この根暗射手に太陽を

ヨク ヤマグチ

第0話 この射手に誰かタオルを

地平線いっぱいに草が生い茂る。

草原とはこんな地を指すんだろう。少なくとも東京じゃ見れない。


「シ、シンゴ! 凄い、獣たちのギラギラとした視線が、はぁ、はぁ……」

「はぁ……クルセイダー。感想はいいから引きつけとけ」


パーティーを組んだクルセイダー——ダクネスが囮として獣たちを引きつけていた。俺はそいつらを一匹ずつ正確に頭を射抜いていく。

戦闘中だというのに獣の睨みに快感を覚えたダクネスが俺にわざわざ報告してきて、ついため息が溢れた。囮としての役割を果たしているからまぁいいが。


これでラスト


「くたばれ」


最後の一匹を射抜きふぅ、と一息入れた。

ギルドで請け負ったクエストは目の前で命を絶たれた獣達を狩ること。

目標数に達したし、弓を背にしまいギルドに報告するために死体を確認するためしゃがんだその時、


「シンゴうしろにッ!」


獣のくせに、野生モンスターのくせに


「調子に乗んな」


後ろから飛び込むように襲ってきた獣に背負っていた筒から矢を引き出し、剣士が前へ突き刺すよう矢を獣の口目掛けて突き出す。


「グォッ!」


刀を鞘に収めるような狂いのない流れで獣の喉へと突き刺した矢はそのまま貫通した。矢の先が血で染まり、陽の光で鈍く輝いた。


「大丈夫かシンゴ」


少し遠くから走ってくるダクネスの方へ顔を向ければ、ダクネスの顔が少し歪む。


「人の顔見てなんだその顔は」

「あ、いやその」

「冗談だ。先にギルドに行って報告しといてくれ。来る途中にあった川で顔洗っていく」


いや、一緒に行こう、と少々問題があるものの基本真面目のお人好しはわざわざ後を追ってくる。


「それにしても心配したぞ最後のあれは。矢が獣に刺さったからよかったものの」


実際、右腕を甘噛みされてるからよくはない。が、それを言うとまたぎゃあぎゃあ騒ぎそうだから黙っておいた。

ちなみに矢での近距離戦闘は映画で観た弓矢の名手をまんま真似ただけだ。


「死んでいたらどうするってか?別に問題ないだろ死んでないし」

「私はクルセイダーだ。仲間のピンチを見逃すことなどできない」


だから、お前は私が守る——


正面に回り込んで俺の肩を掴み、恥じらいもなく宣言してきた。

近いし、穢れなき眼差しはなんというか眩しくて瞼を閉じただけでは足りなくてつい顔を逸らしたくなった。


「守るって……お前の剣捌き壊滅的だろ」

「んんッ!その冷めた眼差し……」


ダクネスとパーティーを組んでの初陣だが、酷かった。

勇ましく俺を守る、と宣言したこのクルセイダーが振るう剣は一度も当たらなかった。スリーアウト三振。野球詳しくないけど。ボーリングだったらオールガーターだ。

自分で肩を抱き悶えるパーティーメンバーを横からスルーし川の水をすくって返り血を洗い流した。

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