第17話 フィオルデペスコ
【ヨワムシのフィオ】
2歳の頃、一緒に遊んでいた子たちがふざけ半分で言った言葉はそのまま私の呼び名になってしまいました。
黒い岩の洞窟で休んでいた母と夜ご飯の子ヤギの丸焼きを食べながら、「ワタシってヨワムシなの?」って聞いたら、母は怒って何処かに行くとそのまま帰ってきませんでした。
その夜、母が帰ってこないのを不思議に思いつつも私はいつも通り寝てしまい、起きたらいつも通り…ではなく隣で寄り添ってくれる母がいません。
母がいない、お腹も減って困ってオロオロしていると、家の洞窟に族長のお爺さんがやってきました。
私と他の子たちが遊んでいるといつもニコニコして挨拶してくれる優しいお爺さんです。
「フィオや、お前のお母さんな、向かいのマル坊の若夫婦に負けて死んじまったぞ」
「えっ…おかあさん…まけたの?ええ〜……そっかぁ」
「ああ、だからマル坊のところでこれから世話んなりなさい」
「わかったー」
家の洞窟には母が読んでいた【ホン】という変な模様だらけのペラペラするものがあったけど、もう私の家じゃないので帰らないし関係ない物でした。
3歳
マルキーナさんの家の洞窟は若い夫婦だけあって、将来もっと子供が増える様にと期待を込めて広い場所を譲って貰ったようでした。
ある日の夕食、パチパチと燃える炎と薪の前でマルキーナおじさんは言いました。
「将来、フィオはバルにディ、今年生まれてくるリオの子供を産むんだから沢山食べるんだぞ!」
「そうなの?」
私は夕食のトカゲの丸焼きを加えてモグモグしながら首を傾げました。すると隣でディとトカゲの丸焼きを取り合ってたバルがこっちを見て。
「なんだーフィオはしらねーのかよ、ウチは【カッタ】からオマエはオレとディのコドモつくるんだぞ!」
トカゲのシッポを口の端に加えながら胸を張って答えた。
「…そっかー、おかーさん【マケタ】もんねー」
私は理解を示すと
「そうだぞ!」
バルは嬉しそうに笑った。
マルキーナさんの家の暮らしに慣れ始めた。その年の夏、
山の洞窟から離れた所にある渓谷で、マルキーナさんのヤギとヒツジたちが野草を食べているのを屈んで見ていると
「やぁ、こんにちわ」
突然、上から声が降ってきました。驚いて振り向くと
いつの間にか3人の赤いマント付けた大人が立っていました。
私がどうしたらいいかと固まっているとマルキーナおじさんが慌ててやって来ました。
「…ハアッ…ハッ…フィオこの人たちは……【冥神】のものか?」
呼吸を整えつつマルキーナおじさんは質問します。
「ええ、ここで待ちます。族長さんに会いに来たとお伝えください」
濃い灰色の髪をした大人は優しい口調で答えました。
「うむ…分かった…待っていろ、バル!ディ!フィオ!ヤギたちの面倒見ておけ!」
「「わかった!」」「はい」
そういってマルキーナおじさんは洞窟の家がある山の方に走って行きました。
その様子を見ていた白髪の老人は笑うと
「はっはっは、いや〜久しぶりに【奥地を抜けて】来ましたが、なんとか辿り着けましたな!」
「はぁ…【竜人族】って本当に肌黒かったり赤かったり、服も着ないんですね〜…さっきのお兄さん、めっちゃブラブラしててこっちが恥ずかしかったですよ」
青みがかった黒髪の若者が唐突に叩かれています。
「【竜体魔法】を【恩恵】のおかげで自然に出来てしまうからな、我らの【反応強化】あれが劣化したものじゃ」
「ふーん…あっ【竜体魔法】といえば…【奥地】今回初めてでしたが、なんか聞いてたより【奥地】って楽なんですね!【竜】も見れなかっ…ぶへはぁ?!」
「バカモノが!グリス様の【冥神の恩恵】がなくば【竜の遊び】に巻き込まれるのだぞ!?」
「えっ?それって冒険者や獣人族のホラじゃないんですか?【竜】がダンジョン作るってヤツ…」
「当たり前だ、獣人族の村でもらった【最新の地図】なのにいくつも道が塞がってた上に、【翼を折られたグリフォン】いたじゃろ?」
「嘘ッ…騙されただけかと…疑ってゴメンなさい…村の人…!?マジであのグリフォンに崖から落とされそうになったんですけど…【竜】嫌い!」
老人と若者は何か騒いでいましたが、灰色髪のの大人はじっとこちらを見ていました。私はそれが気になって。
「な…なんでしょう?」
不安そうな声が出てしまいました。
「ん?ああ…いや、君の耳の後ろに生えている【角】が綺麗だったものでね」
「【ツノ】?このツンツンのことですか。おじさんには無いの?」
