楽園41  甘い誘惑を作ろう。

沼の海賊船をあとにした六人は、王国に戻ろうと海沿いの岸壁を歩いていた。

草花が沖から吹く潮風に揺れて踊る。

「やれやれ、骨折り損のくたびれ儲けと言うけど、情報はひとつ手に入れたな」

「この楽園は、大航海時代からあること、田端さんたちの大戦争していた時代は日本軍の基地があり、激戦地だった」

「あの穴といい、まだまだ謎がたくさんある。真の安心して暮らせる楽園には努力をしなければいけないことだ」

気を引き締めて新たに歩き出す六人、しかし、せっかく見つけたラム酒と言う宝の山も死者から奪い取るみたいなので手ぶらで王国に戻ることになった。その時、カトレアがどこからか甘い匂いを感じた。

「あれ、森の方から甘いお砂糖みたいな匂いがするよ」

翔が笑いながら、

「カトレアさん、ラム酒は船のもとに戻したじゃん、きっと、疲れているから木や花の匂いだけでも甘いと感じたんだよ」

「翔、待てよ。もしかして、森に野生のさとうきびが群生しているのかもしれないぞ。海賊たちはこの楽園を根城にするつもりだったんだろう。もしかして、自給自足でさとうきびを育っていたかもしれない。探してみよう」

そして、六人は匂いのする方まで足を進めた。

草をかき分けて、蛇や蜂などがいないか注意して進むとそこには、

「あったわ」

「ああ、昔、沖縄で旅行した時に見たことがある。あれだ」

高くそびえ立つそれは…

「さとうきびだ」

目の前にさとうきび畑が現れた。それも広大な面積に、なぜ、もしかしたら、どこかに原住民がいるのかもしれないと警戒しながら周りを探してみた。

岩陰に潜んでいないか、近くに落とし穴やら地面に潜んでいないか、原始的な住居を草でカモフラージュしていないかなど木の枝で確認してみた。

「杞憂だったみたいね」

「これは、キャプテンタックたちの遺産だな。金銀の財宝よりも百倍の価値があるぜ」

「これなら、私達が手にしてもいいわよね」

「まだ使えそうなものをそのまま腐らすのは持ったいない。よし、種を持って帰り栽培しようぜ」

王国に戻り、六人は道具造りに勤しむ、拓斗とはるみの二人は木をナイフで削り鎌と石を砕いて手頃な石で磨き原始的な斧を作った。

「がほがほ、北京原人だぞ」

拓斗が出来た石斧と船にあった虎柄の布を身体に纏い、原始人のまねをして皆を笑わせた。

「拓斗、似合いすぎ」

「本当に石器時代に生まれた方がお似合いだ」

「あはは」

そのあと、田端さんのお墓の近くの土を耕して、そこにさとうきびの種を撒いた。

麗子やカトレアは先に見つけた海賊たちの遺産であるさとうきびを絞り汁を取り出して空き瓶に入れた。

「これを何日間か置いておけば」

「甘い甘い誘惑が完成するわ」

そお、自家製のラム酒にしようとしているのだ。

博樹と翔、拓斗はもちろん、砂糖にして甘いお菓子を作りたいのだ。

「小麦や米も育て、いつかは、パンやおにぎりがたべられるようになるといいな」

「ああ」

皆が自然に夢を膨らまして笑う。不安な未来あすが来てもいい、なぜなら、こんなに笑えるからだ。

六人は大笑いした。






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