桜音 ~sakuraoto~

銘尾 友朗

第1話プロローグ

 春。桜の季節。


 日本人は桜が好きだ。


 毎年新しい桜ソングが生み出され、その儚げな花の季節に彩りをえる。


 ひらひら、はらりはらりとこぼれ落ちるピンク色の花びら…。


 その花びらを風がすくい上げ、新たに花から離れた1ひらとともに、また舞い踊らせる。


 海の波の様に、薪の炎の様に、見ている人の心を飽くさせることも無く、くうを漂う。


 その光景は、何かを思い起こさせるかの様で、心が掻き乱される。


 私は一体何を忘れているのだろう。とても大切な何か、忘れてはいけない何かを。切ない気持ちが胸の奥を締め付ける。


 けれど、ー。



 桜を見るのが好きだ。切ない気持ちを抱きながら眺める桜が…。

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