第2話

“俺は東京生まれヒップホップ育ち悪そうな奴はだいたい友達”

なんて歌からは程遠い、

大阪生まれの坊っちゃん育ちの

甘ったれた奴はだいたい友達という、ぬるま湯に浸かりながら育った。

どちらかというと、

俺と言うより僕と言う方の人種だろう。

それより何より両親は優しかった。

親父は旅行会社を経営、

後に廃業となるがこの頃は関西で五本の指に入る老舗会社だったらしい。

女好きで、添乗に行く先々に女を囲っては母を困らせていた。

旅行好きの親父には天職にちがいない。

最後に説明を付け足すとすれば、

ドケチでもあった。

幼少期に「お菓子買うからお金ちょうだい」と手を出すと、

決まって親父は掌に硬貨をギューっとぐりぐり押し付けては「大事に使えよ」と言った。


一方、母親はというと、

そんな親父の事が大好きで、

親父に頼る女ではなく自立した働き者の姉さん女房だ。

母親と親父の馴れ初めは面白い。

その昔、

北海道から家出した母親はすでにバツイチで、

大阪のキャバレーで働いていた。

そのキャバレーに当時歌手志望だった若き親父がアマチュア歌手として歌いに出入りしてたらしい。

その様子を見て一目惚れした母親が仕事終わりに

「なぁ?飲めへん?~」と瓶ビール片手に親父に声を掛けたのが始まりで、

まだ大学生だった親父を誘惑した。

そしてそれがきっかけで母親は妊娠。

どこの馬の骨かわからん歳上の黒人が一流大学生に迫り押し掛けたという感じで、

親戚中から猛反対を受けながらも

親父と早々と結婚に至った。

母親はそれからずっとスナックを経営していたようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る