私は耳の後ろから真横に伸びる【角】に触りました。横に寝転がるときにゴリっとして不便です。
「無いよ。君たち【ここ】に住んでいる【竜神の恩恵を持つ竜人族】だけにしか無いからね」
「へ〜、でもあっちにいるバルやディにもあるよ?ワタシの見るの?」
離れたところでコチラをチラチラ見てるバルとディには額の端に2つちょこんと生えてます。マルキーナおじさんもそうです。
おばさんは後頭部に1つ生えてましたが髪であまり見えません。
「ああ、私の【妻の友人】も君と同じ所に【角】が生えててね。君のお母さんは?先程の彼がお父さんかい?…髪の色も違うし…かなり若いな…」
優しそうな声で呟いてくれます。
「【ツマ?】【ユウジン?】…えと…」
初めて聞く単語に混乱していると、灰色髪の大人は苦笑して
「ははは…すまない、君のお母さんについて聞きたいんだ。お家にいるのかい?」
「ううん、おかあさんは【マケタ】から死んじゃった。だから【カッタ】おじさんとおばさんところでくらしてるの」
「!?……………そうか…忘れていたな…【掟】か…」
灰色髪の大人はギョッと目を見開くと、やがて悲しそうな顔をしました。
「?」
その意味は【まだ】分からない。私はキョトンと首を傾げました。
その後、大慌てで来た族長のお爺さんは他の大人たちを引き連れてやってきました。
何故かマルキーナおじさんの頬が真っ赤だったり、瞼が切れたのか目が塞がってたり泣きながら付いてきて来て、私やバル、ディも驚きました。
その日は宴会で集落の何処の家も自分のヒツジとヤギを焼き、大事な干物まで出てきて、子供の私たちには夢の様な光景でした。
宴会の前、族長さんの所へ集まり、男の大人たちを引き連れて集落の外に出ると、日暮れ時に荷物一杯抱えて戻ってきました。
その荷物の中にあった【オサケ】にせいでみんな真っ赤になって騒いでいます。
次の日、朝日がまだ来ない暗い朝に起き、渓谷の川へ水を汲みに行こうとすると、灰色髪の人と族長さんがメラメラと輝く松明をを持って【私の家だった洞窟】に向かっていました。
気になった私は後ろから付いて行こうとすると
「君も一緒にくると良い」
一歩踏み出す前に声をかけられ固まってしまいました。
族長さんはポカンとしてキョロキョロした後、ようやく洞窟の出入り口の影にいた私に気付きました。
灰色髪の人はこちらを向かず、そのまま洞窟に歩いて行きます。
一年ぶりに入った洞窟は鼠やトカゲ、蛇にコウモリ、多くの虫などなど、すでに人が住める状態ではありませんでした。
灰色髪の人は松明の明かりを近くの燭台に立て掛けると、お母さんが持っていた【ホン】を全てパラパラめくりました。「そうか…」と呟いた後に族長と何やら話していました。
久しぶりに【来た】【家】をしばらく見回していると、話終わった。灰色髪の人が1つの【ホン】を持ってやって来ました。
「はい、コレを」
「?」
そう言って差し出された1つの【ホン】。なんとなく受け取ってしまったものの意味が分かりません。
「いつか…読める人が来たら読んでもらうと良い…まぁ…君がお母さんのこと知りたいと思ったらでいいけどね」
「おかあさんのこと…なんで?」
「ん?んー…お礼かな?…家に【帰って】みると【妻が息子に本を読み聞かせている】その幸せを教えてくれたことへのね」
「…わかんない」
「ふふふ、今の君には難しいかい?お母さんのこと…僕の今の気持ちを本当に知りたくなったら今度来た時に教えよう」
「また来る?」
「ああ、ちょっと息子が厄介なもの見つけ出したせいで【忙しく】なりそうだけど、また来るよ…先に【剣】を持った人が教えてくれるかもだけど」
「【ケン】?」
「ああ、君の【お父さん】が好きだったものさ」
そういって灰色髪の人は笑いました。
日が空に昇りきった所で彼らは帰っていきました。
族長や一部の人は住み込んで管理している【シンデン】のある洞窟に泊まっていたらしいです。
ただ灰色髪の人以外はげっそりしており
「まさか…この年で腹上死させられそうになるとは…いや…この年だからか…いや…しかし…」
「うう…妻になんて言えば…絶対バレる…【森神の恩恵】で…香りで…一瞬でバレる…しかも1人どころじゃないし…酔って いたなんて…」
その日ツヤツヤしていた女性とボコボコになっていた男性がいたが【宴会】で何があったかを知る【子供】はまだいません。
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