アライさんVSサーバル!

けものフレンズ大好き

アライさんVSサーバル!

 帽子泥棒こと、かばんちゃんにようやく追いついたアライさん。

 しかし誤解だとわかり、ついには協力して黒セルリアン倒します。


 そして全てを終えたとき、かばんちゃんは約束を果たそうとしました――。


「はいアライさん、これ」

 かばんちゃんはアライさんに帽子を渡します。

「あのときアライさん、帽子は一旦渡すって言いましたよね。だから今度はぼくが返します」

「え……」

 アライさんはまさか本当に返ってくるとは思わず、フェネックちゃんの方を見ます。

「アライさんの好きにしたらいーよー」


「……それじゃあ……はい」


 アライさんは帽子をまたかばんちゃんに渡しました。

「この帽子はやっぱりかばんさんのものなのだ。アライさんは帽子を被ってるかばんさんが好きなのだ。あ、でも、被ってなくても尊敬してるのだ!」

「アライさん……」

 かばんちゃんは受け取った帽子をまた被ります。

「だからこれからもずっと、かばんさんにはアライさんのお友達でいてほしいのだ!」

「はいよろこんで!」

 かばんちゃんはとびきりの笑顔で答えます。


 ……ここで終わればいい話だったのですが。


「かばんさんはジャパリまんを食べる姿も聡明なのだ!」

「かばんさんが行くところはどこでもアライさんに教えてほしいのだ」

「ここはアライさんに任せるのだ! かばんさんがでるまでもないのだ!」

「アライさんはかばんさんと一緒に寝たいのだ……」


 ――と、何をするにもかばんちゃんの側を離れないようになりました。

 それが100%善意によるものなので、かばんちゃんも嫌とは言えません。

「いやあ、好かれちゃってるねえ」

「は、はあ……」

 フェネックちゃんの言葉にも曖昧にしか頷けません。

 フェネックちゃんもフェネックちゃんで何か面白がっているようで、別に何かすることもありませんでした。

 しかし一人だけ、不満を持つフレンズも……。


「もー! アライさん最近かばんちゃんにべたべたしすぎー!」

 サーバルちゃんはほほを膨らませます。

 ずっとかばんちゃんと一緒にいたサーバルちゃんは、今の状況がどうにも気に入りませんでした。

「アライさんはかばんさんのお友達だから当然なのだ!」

「私だってお友達だもん! それに私の方がずっと一緒にいたし!」

「でもアライさんの方がかばんさんを好きなのだ!」

「私だって!」

「アワワ……アワワ……」

「おやおや、モテモテだねえかばんさん」

「フェネックさんもそんなこと言ってないで、止めで下さい!」

 かばんちゃんは放っておくと取っ組み合いになりそうな2人の間に、割って入ります。


「うーん、じゃあこういうのはどうだろう」

 フェネックちゃんはいつものあまり感情が読み取れない顔で言いました。

「どっちがかばんさんを好きなのか勝負で決めてみたら」


『勝負!?』


「アワワ……アワワ……」


「その、危ないのは駄目ですよ!」

「私だってアライさんを危ない目に遭わせたくないよー。だからここはクイズで決めよう。かばんさん、ちょっと向こう……あの木の後ろ、みんなから見えない位置まで行って」

「あ、はい……」

 かばんちゃんは言われた場所に移動しました。

「ああ、そこそこ。それじゃあこれからかばんさんに関するクイズを10問するよ。答えられた方が勝ちってことで」

「分かったのだ!」

「絶対勝つよ!」

「それじゃあ早く答えられた方が勝ちねー。かばんさんに近づいたら失格だよー。さっそく第1問、かばんさんの服の色は?」


『・・・・・・』


 第1問からいきなり答えに詰まってしまいます。

 いつも見ているはずのサーバルちゃんも、そう言われると何色だったか思い出せなくなりました。

「……分かったのだ。赤なのだ!」

「おーアライさんせいかーい」

「ふふーん。かばんさんの羽の色が赤だったことを思い出したのだ。だから服も赤いのだ!」

「そうだねー(かばんさんの羽の色は緑だったけど、まあ問題と関係ないから黙っておこう)。じゃあ次の問題。かばんさんが付けているラッキービーストの腕輪は右左どっち?」


『・・・・・・・』


 2人とも揃って不思議そうな顔をします。

「あーそういえば2人とも左右を知らなかったね。いやーしっぱいしっぱい。それじゃあ第3問――」


 怖ろしくゆるいクイズ対決は続いていきます。

 2人とも全く答えられず、聞いていたかばんちゃんは少し悲しい気分になりました。

 そして自分に一番詳しいのは、他ならぬフェネックちゃんであることも良く理解出来ました。


「それじゃあ最後の問題。かばんさんはいつ生まれた?」

『えーと……』

 2人とも指を折って、サンドスターが当たった日を逆算します。

 その様子からフェネックちゃんは、どっちも答えられないだろうなあと確信しました。

「確かアライさんが行ったのは1日2日……ああ、分からないのだ!」

「かばんちゃんがさばんなちほーに来たのが――」

 ――と、不意にサーバルちゃんの目が光ります。

 良い考えが浮かんだわけではありません。


「うみゃみゃみゃー!」

「え……ああ!?」


 サーバルちゃんはかばんちゃんが隠れていた木に飛びかかりました。

 そして、木の後ろにいたセルリアンを見事倒しました。


 サーバルちゃんはクイズに答えながらも、ずっとかばんちゃんの方を気にしていたので、一番早く異常に気付くことが出来たのです。


「あーあ負けちゃった」

 そう言ったサーバルちゃんの顔は誇らしげでした。

「あ、アライさんの勝ち……」

 逆にアライさんの方が負けたような表情です。

「アラーイさーん?」

「うう……分かってるのだ。本当はサーバルの勝ちなのだ。アライさんはクイズに夢中で、かばんさんの危機に全然気付けなかったのだ!」

 悔しくて泣きそうになったアライさんは、その場を走り去っていきました。

「待ってよアライさーん」

 フェネックちゃんはその後をついていきます。


「悪いことしちゃったのかな?」

「ううん」

 かばんちゃんは首を横に振ります。

「でも後で仲直りしに行こうね」

「うん!」


                                 おしまい?


「フェネック悔しいのだ! アライさんはサーバルよりもっとかばんさんの役に立ちたいのだ!」

「そうだねー。だったら博士に相談しに行ったらどうかな?」

「それなのだ!」



「ではお前達、これを見つけてくるのです――」


                                   つづく

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アライさんVSサーバル! けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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