しま」

「博士固いですよ、顔なじみしかいないんだからもっとラフに行きましょうよ」

「もう、その呼び方止めてって言ってるでしょ、

それに私が博士ならあなたは助手よ」

「あぁ、良いですね助手、今日からそう呼びましょうか」

「...もう好きにすればいいわ」


こうして茶髪のショートヘアが似合うヒカリが場の空気を和ませることから会議は始まった。


島長計画、それは

なんらかの要因で職員が全員避後してしまった場合に

取り残されるフレンズさん達の生活を守るため、

職員が居なくてもパークの施設を使用したり、他のフレンズの相談に乗ってあげられるフレンズ「島長」を育成する計画である。

今日の会議は島長に相応しいフレンズを選考するため

島に残っている職員から意見を聞くために開催された。


「...というわけでハシビロコウちゃんは凄いんです。

あの洞察力はきっと役に立ちますよ」

「なるほど面白い子のようですね。

ハシビロコウちゃん、候補に入れておきましょう」


会議はまず、各職員から気になるフレンズの情報を募ることから始まった。

既に数名から意見を聞いて居たが各職員毎に観点が異なり、実に甲乙つけがたい状態になって居た。

出来ることなら学校のような施設を建てて全員に教育を施したい所だが、

数々の問題によってパークが一時閉園となり、各職員がパーク再開の為に奔走している状態では博士ことノゾミと、その後輩で今日から助手と呼ばれることとなったヒカリしか手が開いておらず、それほど多くのフレンズを教育することも、まして大勢が利用できるような施設を新設することなど不可能だ。


そんなことをノゾミが考えているところで最後の職員のプレゼンが終わったようだ。

ここからは名前の挙がったフレンズから誰が相応しいかじっくりと検討する時間となる。


「...そうですね、やはり賢さは大切ですね、

その点で言うとツチノコちゃんが一番賢いようですが」

「そうでしょそうでしょ⁉︎やっぱりウチの子が一番なんですって」


当のツチノコが聞けば「ダァレがお前の子だァアアアア」と

叫びそうな発言である。


「でも普段は隠れているのが落ち着いて、あまり注目されるのが得意じゃない子なんですよね❔」

「そうそう、そうなんですよぉ、そこがまた可愛いんです」

「そんな子に島の全てのフレンズさんを助けてもらう仕事をしてもらうのは難しいんじゃないでしょうか、根は真面目な良い子のようですし、ストレスを与えることになりませんか」

「...なるほど確かに、、、あの子を暗がりから無理やり連れ出すようなことはしたくありませんね」


こうしてそれぞれの向き不向きを考慮しながら島長候補は徐々に絞られていった。


「...では島長候補はアフリカオオコノハズクのコノハちゃんと

ワシミミズクのミミちゃんのペアで決定しようと思います。

賢いのはもちろん、島の何処にでも移動できる飛行能力、夜でも活動できる夜目、

セルリアンに充分に有効な爪など総合的に見て島を任せられる子たちのようなので、本人たちの同意が得られればすぐにでも図書館に招いて教育をしようと思います。」


決定の宣言を受け各職員から拍手が起こり、

ノゾミとヒカリに対して励ましの言葉が多くかけられた。

自分たちが居なくなった場合には島のことを任せる子のことである。

皆担当は違っても島長計画には熱心に取り組んで居たのであった。

こうして会議は無事に終了し、コノハとミミへの島長教育が始まるのだった。



会議から数日後の森の中、博士ことノゾミと

助手ことヒカリがコノハとミミを島長計画に誘いに来ていた。


「我々が❔」

「島長❔ですか❔」

「ヒトは居なくなってしまうのですか❔」

「ヒトが居なくなると多くのフレンズが困りますし、寂しいです」

「環境に適応出来なかったのですか」

「何か天敵、、、セルリアンにでも襲われているのですか」


と、初めは困惑があった二人であったが、

万が一のための対策であること、島長の意義、二人を選んだ理由を話すと


「確かに、我々はかしこいです」

「そんな重大な仕事なら私たち以外には務まりませんね」

「仕方ないのでやってやるのです」

「えぇ本当は我々も忙しいのですが、

我々にしか出来ないのならやってやろう、なのです」


と、とても乗り気になってくれたので

助手のヒカリは二人には他に候補が居たことは話さないよう決めて、

手元に持ってきて居た議事録を背に隠すのでした。


島長教育は順調に進み、文字の読み方からジャパリまん製造機の操作、畑の管理、ラッキービーストの機能、簡単な機械の配線など島長に必要な知識を順調に学んでいくのでした。

元々の頭の良さに加え、知識を蓄えていく日々はコノハとミミには楽しくてしょうがなく、また自分たちが選ばれたことを誇らしく思いながら博士と助手と過ごしていくのでした。


しかし、ある日を境に教育の係の二人は図書館に来なくなり、

二人はその原因について図書館で話し合って日々を過ごしていました。

そんな二人の元に見慣れないフレンズが訪ねてきました。


「初めまして、私はロイヤルペンギンのプリンセス。ここに来れば博士って白いヒト❔が助けてくれるって聞いたきたんだけどあなたのことかしら」

「確かに白いですが、残念ながら違うのです」

「一月ほど前までは毎日顔を出していましたが、急に来なくなってしまったのです」


それを聞いたプリンセスはため息を吐いた。

「そうなの、ここもなのね」

「ここも ということは他の場所のヒトも居なくなっているのですか❔」

「そうよ、ここに来るまでに各地を回ってきたのだけれどどこも一斉にヒトが居なくなってしまったみたいなの。何日か見なくなることは今までもあったけど、全員が一月も居なくなるなんて初めてよ。図書館ならいつでも白い博士ってのが居ると聞いて来たのだけれど、困ったわ」

「何が困って居るのですか」

「私、伝説のペンギンアイドルPPPを復活させるために活動をしているんだけど、アイドルが歌って踊る”ステージ”っていうのを作るのを手伝って欲しかったの、、、

でもまぁ居ないなら仕方ないわ。邪魔したわね」


帰ろうと踵を返すプリンセスであったが、その姿を見て何かを思い出した様子の

コノハとミミが帰るのを塞ぐように降り立った。

「な、何よ、博士が居ないと仕方ないからわたしは帰るのよ」

「ヒトが居なくても大丈夫なのです」

「私たちに任せるのです」

「...任せるって言ったって、あなたたちにどうにか出来るの❔」

「出来るのです」

「我々は島長として教育を受けて居るのでそこらのフレンズとは違うのです」

「そうなのです」

「「我々はかしこいので」」


この日から二人は色が白いコノハが博士

茶色いミミが助手を名乗り

島の各問題に挑んでいくことになるのであった。

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